元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな感情は「喜」です。

怒っています。成人してから、他人に憤らないように、優しくなれるように生きてきました。しかし、今回は、憤怒で海馬や大脳、小脳、それを包む頭蓋を含む部分が爆発しそうです。ぼくが感情表現の「怒り」をあらわにしないのは、他人の前で自分の感情をコントロールできないのはみっともないし、自分に余裕がないからなのだ、と考えているからです。

怒るのはいつだって器が小さく、愚かで、貧しい人です。良識がある賢者は、裕福で、他人の細かい所作に気づくことはあっても、言及しません。ただ、ぼくがどんなにそうありたいと思っていても、この思いはみなさんに伝えたい。去年の今頃、ぼくは裁判をしていましたが、そのときでも全く怒っていませんでした(もちろん、被告に対し不快な気持ちはありましたが)。

ぼくは個人事業者としてたくさんの取引をしています。ブログやホームページからコンタクトが取れるので、知らない方からご依頼のメールがきます。そんな中、先日、講演会の依頼がありました。メールには、送信者の名前と送信者がとある団体の代理人であること、おおよその日程、公演時間、場所、予算が書いてありました。ここで、送信者は便宜上Kと呼ぶことにします。

その日程はスケジュールが空いていたので、伺える旨と、予算がぼくの講演会の設定金額に満たなかったので、設定金額を伝えました。

Kからの返事は、「主催者に相談してみます」で、ぼくは「ご連絡お待ちしています」と返信し、2週間の月日が流れました。どうなったのかな、と思うこともなく日々を過ごしていると、よしもとの社員さんから連絡がありました。 「講演会の依頼って受けてる?」

いままで、暗黙の了解でやっていた、個人取引について、ついに話し合いをしなければいけなくなったのです。どうやら、ぼくにメールをしてきたKが、大阪のよしもとさんに講演依頼をして、ぼくが東京よしもと所属だったので、東京の社員さんに連絡がいき、東京よしもとの社員さんからぼくに連絡がきたようです。

そして、Kはぼくと既にやりとりしていることを言ったそうです。これはバツが悪い。闇営業ではないけれど、所属している以上、芸名で何かをすることには制約があります。ただ、それでも、生きるためには働く必要があって、その辺はきっと現代の社員さんたちは理解してくださっています。

しかし、大阪のよしもとさんからも連絡が来て、話が大きくなると、立場上見過ごすわけにもいかない。改めて、事務所を通して依頼を受けることになるでしょう。これには抵抗がありません。

しかし、Kはなぜぼくを無視して、大阪よしもとさんに連絡をしたのでしょうか。それは、東京よしもとの社員さんとKとのやりとりで明らかになるのですが、そして、ここからが憤懣やる方ないのですが、Kは大阪よしもとさんと東京よしもとさんに10万円で依頼していたのです。

ぼくに高い金額を言われて、値切るためによしもとさんに連絡をしたのです。自分の利益のためだけに、窓口を変えたのです。これは信義則に反します。

信義則とは「信義誠実の原則」です。ぼくの持っている三省堂国語辞典には語釈がなかったのですが、デジタル大辞泉によると、「社会共同生活において、権利の行使や義務の履行は、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行わなければならないとする法理」とあります。

円滑で適正な商取引のために、信頼を裏切ってはいけないわけです。どうして、講演する本人が「その金額では受けない」と言っているのに、その仲介業者に位置するよしもとさんにそれより低い金額で依頼して、成約に至ると思ったのでしょうか。ぼくの怒髪は天を突きました。

ぼくはKとKを使いっ走りにしている組織とは今後の取引はしないでしょう。いや、ぼくの提示した10倍くらいの金額を出されたら受けますが、そんなことはありえませんし、満席のライブで10万回くらい爆笑を取らない限り恩赦も出しません。

Kの行動がよろしくないのは、乳飲み子以上であれば誰でも分かることです。商取引を行う上で、マナーにもマネーにも反する恐ろしい行いです。みなさんも未知の誰かと取引をするときは、信義則を思い出し取引すると良いと思います。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら