元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きなプロポーズの言葉は「ぼくの領収証、整理してくれませんか」です。
自宅で、アクセサリーを作ったり、お客さんを招いてネイルをしたり、アロママッサージを施したりする主婦の方が増えているようです。特に、中小企業の社長さんの奥様に多いような気がします。
子育てが落ち着いて、時間に余裕ができ、趣味で始めたら友人に好評で、いいお小遣い稼ぎになると考えて始めるのでしょうか。あるいは、子供の頃からの夢を諦めきれず、ご主人にお金を出してもらって専門学校に通うのでしょうか。
専門学校の学費は経費になる?
専門学校に1年間通い、100万円払ったとして、それが経費になるかならないかはとてつもなく大切です。趣味で学校に通い、趣味でネイルをし、趣味でマッサージをするのなら、もちろん経費にできません。個人事業を、卒業後、あるいは卒業前に始めるなら、支払ったお金は経費になる可能性があります。この機会に開業することをお勧めします。
しかし、個人の収入や経費は、1月から12月までを1年分として確定申告をします。4月に入学し3月に卒業の場合、卒業してからすぐに開業したとしても、前の年に支払ったお金は、卒業した年の経費にすることはできません。税法では、基本的に、お金を払ったり買ったものを使ったりした年の経費になります。
でも、入学した年は、技術も未熟だし、お客さんがいるわけでもないので、ほとんど収入がないと思われます。学校に100万円も支払ったのに経費にできないなんて、酷です。でも、安心してください。所得税法には、「開業費の任意償却」という制度があります。
「償却」と言うと、「減価償却」があります。仕事で買った30万円以上の物は、全てを買った年の経費にできるわけではなく、何年かに分けて経費にするというものです。減価償却については第8回 「ボノボでもわかる減価償却と耐用年数」で紹介しています。
個人事業者の減価償却は、「強制償却」することになっていて、買った年からその物の耐用年数(税法で決まっている年数)で必ず経費にしなければいけません。だから、赤字でこれ以上経費がいらなくても、減価償却して経費を増やさなければいけないのです。法人の場合は、「任意償却」なので利益がたくさんあるときに経費にできます。
でも、開業費は「繰延資産」と呼ばれ、任意償却することができます。学校に100万円かかったとして、卒業後、しばらく利益が出なかったとしても、100万円は繰延資産としてとっておき、人気が出て儲かるようになってから、経費とすることができます。経費にすると言っても、何年も前に払った100万円です。
実際にお金を動かすわけではなく、帳簿上で処理するだけです。この場合の処理とは、簡単に言うと「開業費100万円」と書くことです。その年の利益が50万円だったら、100万円を全て経費にせず、50万円だけ経費にして、残りは来年や再来年に経費にすることもできます。あなたの好きなときに自由気ままに経費にできる制度、それが、「任意償却」なのです。
それでは、どんなものが「繰延資産」に該当するのでしょうか。国税庁は次のように言っています。
「開業準備のために支出した広告宣伝費、開業までの給料賃金、新製品の試作費用、支店開設などのために支出した広告宣伝費、接待費」)
これらを繰延資産として、利益が出たときに任意償却することができます。 ただし、開業のために買った家具や機械が30万円を超える場合は、減価償却資産に該当するので、強制償却することになります。
もし、あなたが、ネイルを本格的に学びたく、学校に通うなら、入学金や授業料といった支払ったお金の記録をつけると良いでしょう。趣味で通い始めた方も、卒業後に事業として始めれば、趣味に使ったつもりのお金を経費にすることができます。事業を始めるのはとても簡単です。少し工夫するだけで節税できる可能性があります。「趣味は仕事にする」のが、現代の賢い生き方なのです。

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