• 『アウト×デラックス』MCの矢部浩之(左)とマツコ・デラックス

――石原さんにぜひ聞いておきたかったのが、先日(10月29日)諸事情で『アウト×デラックス』(フジテレビ)が急きょ放送当日の収録を撮って出ししたじゃないですか。久しぶりに、ワクワクする放送を見たなと思いました。

あれは朝11時くらいに、演出の鈴木善貴くんから電話がかかってきて、「今日収録なので頭だけちょっと撮って、後は総集編で作ろうと思います」って言われたんですよ。でもそれを聞いて、「総集編だと(出演者の)許可取らなきゃいけないから大変でしょう。全部完パケで撮っちゃったほうがいいんじゃないの?」「(監修の渡辺)琢さんって『ごきげんよう』やってたから、サイコロトークでしょ!」って言って(笑)

――『ごきげんよう』も撮って出しでしたもんね。

だから「琢さんにおまかせだよ!」って、そんなノリですね。それから各所に許可をとって、フジテレビ的に大丈夫なのかを確認して、1時くらいから収録が始まったんです。

――2時間後に! でも、見ている側は「これはどうなるんだろう…」ってドキドキしながら見て、すごく面白かったです。

そうですよね。これもトシさんが言ってたんですけど、『金スマ』(TBS)に大塚家具が揉めているときに娘さんが出たんですよ。それを見たトシさんが「これがテレビなんだよ! 今を切り取ってるんだよ! 阿部(龍二郎プロデューサー)さんすごいなあ!」って言ってて、なるほどなと思いましたね。今回は、たまたま収録日だったというのもラッキーだったんですけど、こういうことができると番組ってちょっと息を吹き返したりするので、いいきっかけになったのかなって思います。

■お笑いバラエティの環境が激変

――今後こういう番組を作っていきたいといったものはありますか?

芸人さんが本気になる番組をやってみたいなと思うんですよね。芸人さんって非常に器用で「この番組だったらこのくらいでいいか」って全力を出す前に整えてしまう癖があるんですけど、僕がやらせてもらってる『M-1グランプリ』とかは、賞レースなので芸人さんが本気120%を出す番組なんですよね。ほかにも、『アメトーーク!』(テレビ朝日)とか『イッテQ』(日本テレビ)とか、そういう芸人さんが本気になって「ここで爪痕を残したい」と思ってくれるような、面白いけどギリギリの緊張感が見え隠れする番組を作りたいですね。

――『水曜日のダウンタウン』(TBS)とか、ドッキリで騙されたのに番組名を知ってものすごい喜ぶようなパターンもありますよね。それこそ『スマスマ』のような総合バラエティは、芸人さんが本気を出す番組ではないですか?

そうですね。今の時代、タレントの総合バラエティって本当に難しいんですけど、もう1回ああいう番組もやってみたいですね。

――最近は「コアターゲット」や「キー特性」など、テレビ局が少し若い世代をターゲットにした番組作りに注力し始めて、バラエティの作家さんとしては追い風になっているのではないでしょうか。

そうですね。この1~2年で、以前は考えられないくらい芸人さんとの仕事がすごく増えました。だから、芸人さんのスケジュールを押さえるのも大変で(笑)。『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ)って、始まった当時は第7世代なんて言葉もないときで、芸人さんのスケジュールが結構取り放題だったんですよ。でも、今はちょっと有名になっちゃうと「すいません、その日は…」ってすぐなっちゃうんです。

――Mr.シャチホコさん、りんごちゃん、フワちゃん…と、『ガヤ』きっかけで売れた芸人さんがどんどん出てきますよね。

お笑い番組というより、芸人さんの“取扱説明書”になればいいかなって思うんです。芸人さんが大きな番組に出る前に慣れておく場というか(笑)。だから、あの番組からスターになったと言ってくれるのはすごくうれしいですし、やっていて楽しいですね。

――『ガヤ』とタイトルになっているだけあって、コロナの時期はその売りが禁じられてしまう中で、難しさがあったのではないでしょうか。

個々の力云々より、数で行っちゃえ!みたいな薄利多売の番組だったじゃないですか(笑)。でも、集団で出れなくなってしまったので、どうしても確実に笑いを取ってくれる人を少人数入れるという形になって、新しい人を入れることが難しくなってきてるんです。だから、スターを生みにくい状況になってるかもしれないですね。

一発まぐれ当たりした子をとりあえずひな壇に置いてみると、ヒロミさんや後藤(輝基)さんがイジってくれて、どれがどんどん回っていくみたいな番組だったんですけど、「やっぱりチョコプラにはいてほしいね」とか「ニューヨークだよね」「鬼越だよね」ってどうしても無難にいきたくなるじゃないですか。そうすると、新ガヤが2人しか入れられないみたいな状況になってしまうので、苦しいところではありますね。結局、視聴率をとらないと終わってしまうのがテレビなので、シビアな状況と日々葛藤しながらスタッフ一同熱く作ってます。