本連載の第121回では「DXやデジタル化などで業務を変える際の抵抗に対処する方法とは」と題し、業務を変革する際の現場からの抵抗にどのように対処すべきかについてお伝えしました。今回はがらりとテーマを変えて、ビジネスパーソンとして今後の世界を生き抜くための個人のブランド力についてお話します。

長く続いた緊急事態宣言がようやく解除され、経済活動が徐々に活発化しつつありますが、コロナ禍で打撃を受けた企業が廃業や倒産に追い込まれたという話もチラホラ聞きます。このような話を聞くと、経営者が大変なのは当然ですが、そこで働いていた社員の生活は大丈夫なのだろうかというのが心配になります。

日本の高度成長期を支えた年功序列賃金と終身雇用制度が過去のものになってから大分経ちますが、今でも新卒で入った会社で定年まで過ごしたいという安定志向の人は一定数いるようです。しかし世界が変化するスピードが年々加速するのに伴い、そうした希望が叶う見込みは薄くなっているでしょう。要するに新卒で入社した企業が定年までの約40年間、存続できるかどうかはかなり怪しいということです。

また一方では、働き方改革による残業時間の減少やテレワークの普及によって副業が広がりつつあります。これは、残業時間や通勤時間の減少に伴い時間に余裕ができたことで副業をしようという機運が生まれたということでしょう。それに加えて物価が低迷する今の日本においては一つの企業の中で長く勤めても大幅な昇給があまり見込めないという要因もあるかもしれません。いずれにせよ、副業が特別なものではなくなる日も近いでしょう。

自分が勤務している企業の長期的な存続が保障されなくなりつつあることと、副業という選択肢が一般的になりつつあることを踏まえると、会社ではなく自分自身の個人としてのブランドについて本気で考え始めた方がよいのではないかと考えます。

なぜなら、個人としてのブランドが確立していれば、もしも今の会社が経営難に陥って転職を余儀なくされることになったとしても困ることはありませんし、それどころか業界・職種によってはヘッドハンティングの会社から声がかかることもあるかもしれません。そして上手くいけば年収アップに繋がる可能性もあります。また、副業する際にもやはり個人のブランド力が不可欠です。副業であれば所属している会社の名前ではなく、自分個人の名前を前面に出してモノやサービス、或いは労働力を売ることになるからです。また、独立して起業するならなおさら個人のブランド力がないと厳しいのは言うまでもないでしょう。

ここまでで、長期的に今の会社に頼れない以上は転職や副業、或いは起業という道に進む可能性があり、それを考慮すると自分個人としてのブランド力を構築することが大事ではないかというお話をしました。それでは、個人としてのブランド力を高めるには何をすればよいのでしょうか。もちろんケースバイケースで唯一絶対の解があるわけではありませんが、以下では2つの案を示します。

自社の広報担当に売り込む

個人としてのブランド力を高めるには、自分に任されている仕事に真剣に取り組むのは前提としつつ、自社の広報に自身を売り込むのは一つの手でしょう。広報の担当者は、広く世間に伝えて自社のブランド力を高めるためのネタが社内に転がっていないかと探していることがあります。そのため、広報担当者にネタになりそうな情報を持ちかけて、会社のサイトやプレスリリースなどにネタとともに自分を紹介してもらうというのはどうでしょう。

それによって、例えば転職や副業の際には広報が発信している情報を通じて、相手に「〇〇社でこんな仕事をしている人なんだ」と自分のことを知ってもらうことができます。社外の人にとっては、会社自体については知っていても、その会社の社員個人のことは分からないことが多いでしょう。そのため、会社の広報を通じてオフィシャルな情報として自分についての情報を世の中に発信してもらうのは自分のことを知ってもらうのに効果的な方法と言えます。

SNSや動画、ブログなどで情報発信する

会社が広報に力を入れていない場合や、広報担当が興味を示さないようであれば個人的に情報発信することでブランド力を高めるしかありません。幸い、今は個人でもSNSや動画、ブログ、或いは音声メディアなどで簡単に情報発信できる便利な世の中です。そこで自分に合ったメディアを選んで、自分の得意な領域や経験などについて発信し続けるのです。

自分の専門領域のことについての情報は、その業界や職種の人にとっては常識であったとしても、その他の人にとっては斬新と感じられることが多々あります。社外秘の情報や個人名などは伏せるのが前提ですが、それを守った上で社会にとって価値ある情報を発信することで、自分のことを知ってもらい、個人としてのブランド力を高めていけるでしょう。

いずれにせよ、これからは会社としてのブランド以上に自分の個人としてのブランドの重要度 増してくるでしょう。そのために何ができるか、今から考えてみてはいかがでしょうか。