元国税局職員 さんきゅう倉田です。
仕事に関する考え方はひとそれぞれ。同じ芸人でも、自分と全く違う考え方の人がいると、大変勉強になります。一見、不合理な考え方でも、その人なりの論拠があって、それを知ることで、自分の行動に活かすことができます。
ただ、フリーランスとして売上を増やそうと思ったら、一部の不合理は是正しなければいけません。また、同業者の不合理を反面教師にすることで、自分の行動を再確認することもできます。
今回は、先日出会った声優の男の子から学んだこと。
24歳の声優Aくんは、大学生の頃から声優業界に入り、現在芸歴5年目です。
大学卒業と同時に上京し、埼玉県の大宮で一人暮らしをしています。3カ月に一度、お芝居の舞台があるくらいで、声の仕事はほとんどありません。週に5日ファミレスでアルバイトをして、それ以外の時間はアニメを観て過ごしています。
彼とはコワーキングスペースで行われた、イベントの打ち上げで知り合いました。ひとりずつマイクを使って自己紹介をする時間があり、そこで「声優をしています。Aです。そんなに売れていないので、適切な距離感であれば一般の方とも交流します」と言っていたのが印象的でした。
きっとぼく以外の参加者も、彼の名前をTwitterで検索したと思います。彼のフォロワーは400人。多くはありません。
一般の人でももっとたくさんのフォロワーがいることもあるし、声優さんは、ぼくらが全く知らないような人でも、数十万~数百万のフォロワーがいるのが一般的です。そこを考慮すると、彼が駆け出しの声優であると推察できます
ぼくが「吉本興業で芸人をしています、さんきゅう倉田です。お願いします」と言って演壇を降りると、Aくんに話しかけられました。
「芸人さんなんですか?フォロワーたくさんいますね」
近隣の業界なので親しみを持ったようです。ぼくは、彼の先程の発言に興味を持ったので、話を聞くことにしました。
一般の人との適切な距離
一般の人との交流を控えているようだったので、彼の生活のなかで一般の人とエンカウントすることが多そうなアルバイトのときはどうしているのか、気になりました。
「なるべく喋らないようにしています。無視はできないので、話しかけられないように、そういう空気を作っています。自分は一般人ではないので」
「でも、舞台を見に来てもらおうと思ったら、アルバイトの仲間くらいしかいないんじゃない?」
「そうですね。だから、舞台は観に来てもらいます」
若さが溢れています。きっと、20代の頃のぼくだったら、不愉快に感じて、そんな自分勝手なことは許されないよ、などと言っていました。今は35歳のおじさんなので、逆に「かわいいなあ」と思ってしまいます。
フリーランスと流行
彼のTwitterを見ると、1カ月に1度ほどしか投稿していなかったので、それについても聞きました。
「ほとんどやってないですね。理由はないんですけど」
「ワニが流行ってるのは、知ってる?」
「ワニ?なんすか、それ」
このとき、Twitter上ではワニがどのように死ぬのか、という話題がかなり盛り上がっていました。別にワニのことは知らなくてもいいと思います。
ただ、特に理由なく、タレントのインフラと化したTwitterをやらず、世俗に疎いことは、フリーランスとしてネガティブな要素だと思います。
クリエイティブな業界では、先駆者の良いものを基礎として新しいものが生み出されるので、タレントには流行した創作物を知っておいてほしいと思います。 フリーランスとしての心構えや行動が誤っているので、「そんなに売れていないので、適切な距離感であれば一般の方とも交流します」などと、口にするんだと思います。
誤った価値観は、売上の減少に繋がります。自分の立場と位置を自覚し、一般人とタレントなどという、驕った線引きを消し去ることが、若手のタレントには必要だと感じました。
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