元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな取材は「新聞社の取材」です。

毎月、どこかの会社から取材を受けます。取材というのは、タレントの仕事の中で、比較的、効率がよく、かつ、たのしい業務だと思います。

特別な準備は不要で、質問に対し、自己の経験や思考を示す仕事です。相手は、自分の話を聞きたいと考えていて、多くの場合、好意的です。

逆に、ぼくが取材をしたこともあります。取材をする側になるとわかるのですが、他人に話を聞くには、とてつもなく準備が必要です。相手から頂戴する時間を可能な限り短くするため、調べれば分かることは予め調べておき、それを踏まえた上で質問を考えます。

もちろん、当たり前のことは聞きません。ぼくが受けた取材の中で、一度だけ、「どちらの事務所に入っているんですか?」と聞かれたことがあります。ちゃんとお答えしますが、Googleで調べてすぐに出てくる情報を聞くのは、もったいないと思います。取材時間は決まっていて、そこに安くない金額を支払っている以上、面白い話をなるべく多く聞くように努めなければいけません。

最初の質問がそれだったその取材は、それからずっと場当たり的に質問を考え、就職活動の面接のように同じことを何度も聞き、自分の欲しい回答に誘導し、約束の時間を大きくオーバーした上に、完成した記事は誤字だらけでした。

ぼくは取材をされている側なので、どんな質問がきても構いません。もちろん、答えられない質問もありますが、同じことを聞かれても「さっきお答えしませんでしたっけ?」などとは言わず、別の言い回しで答えています。

ライターなどが、安易な気持ちで取材を行うと、媒体の評価を損ねてしまう危険があります。取材は、「ただ話を聞くだけの誰でもできる仕事」ではないのです。

取材時間、場所、報酬はどうやって決めるか

媒体によって、取材のギャラの相場があるようです。

経験上、雑誌の取材は報酬が低く、ウェブ媒体が通常の価格で、立ち上がったばかりのウェブサイトは予算が潤沢です。また、新聞の取材は、報酬が発生しませんが、報酬が不要なくらい圧倒的な影響力があります。

僕が直接受ける取材の報酬は、所属事務所が数年前に設定してくれた価格(○万円)を流用しています。

去年の騒動で、所属事務所も事前にギャラを確認してくれるようになったので、事務所を通した取材の場合は、○万円に事務所の取り分(金額は不明)を加えて、請求してもらっています。

直接の取引の場合は、取材時間や場所をコントロールできますが、事務所を通した場合は、注意が必要です。間に入っている社員さんは、場所や拘束時間にこだわりがない可能性があります。

だから、必ず「1時間○万円で、場所は~~の周辺でお願いします」と伝えています。この方が、取材者が場所や時間で迷った場合の意思決定が、スムーズになります。

また、時間を決めておかないと、40分程度で終わる内容の取材に1時間半を提示され報酬は1時間分となることがあります。時間とお金は等価なので、報酬と取材時間は必ず設定しなければいけません。

取材時間に余裕があると、質問を事前に考えてこない、プロフィールを読み込んでこないなどの道徳的危険も発生します。

50回の取材の中で、最も快適だったのは

芸歴7年目くらいから取材を受けはじめて、4年間で50回くらいの取材を受けました。その中で、最も素敵だと思ったのは、とある新聞社の取材です。

日本人なら誰もが知っている新聞です。その新聞社の50代の男性は、取材時間を30分しか要求しませんでした。通常は、1時間です。短い分にはこちらは構いませんが、足りるのでしょうか。

実際に会ってみると、ぼくに関するありとあらゆることはすでに調べてあって、事実確認と調べても出てこないぼくの所感を聞けば済むようになっていました。取材では絶対に行われる録音もなく、速記で対応し、所要時間も約束より短い20分。後日の原稿チェックもありませんでした。

原稿チェックがないのはデメリットもありますが、新聞社の人の取材なら、問題ないでしょう。誤字はまずないし、特定の事件や思想を扱ったわけではないので印象を操作するようなこともないと思います。自分が取材を行うときの手本にしています。

取材を受けるときは、金額と時間と場所の設定を忘れないように、取材を行うときは準備を怠らないようにしましょう。

さんきゅう倉田

新刊『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』

(総合法令出版/1,404円/税込)
さんきゅう倉田の初の著書が発売されました。ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員やパート・アルバイトの方のための最低限の税の情報を、たのしく得られます。購入は コチラ