テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第256回は、24日に放送されたフジテレビ系特番『ハモネプ2022クリスマスSP』(21:20~)をピックアップする。
『青春アカペラ甲子園・全国ハモネプリーグ』は、主に2007年から続くおなじみの特番だが、12月の放送は初めて。しかも24日に「クリスマスSP」という新たな試みだった。12月やクリスマスとアカペラの相性は良さそうなだけに、定番化などの可能性をチェックしてきたい。
■クリスマスソングメドレーで開幕
6月のエントリー開始から183組もの応募があり、ネット投票に40組、全国1回戦に18組が挑み、勝ち抜いた12組が、この日放送される決戦に挑んだ。
大会形式は、3組×4ブロックの各1組+敗者復活1組の計5組がファイナルステージに進出。お笑い賞レースに照らし合わせると、その大会形式は『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)に似ているのかもしれない。
Aブロック1組目は、メドレー専門の岡山「めどれみ」がクリスマスソングメドレーを披露。竹内まりや「すてきなホリデイ」、広瀬香美「ゲレンデがとけるほど恋したい」、松任谷由実「恋人がサンタクロース」、桑田佳祐「白い恋人達」、BoA「メリクリ」、back number「クリスマスソング」と各年代のヒット曲を網羅する構成で、季節性も大衆性もトップバッターにピッタリだった。
歌唱直後、「めどれみ」のメンバーを着席させてトークタイムに突入。ゲストからの絶賛が相次ぐ中、最注目は「全25大会見た」という“ハモネプマニア”の山田裕貴か。愛情たっぷりのコメントだけでなく、プロ目線のような口調で笑いを誘い、さらに次期フジ系ドラマの番宣をするハイブリッドさも見せた。
続いて、「アカペラに詳しい25人が、ハーモニー、ボーカル、アレンジ、テクニック、リズムの各項目100点満点で採点する(計500点満点)」という審査内容を紹介。「めどれみ」はハーモニー77点、ボーカル83点、アレンジ81点、テクニック82点、リズム84点の計407点で、発表後にゴスペラーズ・北山陽一がプロ目線からコメントした。
2組目は、シティポップを好む大阪「シャンディタウン」で、曲は山下達郎「クリスマス・イブ」。ハーモニー85点、ボーカル85点、アレンジ86点、テクニック89点、リズム90点の計435点で、暫定1位の「めどれみ」を上回った。暫定1位と全項目を真横に並べて見せる演出は「どこがどれくらい上回っていたか」が分かりやすく、エンタメ性も高い。
3組目は、史上初“3人ボイパ”の東京「ビート・ビート・ビート」で、曲はAdo「新時代」。ハーモニー79点、ボーカル80点、アレンジ82点、テクニック89点、リズム86点で計416点だった。
クリスマスと今年のヒットがミックスされたAブロックの選曲に、制作サイドの狙いがハッキリ。技術だけでなく、グループのカラーや選曲も選考のポイントだったのではないか。
■“レベチ”の最年少グループが登場
Bブロック1組目は、大学4年間“尾崎豊ひと筋”の愛知「太陽の破片」で、曲は尾崎豊「卒業」。ハーモニー78点、ボーカル83点、アレンジ83点、テクニック83点、リズム87点の計414点だった。
2組目は、演歌にハマったマレーシア留学生を擁する新潟「すばる」で、曲は石川さゆり「津軽海峡・冬景色」。ハーモニー80点、ボーカル84点、アレンジ87点、テクニック83点、リズム82点の計416点だった。
3組目は、“仏教の東大”龍谷大メンバーで構成されるボイパなしの京都・滋賀「ささめき」で、曲はワム!「Last Christmas」。ハーモニー86点、ボーカル84点、アレンジ86点、テクニック90点、リズム86点の計432点だった。
Bブロックの選曲は、明らかに中高年向け。「それを大学生たちが歌うことで、名曲の魅力が違った形で引き出される」という王道だが視聴者に寄り添うような流れが感じられた。
Cブロック1組目は、バブル時代のパフォーマンスを盛り込む関西「ジュリアナイト」で、曲は荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」。ハーモニー80点、ボーカル85点、アレンジ90点、テクニック86点、リズム84点で計425点だった。
2組目は、5年越しの出場をつかんだ京都・愛知「しっくすなっつ」で、曲はOfficial髭男dism「ミックスナッツ」。ハーモニー79点、ボーカル80点、アレンジ88点、テクニック86点、リズム88点で計421点だった。
3組目は、平均年齢14歳の東京・神奈川「チョコミン党」で、曲はマライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」。ハーモニー89点、ボーカル92点、アレンジ91点、テクニック91点、リズム90点で計453点だった。
このグループは「カラオケ大会の最強メンバーで結成された」というが、すでにテレビ出演の豊富なメンバーが多く、誰もが歌唱力の“レベチ”を感じるプロ予備軍。そのパフォーマンスは圧巻だっただけに、アレンジやコーチの存在なども含め、他の大学生たちと比べていいのか……という感もあった。