東京にこんなローカル線があったなんて!

世界の都市の中でも、東京は鉄道の運行回数の多さで知られている。東京駅は日本で最も列車の発着回数が多い駅であり、平日でおよそ3,000本の列車が発着するという。

その東京駅からたった5kmしか離れていない場所に、1日1往復しか列車が走らない路線がある。しかも土日になると運休してしまう。そんなに少ない本数で大丈夫だろうか。

その路線は東京駅の東側、江東区を南北に走る。総武本線の貨物線、通称「越中島支線」だ。亀戸駅から総武本線と離れて南下し、江東運転免許試験場のそばを通り、京葉線潮見駅付近までのルートである。東京メトロ東西線の車両基地に並んで越中島貨物駅があり、そこが終点。正式な路線は小岩駅から越中島貨物駅までで、小岩~亀戸間は総武本線と平行している。

赤の太線で示したのが越中島支線のルート。亀戸駅付近から専用の路線となり、越中島貨物駅まで通じている

廃線跡と勘違いされることも

亀戸駅から越中島貨物駅までは貨物専用の路線となっていて、旅客用の時刻表には掲載されていない。だから沿線住民にとってもほとんど縁がないだろう。土日は運休だから、都心に通勤するサラリーマンなどはここを走る列車を見たことさえないかもしれない。廃線跡だと思われても何ら不思議ではない。

しかし、この区間には貨物列車が設定されている。「貨物時刻表」によると、新小岩操車場を12時10分に発車し、越中島貨物駅に12時22分に到着する列車と、越中島貨物駅を13時42分に発車し、新小岩操車場に13時55分に到着する列車の、わずか1往復。その列車を見に行ってみた。

東京メトロ東西線の東陽町駅を出て、永代通りを東へ歩くと、単線の踏切を見つけた。これが越中島支線だ。運行本数が少ないからか、踏切には道路と同じ信号機が設置されていた。

越中島支線の列車を観るには絶好のスポットがある。永代通りの踏切から北へ約1kmのところにある「南砂線路公園」だ。都営バスの境川停留所から近く、越中島支線の線路のそばが遊歩道になっている。

筆者は時刻表と距離から推理し、おそらく12時15分頃に列車が通過するだろうと見込んで待った。するとたしかに列車が来た。ディーゼル機関車に牽引されて、背の低い貨車がいくつか連結されていた。短い列車だった。

貨物列車が来た!

行っちゃった…

この公園の近くにも踏切がある。観察していたら、列車が走る前に係員が歩いていった。あまりにも列車が少ないため、本当に廃線だと勘違いする人がいるらしく、わざわざ車に注意を喚起しに行くようだ。

南砂線路公園の近くにある踏切

「1往復のために大変ですね」と声をかけたら、「いえ、3往復あるんですよ。今日の午前の便は運休したけど」とその人は言う。どうやら時刻表にも記載されない、不定期扱いの列車が2往復設定されているらしい。そういえば南砂線路公園の看板にも3往復と記されていた。時刻表では1日1往復、その実態は1日3往復、ということのようだ。

ちなみに、貨物列車の積荷は「レール」とのこと。越中島貨物駅にはJR東日本のレールセンターがあり、トラックで運ばれた短いレールをつないで長くする工場がある。そこから各地へ、貨物列車がレールを運んでいるそうだ。