近年、豪雨や猛暑など異常気象が相次ぎ、天候の急変に備える重要性が高まっています。昔から人々は空を見上げ、雲の形や動きから天気の変化を読み取ってきました。実際、雲の中には異常気象や自然災害の前触れを示すものもあります。大きく盛り上がる雲、魚の鱗のように並ぶ雲……一見美しく見える雲が天候急変のサインになることも。

今回は、気象予報士で空の写真家の武田康男氏による『知れば知るほどおもしろい 天気のはなし』(宝島社)より「数々の気象災害を呼ぶ積乱雲」についてお届けします。

■数々の気象災害を呼ぶ積乱雲とは?

積乱雲は、激しい雨や雷をともなう、発達した背の高い雲である。はじめは小さな積雲として現れ、地上からの熱や湿気を受けて上昇気流が強まると、急速に背を伸ばし、積乱雲へと成長する。高さは10〜13㎞、幅は十数㎞に達し、その中に含まれる水の量は最大で約600万t。25mプール約1万杯分に相当するという。雲頂が高さの限界に達すると、雲は横に広がり、「かなとこ雲」と呼ばれる独特の形になる。積乱雲は、雲の中で唯一、雷を発生させる力を持つ。内部では氷の粒が激しくぶつかり合い、静電気が生じており、これが雷のもととなる。

積乱雲の寿命は、積雲の時点も含め1時間程度なので、1つの積乱雲がもたらす雨は夕立のように短時間で収まる。しかし、いくつも連なれば話は別だ。実は、台風も多数の積乱雲が渦を巻くように集まってできたもの。また、線状降水帯のように、積乱雲が帯状に並んで次々に雨を降らせれば、大規模な水害につながる。突風やひょう、竜巻などの激しい気象現象も、すべてこの雲が引き金だ。

(1)積雲が成長

  • 上空の大気が冷たく、地表が暖かい“不安定な大気”の状態。積乱雲の卵が育ち始める。/撮影:武田康男

    上空の大気が冷たく、地表が暖かい“不安定な大気”の状態。積乱雲の卵が育ち始める。/撮影:武田康男

(2)積雲から積乱雲へ

  • 上昇気流により、雲が大きく盛り上がり始める。内部には水蒸気がどんどん供給され、エネルギーを蓄えている。/撮影:武田康男

    上昇気流により、雲が大きく盛り上がり始める。内部には水蒸気がどんどん供給され、エネルギーを蓄えている。/撮影:武田康男

(3)発達期

  • 雲頂が一気に広がり、「かなとこ雲」へと発達していく場合も。雷や激しい雨の準備が整いつつある段階。/撮影:武田康男

    雲頂が一気に広がり、「かなとこ雲」へと発達していく場合も。雷や激しい雨の準備が整いつつある段階。/撮影:武田康男

(4)成熟期

  • 雲頂が一気に広がり激しい上昇気流と下降気流が入り交じり、積乱雲の真下では、雨や雷、ひょうなどが発生。積乱雲としてもっとも活発な状態。/撮影:武田康男

    雲頂が一気に広がり激しい上昇気流と下降気流が入り交じり、積乱雲の真下では、雨や雷、ひょうなどが発生。積乱雲としてもっとも活発な状態。/撮影:武田康男

(5)衰退し、積乱雲は崩壊へ

  • 下降気流が優勢になり、雲の活動が徐々に弱まる。雲の輪郭がやや崩れ、このあとは、空に溶けるように消えていく。天気が落ち着きを取り戻す兆し。/撮影:武田康男

    下降気流が優勢になり、雲の活動が徐々に弱まる。雲の輪郭がやや崩れ、このあとは、空に溶けるように消えていく。天気が落ち着きを取り戻す兆し。/撮影:武田康男

※激しい雨と突風をもたらした積乱雲の盛衰を映した動画より作成(撮影地・日付:福島県・5月25日)

  • 『知れば知るほどおもしろい 天気のはなし』(宝島社)より

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監修・写真:武田康男
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  • 本の中では大きな写真とともに、わかりやすく解説されています/『知れば知るほどおもしろい 天気のはなし』(宝島社)より

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