「電話応対は苦手……」そう感じている新社会人や就活生は多いのではないでしょうか? 近年、SNSやチャットツールが普及し、電話を使う機会が減っているため、苦手意識を感じるのは当然かもしれません。しかし、ビジネスシーンにおいて電話はまだまだ重要なコミュニケーションツールです。
本連載では、電話への抵抗感をなくし、社会人の基礎スキルを磨く機会となるような電話応対のコツやテクニックを紹介します。これまでの連載では、電話応対の基本やよくあるお悩み、実践で使える話し方のコツなどを紹介してきました。
最終回となる今回は、「どうやって自分の電話応対スキルを伸ばしていくか」に焦点を当てます。上司や先輩からのフィードバックだけに頼るのではなく、自分自身で気づき、改善していく「セルフコーチング力」は、社会人として長く活躍するための大きな武器になります。
通話の振り返りで“伸びしろ”を見つけよう
スマホで写真や動画を撮って、見返した時に自分の動きや写り方がイメージと違うと感じたことはありませんか? それと同じように、自分の通話を録音して聞き返してみると、思わぬ発見があります。
- 話すスピードは相手と比べて早いか・ゆっくりか
- 「あのー」や「えっと」などフィラーはどのくらい使っているか
- 話している時間と聞いている時間はどのくらいのバランスか
- 声に抑揚や感情が感じられるか
録音された通話を聞き返すのは少し恥ずかしいかもしれませんが、第4回で紹介した「話し方」のコツと比較して振り返ってみると、成長のチャンスがたくさん詰まっています。
セルフチェックリストを味方につける
自分の録音を聞いて意識したい話し方のポイントや、話す内容をチェックリストにまとめてみましょう。
- 電話をかける前に相手の情報を調べたか
- はきはきとした声・明るいトーンで話せたか
- 相手の話を遮らず、しっかり傾聴できたか
- トークスクリプトに沿ってヒアリングができたか
- 次回のアクションを明確に伝えたか(例:○日までに再連絡など)
などのチェック項目を作成します。
通話のたびにすべてを完璧にできる必要はありませんが、「今日はどこがうまくいったか」「次回はどこを改善したいか」を可視化するだけで、着実にスキルアップできます。
日々の業務にもスキルアップを組み込む
通話後は、社内に共有するために通話内容のメモをまとめることもあると思います。その際に1~2分で自分用に振り返りのメモを残してみましょう。
「今日のベストトーク」「次に試したいフレーズ」など、自分だけの“通話ノート”を作るのもおすすめです。
また、ロールプレイングや、先輩の録音音声を聞く、同僚とお互いの通話を聞きあって意見を出しあうことも効果的です。当社のインサイドセールスグループでは、「音声共有会」を週に1回実施しています。メンバーが自身の架電におけるベスト音声とアドバイスが欲しい音声を共有し、お互いに意見を出し合うことで、それぞれの話し方の強みをインプットする機会に繋がっています。
生成AIを活用してセルフコーチングを強化
最近では、ChatGPTをはじめとした生成AIを活用したスキルアップも注目されています。
活用例1:架電先企業のリサーチや業界ニュースの要約
架電先の企業の事業内容や競合の情報、業界の動向や課題について生成AIを活用してリサーチすることができます。 架電先の企業について理解が深まると、アイスブレイクのネタとして活用し、共感を呼んだり、相手からの質問に対してより具体的な回答や提案ができるといったメリットがあります。
活用例2:トークスクリプトの改善や壁打ち
録音した通話音声を文字起こしし、そのテキストに対して「よく使う単語」「気になる言い回し」「論理展開が弱いところ」などを抽出してもらうといった活用もできます。
さらに、
- このトーク部分をより良い表現に言い換えるには?
- 〇〇についてヒアリングしたい場合、どのように質問をすると良い?
- この説明文を、初対面の方にわかりやすく説明するには?
など、生成AIと壁打ちをして、トークスクリプトをわかりやすく改善したり、疑問点のヒントを得るといった活用も可能です。
生成AIを活用することで、事前準備の時間を短縮したり、話し方を改善してより自信を持って通話に臨めるようになります。使い方に慣れてくれば、セルフコーチとして生成AIを活用することもできるでしょう。
このように「自分で成長を作る意識」を日々の業務に持つことで、電話対応だけでなく、あなたの仕事力も着実にレベルアップしていくはずです。
本連載では、電話への抵抗感をなくし、社会人としての基礎スキルを磨く機会となるよう、電話応対のコツやテクニックをご紹介してきました。
私自身も新入社員の頃は電話応対に対して苦手意識がありましたが、少しずつ実践を重ねる中で慣れていき、その過程でさまざまなビジネススキルを身につけることができました。 今回ご紹介した内容は、電話対応にとどまらず、商談やプレゼンなど、さまざまなビジネスシーンにも応用できるものです。
日々の業務の中で意識して取り入れていくことで、きっとご自身の成長につながっていくはずです。

