元国税職員さんきゅう倉田です。好きな所得は「不動産所得」です。

不動産会社に勧められて不動産投資を始めたAさんがテレビ東京の『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のインタビューに答えていました。

タイトルは「若者が陥る不動産投資のワナ 不正ローンで4,000万円一括返済」。金利の低い住宅ローンを組んでマンションを購入し、賃貸に出して家賃収入を得ていたそうです。

住宅ローンを組むためには条件があって、本人や親族が住まなければいけません。不動産投資をするのなら、他人が住むことになるので住宅ローンは組めない。しかし、不動産屋に「大丈夫」と言われて、契約をしました。

契約時の書類に虚偽記載をしたのであれば、その時点でおかしいと気づくはずです。しかし、不動産屋を信じていたために、言われるがままに手続きを勧めてしまったのかもしれません。

1年後、本人が居住しているかどうかを尋ねる文書が住宅金融支援機構から届きました。それについてAさんが不動産屋に尋ねたところ、こう言われます。

「アンケートのようなものだから答えなくていい」

これにより、Aさんは文書に答えませんでした。アンケートであっても答えた方がいいし、文書を読めば内容がわかります。もしわからなかったのなら、不動産投資を始めるほどのリテラシーが備わっていない。勉強の大切さを改めて感じます。

その後、居住実態がないことがわかり、「全額繰上償還請求の予告」が届き、ローンを一括返済することになります。この頃には、不動産屋とは連絡が取れなくなっていました。

Aさんは言います。

「不動産のプロは詐欺のようなことはしないだろうと思っていて後悔している」

「カラスは白い」みたいなことを言っています。この連載では何度も不動産業について取り扱っています。実際に不動産屋さんや不動産投資を行うオーナーから聞いた話やぼくが敷金返還請求を行った少額訴訟について書いてきました。

そこに登場する不動産屋さんは概ね悪い人です。不動産屋さんに「悪い人が多い業界ですか」と聞いて、否定されたことはありません。他の職業では、そのような質問を肯定することはないように思います。

悪い人が多く、さらにそれが認知されている。それでもまだ、不動産のプロは詐欺のようなことはしないと思っている人がいることに驚きました。

投資用マンションを買って、不動産投資をしている友人がいます。彼は、不動産投資をすれば所得税の還付が受けられて節税になると不動産屋から聞き、マンションを購入しました。

必要となる確定申告についても不動産屋が補助する旨の案内を受けていましたが、実際に確定申告の時期になると、連絡が取れなくなりました。

自分で調べて確定申告をし、所得税の還付を受けることができましたが、入居者が現れず、不動産投資はうまくいっていません。給与から源泉徴収された所得税が還付になっても、投資がうまくいかなければ意味がありません。彼は安易に不動産投資を始めたことを後悔しています。

騙される人が悪いとは思いません。騙す人が悪い。しかし、社会常識を持たないことや自分で調べようとしないことは悪いことです。自分の身を守れるのは自分だけという感覚を持たなければいけません。

子どものころ、新聞を読みなさい、ニュースを見なさいと言われたけれど見なかった。なぜならば、面白くなかったし、合理的な理由を説明されなかったから。今では勧める理由がわかります。

不動産業界の悪質な事件、例えば「カボチャの馬車事件」などはニュースを日常的に見ていれば知ることができます。そうやって見識を広めることで将来に備えることができる。

子どもの頃からでなくとも、せめて大学生になったらニュースを見ると良いと思います。

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