元国税職員さんきゅう倉田です。好きな直接税は「所得税」です。
前回から続いています。
フリーランスとして働いていると、追加の作業を求められることがある。しかし、追加料金を請求するのは、困難を極める。素晴らしい取引先から指示を受け、追加の作業を行ったさんきゅうは、納品後に交渉を行い……。
自分が請求しなければ、次に続くフリーランスも無償で追加の作業を求められるかもしれない。お金について、毎日考え、発信している芸人として、それは正しい行いなのか。
請求しよう。
自分の行った作業を列挙して、それに見合った金額を請求すればよい。しかし、別にお金が欲しいわけではない。金額なんて、いくらでもいい。0円であることがまずいのだ。
ぼくは悩んだ末、「100円でも200円でもいいので」と添えて、報酬の増額を提案した。先方は快く応じてくれた。さらに、提示された金額は100円よりはるかに大きな金額だった。
ここで、1万円とか3万円を請求していたら、先方は不快に感じて、臍を曲げてしまったかもしれない。今回は、100円という寡少な金額から、こちらの意図を汲んでくれたのかもしれない。そして、大企業であるという矜持から大きな金額を提示してくれたのかもしれない。
報酬だけでなく、作業の内容も明確にしておかなければならない
去年、ワインイベントの出演の依頼があった。イベント開催までの3ケ月の間、月に1度の打ち合わせにも参加してほ欲しいという。打ち合わせでは報酬は発生せず、出演料のみの支払いを提案された。
イベントにおける一般的な取引内容だと思った。
しかし、打ち合わせは本当に月に1度だろうか。本番前の2週間は、週に3回くらい打ち合わせをするのではなかろうか。イベント用の台本を作ってくれとか、おすすめワインを紹介するための資料を作ってくれとか言われることはないだろうか。
契約時に、「イベント出演料◯◯円」と決めてしまうと、他の作業の報酬を請求することが難しくなる。
「イベント出演と月に1度の打ち合わせで◯◯円」と作業内容を共有し、追加の作業がある場合は別段協議する旨を明確にしなければならない。有料の作業と無料の作業に線を引くのだ。
『ラーメン発見伝』(小学館)という漫画の中に、こんな話があった。
おいしいラーメン屋さんの店主が、従業員に支店を任せていたところ、品質の劣る低価格の材料を勝手に使われ、売上の一部を着服された。
不正が明らかになっても、店主は信頼関係で仕事をしたいという。これに対し、登場人物の一人が「信頼関係は契約でしか築けない」と店主を諭した。
従業員や取引先は友達ではないのだ。一緒に働いて信頼できる人物だと思っても、契約は必要だ。契約書を巻いたからこそ、築ける関係もある。互いの合意と契約内容の共有が、のちのトラブルを防いで、円滑な取引の一助となる。
契約書を巻かなかったために起こった、さんきゅうの失敗
2年ほど前、YouTubeの動画を毎月8本制作する依頼を受けた。
月におよそ40万円の報酬で半年ごとの自動更新。自分にとって大きな契約だったが、最初の半年で止めてしまった。契約書を巻かなかったために、追加の作業を次々と依頼されるようになったからだ。
初めは、撮影と出演、編集だけを依頼され、テーマの選定と台本作成は依頼主が行っていた。2ケ月ほど経った頃、テーマを提案するように言われ、そのさらにひと月後には、台本作成もすべて任されてしまった。
その時点で、「それは別途報酬をいただきます」と言うべきだった。しかし、相手の余りにも高圧的で不遜な態度に臆してしまった。
相手は増長し、撮影・編集してアップロードした動画の再撮影を要求したり、撮影日を急に変更したりするようになった(変更に伴い、ぼくは用意した会場の賃借料とスタッフの賃金を2日分払った)。
LINEで連絡を取り合っていたのも良くなかった。四六時中、意見や修正依頼が届くようになり、依頼主から受けるストレスはぼくの許容量を超えてしまったのだ。
別の担当者を付けてつけてほ欲しいと懇願したが、「我慢しろ」と言われて聞き入れられず、更新せずに止めさせてもらった。
芸人になって、ずっとたのしい仕事だけしていたが、初めて「もう嫌だ」と思った。お金のために働いているわけではない。よりよく生きるために働いているのだ。そして、たのしく働いていくためには、作業と報酬を結びつけて、明確にすることが重要だ。
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