2016年3月のダイヤ改正に関して、JR西日本のプレスリリースを見たら「新サンダーバード1号」という言葉を見つけた。「サンダーバード」といえば、架空の国際救助隊が活躍する特撮ドラマ『Thunderbirds(サンダーバード)』を連想する人も多いだろう。ちなみに現在はNHK総合で、リニューアル版の『サンダーバード ARE GO』を放送中だ。「新サンダーバード1号」なんていわれると、列車よりもロケットの新型かと思ってしまいそう。JR西日本の担当者さん、ちょっとだけ狙った!?

特急「サンダーバード」。昨年からリニューアル車両も導入された

列車のほうの「サンダーバード」は、2016年3月ダイヤ改正まで定期列車として23往復運転され、他に臨時列車もたくさん設定されている。近畿と北陸を結ぶ主力列車だ。2016年3月26日から下り始発列車を繰り上げ、夕方の空白時間帯に上り列車を設定する。

ところで、「サンダーバード」の前身となる特急列車として「雷鳥」があった。1964年の東海道新幹線開業と北陸本線金沢~富山間の電化に合わせて、同年12月に特急形電車481系を使った列車として1往復がデビューした。運行区間は大阪~富山間だった。もちろん東海道新幹線と接続する意味もあった。

列車名「雷鳥」の由来は、富山県の立山連峰に生息するニホンライチョウ。江戸時代まで山の神の使者として崇められた鳥だ。明治以降、海外から狩猟文化が伝わり乱獲されたが、明治末期に保護鳥に指定され、大正時代には天然記念物に指定され、さらに昭和時代には、いわゆる鳥獣保護法によって特別天然記念物となった。

日本の特急列車は「つばめ」「はやぶさ」「つばさ」など、鳥に由来する名前が多く、歴史も長い。大阪と北陸を結ぶ特急列車の名前として、「雷鳥」は自然な成り行きだったといえる。「雷鳥」は人気列車となり、次第に同じ区間を走る急行列車を格上げするなどで運行本数を増やしていく。車両は481系、485系、583系などが加わった。運行ルートは当初、米原経由で、後に湖西線経由となった。

「スーパー雷鳥」から「サンダーバード」へ

特急「雷鳥」の誕生から25年目の1989年。JR西日本は「雷鳥」の魅力を高めるため、展望グリーン車を4往復に導入し、「スーパー雷鳥」とした。さらに1992年、一部の列車が特急形電車681系に置き換えられた。この681系の愛称が「サンダーバード」だ。681系「サンダーバード」は、1995年から「スーパー雷鳥」として運行を開始した。「スーパー雷鳥」は485系と681系の2種類があった。

1997年のダイヤ改正で、681系「スーパー雷鳥」の列車名が「サンダーバード」になった。特急「サンダーバード」の誕生だ。大阪と北陸を結ぶ列車は681系「サンダーバード」と485系「スーパー雷鳥」「雷鳥」の3種類となり、後に683系が導入されて「スーパー雷鳥」の名称は消えた。2011年に485系「雷鳥」は運行を終了し、大阪と北陸を結ぶすべての特急列車が「サンダーバード」になった。

さて、681系は特急「雷鳥」に導入するために開発された。そこで愛称は「サンダーバード」とした。「雷」は英語で「サンダー」、「鳥」は「バード」だから、誰でも連想しやすい愛称だ。しかも「サンダーバード」といえば、先述の通り人形劇を使った人気のSFドラマのタイトルでもあった。認知されやすい。実際に681系が登場したときのテレビコマーシャルにも、『サンダーバード』のキャラクターたちが採用された。

ところが、実際は「雷鳥」と「サンダーバード」は別の鳥だ。「雷鳥」は実在するけれど、「サンダーバード」はアメリカ大陸の先住民族に伝わる伝説の鳥である。雷の精霊として信じられ、その姿は大きな鷲で、羽に雷のような模様がある。SFドラマの『サンダーバード』の名前の由来はこちらだ。

そして「雷鳥」の英語名は「サンダーバード(Thunderbird)」ではなく「ターミガン(Ptarmigan)」または「グラウス(Grouse)」だ。冬に白い羽根に変化するほうがターミガン、羽の色が変わらない方がグラウス。ニホンライチョウはターミガンの仲間である。