中古車には、大きく分けて「街場の中古車屋さんが販売しているモノ」と「自動車メーカー系の販売店が売っている認定中古車」の2種類があります。世間的には、「認定中古車のほうが絶対に安心! 街場の中古車なんて怖くて買えないよ!」というご意見もあるかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか? 中古車ジャーナリストの伊達軍曹さんがズバリ解説します。

  • ホンダの販売店

    ホンダやトヨタなど、自動車メーカー系の販売店で売られている「認定中古車」。これさえ選んでおけば、間違いない?

「その通り」ではあるが「絶対安心」とも言いきれない

「中古車を買うならメーカー系の認定中古車に限る!」というスタンスの人は結構、多いようだ。だが、果たしてそのスタンスは正しいのだろうか……と自分自身に問うてみたところ、答えは以下の通りとなった。

「まぁ8割方は正しい。だが、残る2割は微妙である」

以下、この「8割/2割問題」について論考を進めてみたい。

認定中古車とは、国内の自動車メーカーや海外メーカーの日本法人が自社ブランドの中古車に対して一定の基準を定め、「この中古車は我が社の基準をクリアしていますよ」と“認定”したうえで、傘下の正規販売店で販売する中古車のことである。

大変失礼ながら、どこの馬の骨かわかったものではない街場の中古車屋の兄さんが「お客さん、この中古車は状態バッチリですぜ。整備もちゃんとしておきますし」と空約束(?)をするのではなく、立派なスーツに身を包んだ自動車メーカー系の立派な人々が“認定”している中古車のほうが安心である――というのが、冒頭で申し上げた多くの人々のスタンスであるわけだ。

これはまぁ、確かにその通りではある。しかし「メーカー系販売店」といっても、その種別や内実はさまざまだ。

車にあまり詳しくない人は、街の正規ディーラー(正規販売店)は、巨大自動車メーカーが直々に経営していると思っているかもしれないが、実際はそうではない。もちろんメーカー直営のディーラーもあるが、多くの正規ディーラーの経営母体は「地場のローカル企業」なのである。

そして、地場のローカル企業であるだけに、ごく希ではあるが、「不真面目でナメた企業」が巨大自動車メーカーの看板をエラソーに掲げているケースもなくはない。

話が長くなるため事件の詳細をここに記す余裕はないが、筆者は過去、そういった「ダメ系正規ディーラー」の系列店から中古車を買い、ちょっとしたひどい目にあった経験がある。それゆえ、「ごく希に不真面目でナメた企業が巨大自動車メーカーの看板を掲げているケースもなくはない」と、確信をもって言うことができるのだ。

  • 伊達軍曹さんの写真

    「ダメ系正規ディーラー」には苦い思い出があるという伊達軍曹さん

「長期保証」も実はあまり意味がない?

また、認定中古車にとっては自慢のひとつである「保証」も、ある部分においては少しだけ微妙だ。

街場の中古車販売店が中古車に付ける保証の期間がせいぜい3カ月か6カ月であるのに対し、認定中古車は「2年または1年」の長期保証となるのが一般的である。これをもって「だから認定中古車は安心!」と言いたいところではあるのだが、話はそこまで単純ではない。

認定中古車のなかでも、「2年間」の長期保証が付くのは「かなり新しい年式の、走行距離もかなり短い物件」に限られる場合が多い。そして、そういった新しめの機械というのは、基本的には買って2年程度でどこかがぶち壊れることはあまりない。

まぁたまに壊れることもあるので、長期保証が付いているに越したことはないのだが、現実的には「割と無意味」だったりすることもなくはないのが、認定中古車の長期保証なのである。

とはいえ、なんだかんだ言って認定中古車は「キレイで状態も良い。そして、売ってる会社もマトモである」という場合がほとんどであるため、「一般店で買うよりも安心できる」というスタンスに大きな間違いはない。そして保証期間も、前述の通りやや無意味な部分はあるにしても、結局は長いに越したことはない。

  • 車内の画像

    例外はあるものの、メーカーの基準を満たした認定中古車のほとんどはキレイで状態が良いと考えていい

それゆえ、もしも貴殿が「中古車というものを初めて買ってみようと思っているのですが……」みたいな人であるならば、認定中古車は大いにおすすめできる。一般店と比べると車両価格は若干高いが、それは「安心料」として快く納めるべきであろう。

だが、もしも貴殿が歴戦の中古マンであるならば――つまり、お店の体質も中古車のクオリティも、自身の目でまあまあ判断できるぐらいの経験をお持ちであるならば――認定中古車か否かにこだわる必要はあまりない。

それが、中古車専門記者を20年以上続けてきた筆者の結論であり、本稿の冒頭で「まぁ8割方は正しい。だが、残る2割は微妙である」と申し上げた理由だ。