本連載の第186回では「最新のテクノロジー、NFTで何ができるのか」という話をお伝えしました。今回も引き続き最新のテクノロジーに注目し、最新のAIチャットツールについてお話します。

テクノロジーの変化によって人々の働き方は常に変化してきました。特にここ最近はスマートフォンの普及や通信速度の向上、ZOOMなどのコミュニケーションツールの台頭によって場所に縛られずに働く人が増えてきました。これらは主に「働き方の変革」や「生産性の向上」に寄与してきましたが、ここに来てもっと根本的かつダイナミックな変化が訪れようとしています。

以前、本コラムの第182回「リスキリングでAIを活用しよう」では、誰でも簡単な指示で綺麗な絵を描けるMidjourneyやStable Diffusionといったツールをご紹介しました。これらのツールの誕生によって、本業でアート作品を手掛けるクリエイターやデザイナーなどの職種の人にとっては衝撃が走っているかと思います。その一方、その他大勢の方は「自分には関係ない」と思われたのではないでしょうか。

しかし、どうやらそう遠くない未来に営業や経理、総務、人事といった事務系の職種に就いている方にとっても安穏としてはいられない状況が訪れそうです。

私がそう思ったきっかけが「ChatGPT」です。これは、人が入力した自然言語を理解して応答してくれるツールです。これだけを聞くと「なんだ、そういうのはこれまでにもあったよね」と反応される方も多いのではないでしょうか。

確かにこれまでにもAIチャットツールはありましたが、対応できる質問がかなり限定されていたり、日本語の表現がイマイチだったり、ちぐはぐな答えを返したりするものばかりだったというのが私の正直な感想です。しかし、昨年末に登場したChatGPTを使ってみて、そのずば抜けた能力に衝撃を受けました。その衝撃を受けた点を以下4点、解説します。

1. 日本語が自然

ChatGPTは以前のAIチャットツールとは異なり、日本語の文章として全く違和感がない文章を記述します。それもただ違和感がないというレベルではなく、学校の教科書のような綺麗な文章です。しかも誤字脱字がない分、人よりクオリティーが高いものを返してくれるといっても過言ではないでしょう。

2. 構成が秀逸

人が書いた文章でも、一読しただけでは一体何を訴えているのか分かりにくい構成のものをちらほら見かけます。しかし、ChatGPTでは本当に分かりやすい構成で返答してくれます。例として次の画像を挙げます。

こちらは以前、本コラムでもご紹介したExcelの新機能、Power QueryについてChatGPTに質問した際の回答です。最初に「Power Queryとは何か」を簡潔に回答してから代表的な機能の例を4つ箇条書きで挙げて、最後にまとめとして「何に役立てるか」で締めていて、簡潔明瞭で秀逸な構成になっています。

3. 曖昧な質問への回答が的確

ChatGPTのすごさは、ジャンルを問わず幅広い問いかけに対して回答してくれることにもあります。例えば、政治や経済、金融、歴史、技術、美術、音楽などなど、色々試してみましたが、どのようなジャンルでも回答してくれました。試しに「神社の社はどうやって建てる?」という大変マニアックな質問をしてみましたが、見事に回答してくれました。

しかし、幅広いジャンルに回答できることよりすごいのは、曖昧な問いかけにもきちんと答えてくれることです。試しに「人生を豊かにするために何をしたらいい?」という「人生」や「豊か」という曖昧で抽象的な問いを投げかけてみたところ、次のような回答が返ってきました。

質問の意図を読み取って回答したとしか思えない内容ですね。むしろ回答するのが人であっても、こんなに的確な内容を返すのは難しいのではないでしょうかと思えるレベルです。

4. 新しいものを創造できる

単に聞かれたことに答えるだけでなく、ChatGPTは全く新しいものをゼロから生み出すことができます。例えばプログラムのコードを書いたり、詩を詠んだりすることもできます。このような創造性が求められる分野でも対応できるのです。

これまでは、「計算処理や単純な受け答えはAIに任せて、人間は創造性が求められる分野に注力すべき」という話をよく耳にしましたが、そのような棲み分けすらできなくなってきているのです。

なお、試しにChatGPTに「お正月と子どもをテーマにした歌詞」を作らせてみた結果がこちらです。

完璧ではないかもしれませんが、結構いい線行っているのではないでしょうか。

ここまで、ChatGPTから私が衝撃を受けた点を4つ紹介しました。色々試していく中で、路線の案内やエンタメ系の問いかけへの回答などで明らかに間違っているものも散見したものの、そうしたものは今後急ピッチで改善されていくはずです。

我々人間としては、このようなAIが存在し、さらに日進月歩で改良されていくことによって自分たちの生活や仕事がどう変わるのかを真剣に考えなければならない時が来ているのかもしれません。