つい先日、大型台風が日本列島に上陸し、交通機関のダイヤが大幅に乱れた。急いで特急列車に乗ったのに、到着が遅れてしまった人も多いことだろう。と、ここでちょっとした情報を。列車が遅れた時間によっては、特急料金が払い戻される場合があるのだ。慌てて駅から出てしまうと損をするから要注意だ。
新幹線、特急、急行は2時間遅れで料金の払い戻しを受けられる。
JRの特急・急行列車の場合、旅客営業規則では「2時間以上到着が遅れると、その列車の特急料金、急行料金の全額が払い戻しになる」と定められている。払い戻しを受ける場合は、乗車した証明書として、その列車の特急券や急行券を提出する必要がある。だから、列車が遅れたからといって、慌てて改札口にきっぷを入れて立ち去ってはいけない。駅の精算窓口で払い戻しを請求しよう。
新幹線特急券も同様で、2時間以上の遅れで払い戻しになる。ここで「あれ、新幹線は1時間遅れで払い戻しじゃなかったっけ」と思う方もいらっしゃることだろう。実は私もそう思いこんでいた。確かに東海道新幹線が開業したときは、新幹線特急券は1時間以上の遅れで払い戻しだった。しかし現在は在来線と同じ2時間で統一されている。東海道新幹線の場合、積雪シーズンは関ヶ原付近で列車が遅れることがある。旅行だけではなく、出張で東京 - 大阪間を利用するビジネスマンにも、ぜひこの「2時間遅れ払い戻し」ルールを覚えておいてもらいたい。
なお、私鉄の有料特急の場合は、会社ごとに払い戻しのルールが定められている。近鉄の場合は1時間の遅れで全額払い戻し、小田急の場合は自社線内の特急については1時間、御殿場線乗り入れの「あさぎり」の場合は2時間以上の遅れで全額払い戻しになる。
乗っていた列車が運休になったら
乗車中の列車が事故や故障、災害などで運休となった場合は、「後続の列車に乗って旅行を継続する」か、「旅行を中止する」かで対応が変わる。
「後続の列車に乗って旅行を継続する」とは、車両故障などで特急列車の運行が打ちきりになったけれど、路線自体は運行可能で、後続の列車に乗って目的地に行ける場合だ。この場合は運休した列車の特急・急行料金を全額払い戻しとした上で、後続の同等の列車、座席を利用して目的地まで行ける。同等の列車とは、「乗っていた列車が特急列車なら後続の列車も特急に乗車できる」ということだ。このとき、後続の列車の特急・急行料金は不要。ただし、乗車券の払い戻しはない。
「旅行を中止する」とは、その先の区間が災害なとで不通になり、旅行を中止して出発駅に戻る場合だ。このときは特急券・急行券と乗車券も全額払い戻しになる。さらに、出発駅まで帰るときも同等の列車に無料で乗車できる。この制度を「無賃還送」という。
「無賃還送」は、後続の列車の有無にかかわらず選択できる。例えば、「東京本社の人が大阪支社の会議に出席するために新幹線に乗ったものの、2時間以上の遅れが確定した。後続の列車に乗せてもらったとしても、会議には間に合わないから大阪へ行く意味がない。だから東京に帰る」という場合だ。このときも乗車券・特急券を全額払い戻ししてもらった上で、無料で同等の列車に乗って東京に引き返せる。
また「無賃還送」は、乗っている列車が2時間以内の遅れでも利用できる場合がある。それは途中の駅で別の特急列車などに乗り継ぐ場合だ。列車の遅れにより、「予定していた乗り継ぎ列車に間に合わなくなり、最終目的地の到着時刻が2時間以上遅れてしまう」という場合は、乗っていた列車の遅れが2時間以内の遅れでも払い戻しを受けられて、出発駅まで無料で引き返せる。つまり、目的地に行かずに出発地に戻るという条件での適用だ。
ただし、「無賃還送」は「事情により旅行できないお客様を出発駅までお送りする」という制度のため、途中下車は認められない。「大阪までは行けないけれど、名古屋で降りて、名古屋支店から電話で会議に参加する」というような場合は無賃還送はできない。乗っていた列車の払い戻しを受けるだけで、その後は改めて乗車券などを購入する必要がある。
後半の制度はちょっとややこしいけれど、要するにJRの特急列車は2時間以上で特急料金が払い戻しになり、改札口から外に出る前に、必ず精算窓口に立ち寄ろう、ということだ。もし精算窓口が大混雑している場合は、改札口の駅員に申し出て、きっぷに証明印を押してもらえば、後日精算できる。いずれにしても、黙って改札口を出てしまったら損、なのだ。