――そして、クライマックスは大きな感動と反響を呼んだ「カギダンススタジアム」です。やはり演者さんと高校ダンス部の組み合わせというのは、相当考えられたのですか?

逆に、組み合わせ以外は考えてないと言ってもいいかもしれないです。僕らが何か演出をしたとするなら、唯一組み合わせだけで、それ以外はもうドキュメントでした。今年の『27時間テレビ』の裏テーマとして、『新しいカギ』を新たに知ってくださる視聴者の皆様に対して、「こんなメンバーでこんな番組やってるんだよ」というプレゼンの意識があったので、それぞれの個性がしっかり生きるように、応募いただいたチームとどう組み合わせようかと、丁寧に考えました。

――例えば三重高校はストーリー仕立てのダンスを得意とされるので、コント職人の秋山さんにお願いしよう、という感じでしょうか。

そうですね。三重高校の応募VTRや他の大会での映像も見て、このストーリー性に、世の中に知られている秋山さんのコント職人としての魅力が合わさったらどんなダンスが作れるんだろう…と考えました。それと、組み合わせについてはプロのダンサーさんにもアドバイスをもらっていて、三重高校の「ロックダンス」は相当練習しないと踊れないから、めちゃくちゃ頑張る人がいいという意見を受けて、ここは秋山さんだなと決めました。

  • 三重高校×秋山寛貴 (C)フジテレビ

――本番のパフォーマンスの前に、ダンスに込められた思いや、演者さんとダンス部の皆さんが一緒に過ごしたひと夏の物語が描かれたVTRがありましたが、これはどのような意識で作られたのでしょうか。

だいたい12分前後のVTRなのですが、めちゃくちゃ時間をかけて作りました。意識したのは、あくまでもダンスに向けた“振り”だということ。彼らが本番に至るまでに、頑張ってきた部分や、ここは事前に紹介しておいたほうがダンスを楽しめるという部分を入れながらも、本番のダンスで完結するというパッケージにしました。

――直前のVTRで感情移入してほしいから、どこまで見どころを詰め込むかのさじ加減は難しかったのではないでしょうか。

今回の本番のダンスは4分という尺だったのですが、高校ダンス部の大会は2分半がスタンダードなので、結構長いんです。そうなると見どころとしてはたくさんあるので、最後まで見たくなるための目線付けというのも、意識しました。

――そうすると、百戦錬磨の高校ダンス部の皆さんにとっても、コーチの先生にとっても、4分のダンスというのは結構な挑戦だったんですね。

そうだったと思います。だから、この4分どう作るかというところから、演者さんとコミュニケーションを取ってもらいました。そんな中で、松尾さんが4分間出ずっぱりで踊り切るというのを決めたので、高校生の皆さんがいちばん驚いていました。

  • 武南高校×松尾駿 (C)フジテレビ

――カギメンバーの皆さんが高校生たちから青春時代に置いてきたものを受け取るのと同時に、高校生の皆さんもカギメンバーの一生懸命な姿から受け取るものがあったように見えて、お互いに刺激を受ける関係性がすごくいいなと思いました。

めちゃくちゃいいですよね。本当にカギメンバーというのは熱くて優しい人たちなので、そこが高校生にうまく届いて良かったなと思います。

「前代未聞のお願い」技術チームに助けられる

――本番では演者さんも観覧席もみんな涙を見せていましたが、田中さんはいかがでしたか?

『BACK TO SCHOOL!』(※)など、エモい瞬間に立ち会う番組は結構やってきましたが、編集しながら泣くことはなかったですし、ロケでディレクターが泣いていたら「ちゃんと撮れよ」って思っていたタイプなんですけど、入社11年目で、初めて本番で泣いてしまいました(笑)

それで、キュー(合図)が出せなくて、CMを入れるタイミングが遅れちゃったんです。見返すと恥ずかしいんですけど、秋山さんと三重高校の点数が出て、それまで1位だった岡部さんが「花東(花巻東高校)のみんなに優勝してほしかったから…」と泣かれて、粗品さんが「続いては優勝候補の登場です」ってCMに入るところで、なかなかCMに行かず変な間が空いているのは、僕が泣いているからなんです(笑)。サブでかなりイジられましたが、あそこは耐えられなかったですね。

(※)…青春時代にやり残した思いを抱える芸能人が、期間限定の転校生として実際の高校生活を体験するバラエティ番組。2019年10月~20年3月にレギュラー放送。

  • 花巻東高校×岡部大 (C)フジテレビ

――ハプニング的なところで言うと、菊田さんが日曜の夕方に少し体調を崩されて休憩されていましたが、無事本番には回復してパフォーマンスしてくれました。

出番順としては最後だから、粘れるところまで粘ろうと思っていたのですが、本当にどうしようもなかったときのために、菊田さんと踊る1MILLIONの振付師のリア・キムさんが踊るスタンバイをしてくれていたんです。菊田さんの体調が第一なので、もし出られない場合はエキシビジョンマッチとして披露してもらうことも考えたのですが、ドクターのOKも出て、「カギダンススタジアム」のオープニングにも間に合って無事、菊田さんが練習の成果を見せてくれました。

  • 1MILLION×菊田竜大 (C)フジテレビ

――ダンスパフォーマンスのカメラワークも素敵だったのですが、やはり音楽番組のチームが担当されたのですか?

『FNS歌謡祭 夏』の放送が近かったので、音楽番組の制作チームにがっつりお願いができなかったんです。オープニングのKEYTALKさんとブラスバンドのカット割りは、1個下の川上(惇ディレクター)が助けてくれたんですけど、ダンス4分×7本はさすがに頼めないなと思って、自分たちで準備して挑んでみたものの、全然違うなという感じで。そこで、『FNS歌謡祭』のカメラマンさんをはじめとする技術チームに、普段はディレクターが担当するカット割りを「本当に前代未聞かもしれないのですが、僕ら本当に何も分からないんで助けてください!」とお願いしました(笑)

練習の映像を見せて「ここは1ショットでいきたいです」といった最低限の部分をお伝えして、それ以外の部分をお願いしたら、「お祭りだから、みんなでやろうぜ!」ってなってくれて、めちゃくちゃカッコよかったです。それに、演目ごとに担当を分けてカット割りしているので、自分のチームのように応援しながら撮ってくれたんですよ。それも、『27時間テレビ』ならではの全社一丸な感じがあって、結果として良かったなと思いました。