本連載の第105回では「フレームワークに対する3つの誤解とは」と題し、フレームワークに関する、よくある3つの誤解についてお話をしました。今回は問題解決へのフレームワークの使い方についてお伝えします。
ロジカルシンキングを語る文脈で必ずと言っていいほど紹介されるフレームワークですが、フレームワークのそれぞれの枠に要素を記述するだけでは問題解決はおろか、そのためのロジカルシンキングを実行できているとは言えません。
以下ではフレームワークを使おうとしても、どうしても単なる穴埋めで終わってしまうという方や、フレームワークを使って資料をまとめても「で、そこからどうするのか?」と上司に突っ込まれてしまうという方に向けて、問題解決へのフレームワークの活用方法をお伝えします。
【ケース】ある月を境に、それまで売れ行きが堅調に推移していた自社の商品Xの売上が減少傾向に転じて、そこから半年間ずっと減少が続いています。営業努力だけでは何ともならず、しびれを切らした社長は、商品Xの売上を少なくとも半年前の水準まで戻す案を考えるようにあなたに指示しました。取り急ぎ、あなたは今月末までに対応策をまとめて社長に報告することが求められています。
1. フレームワークを活用した問題の原因究明
このようなケースにおいて、問題解決の方法を知らない人は値下げや販路の拡大などを真っ先に考えるかもしれません。しかしそれでは「頭が痛いから頭痛薬を飲もう」というようなものです。原因が一過性のものならばそれでやり過ごせるかもしれませんが、そうではなく重篤な病気に侵されていたのだとしたら事態が好転することはあり得ません。
ここで重要なのはまず「なぜ半年前から売上が減少傾向に転じたか」という原因を究明することです。「売上が減少に転じたのはどの地域、どの店舗においてか」や「販売単価と販売数量の推移」などのデータを分析するのは当然として、自社内の情報だけを頼りに原因を考えるのには限界があります。そんなときこそフレームワークの出番です。
世の中には様々なフレームワークがありますが、このケースで使えそうなものの中でオーソドックスなのは市場環境分析の3Cというフレームワークです。3CとはCustomer(市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字を取ったもので、3Cを使うと市場環境について漏れとダブりを避けながら問題や戦略を考えることができるというものです。
この3Cを使って考えると、市場については「そもそも商品Xの属する市場全体の需要が減少に転じていないか」、競合については「半年前に競争力のある商品を投入していないか」などといった仮説を立てて検証することができます。自社だけに目を向けていては気が付かなかった可能性にも目を向けて原因を探るのを忘れないようにできるのはフレームワークを使うメリットの一つです。
2. フレームワークを活用した打ち手の抽出
フレームワークを使うことで晴れて問題の原因が判明したら、今度は打ち手を考えなければなりません。3Cを用いて市場、競合、自社の3つの観点で原因の仮説を出して検証した結果、以下の2つの事実が分かったとします。
市場全体の需要が横ばいの中、自社の商品Xの市場シェアだけが落ちており、競合の商品Yがその分のシェアを奪っている。 半年前のタイミングで競合が商品Yのブランドを刷新するとともにSNSでの口コミ効果を狙ったマーケティングを展開していた。
それでは、この競合他社の動きに対して自社はどう対応すればよいでしょうか。打ち手は無数に考えられますが、その際にもフレームワークを活用することで最低限押さえておかなくてはならないことが検討から漏れるのを防ぐことができます。
例えばマーケティングの4Pというフレームワークを使うのもよいでしょう。4PとはProduct(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の頭文字を取ったもので、マーケティングの戦略・立案に使えるものです。
競合の商品Yのブランドと渡り合えるように商品Xの価値を再定義して消費者に訴求したり、定期的なセールを行ってお得感を演出したり、これまでの主戦場だったスーパーでの販路に加えて店舗への卸売りの販路を開拓したり、テレビ広告からインターネットでのターゲティング広告にシフトしたりといった具合に、4つの観点で漏れなく打ち手を考えることができます。
もちろん実際にこれらの打ち手を全て実行に移すというわけではなく、どの打ち手が効果的かを選択したり、或いは組み合わせたりして実行に移すのです。
以上見てきたように、フレームワークを使うことで問題の原因究明や打ち手の抽出において重要な観点の漏れやダブりを排除することができます。ぜひ職場の問題解決にも使ってみてください。