去る12月15日から17日までの3日間、東京・平和島の東京流通センター第二展示場Fホールで「文具女子博2017」が開催されました。今回はこのイベントをレポートします。

  • 「文具女子博2017」会場入り口

  • ペンケースや消しゴムなど巨大な文具と記念撮影できるコーナー。各社の巨大な文具が並ぶ

文具女子博が誕生した経緯

このイベント最大の特徴は、エンドユーザーをメインターゲットとしていること。また主催者が、書籍流通大手の日本出版販売(日販)と文房具流通大手のMDSであることでしょう。

同じ文具のイベントと言っても、7月に開催されたISOTとは、イベントとしての性格もターゲットも大きく異なります。

イベントを企画したMDSの櫻井暁彦氏によれば、この「文具女子博」が最初に企画にのぼったのは6月のこと。そのきっかけは、日販が開催していた各種イベントでした。日販と言えば書籍の取り次ぎで有名ですが、エンドユーザーとの接触機会があり、物販も行う「ムーフェス」(学研の雑誌『ムー』の読者のための集い)や「パンのフェス」(パンが好きな人のための集い)などを開催し、集客実績がありました。そこで文具を扱うMDSが日販に声をかけてイベントの企画を決定、この度の開催となったとのことです。

  • MDS自らが手がけるお薬手帳の新しい提案「Vitamin S」シリーズ。服薬管理を中心に介護や食事の記録などに対応。保険証や診察券の収納もできる実用的な生活記録ノート

ISOTの影響もありました。ISOTは、基本的にはメーカーと流通、販売店のための商談会です。過去にはエンドユーザーが入場できたこともあったそうですが、基本的にはメーカーと卸業者、店舗のための商談会という性格は変わっていません。今年こそエンドユーザーがPRレポーターとして参加したものの、ここ数年はずっとエンドユーザーの入場は(建前上は)許可されていなかったのです。また、平日開催ということもありエンドユーザーには縁遠いイベントにも関わらず、注目度は高いというギャップがありました。 

  • 文具女子博Award。エントリーした各社のプロダクトからナンバーワンを選ぶ企画。エントリーアイテムにはQRコードがついており、スマートフォンから投票。来場者の票がダイレクトに反映されて文具女子博Award大賞(1つ)と文具女子博Award(4つ)が選ばれる。受賞商品へ投票した方にはプレゼントも

また、文具自体に女子向けのアイテムが多いことも、この「文具女子博」という企画を後押しした要素だったようです。たしかに、このところずっと人気のマスキングテープ(マステ)をはじめとして、ふせんやシール、スタンプ、それにかわいらしい各種キャラクター文具は、アイテム数で言えば実は市場を牽引していると言っていいぐらいの割合を占めていると思われます。

  • イケメン付箋(ホールマーク)。2015年に登場したふせんからはじまり、スタンプやマステ、しおりなども展開している人気アイテム

  • ディズニーハニカム多目的カード(アートプリントジャパン)。ウェディング会場など向きのアイテム。ドレスの裾部分が立体的に広がる

  • マステ限定クリスマスコフレ(マークス)。りっぱなコレクションボックスとマステ7つで1,000円+TAXという破格の設定

またキャラクターやカラーバリエーションなどの要素が機能的な文具と掛け合わせられたことで、新たな魅力が付加された文具が生まれます。このような各種要因があって文具女子博は企画され、開催に至ったとのことです。

  • OZマガジンのブース(スターツ出版)。トラベラーズファクトリーとコラボして作った「よりみちノート」。スパイラルリングのノートで、地図と情報のページ+記入ページの構成。同社スタッフによれば、今後本誌特集と連動したバージョンを、雑誌と同時に売る構想もあるとのこと

  • 鎌倉の小さな文具店「コトリ」も出展。鎌倉らしいモチーフのカードやレトロな柄のノートが人気

有料でも入場制限がかかるほどの大盛況

そして蓋を開けてみれば大盛況。出展した各社は、イベント名にあわせ、主に女子向けの人気アイテムを前面に出し、ブース自体も女子に響くようなおしゃれな風合いのロゴをあしらっていました。詳しくは写真をご覧ください。

  • コクヨ。ブースのロゴは文具らしからぬ方向性

  • ドットライナー(コクヨ)。キャラクターがあしらわれた限定デザイン

  • ノートでおなじみのモレスキンのブース。会場限定でかなりお得なノートも

「文具女子博」自体の入場料は500円と有料ですが、このイベントならではのお得な企画がいくつもありました。その一つは、文具メーカー各社の紙を組み合わせて作るオリジナルのノート制作体験でしょう。ページ数こそ少ないものの、各社の紙を取り混ぜてノートにできる経験は恐らく文具女子博ならではかと思われます。このほかにも体験イベントやお得な企画も多数あり、入場料は簡単に元が取れそうでした。

  • 体験イベント「ペーパーバイキングdeオリジナルノート」の列。普段はほぼあり得ない、各社の各種の紙をまとめて一冊のノートを作成できる。マステやシールでデコることもできた

  • 「ペーパーバイキングdeオリジナルノート」用のステッカーやマステ。文字通りバイキング的にチョイスしてデコることができる

  • 呉竹のオリジナル蛍光マーカー作成体験コーナー。会場にはこれ以外にも、体験イベントが多数あった

物販も人気でした。筆者が訪れた土曜日は2日目でしたが、前日用意されていた16台のレジはたりず、会計のために長蛇の列ができたそうです。そのため、急きょ11台のレジを増設して対応したとのこと。

来場者の数もかなりの人数になったはずです。筆者が取材を終えて帰ろうとしていた土曜日の13時の時点で、既に入場制限がありました。400人ぐらいの方が会場外で待機し、会場内の状況に応じて50~100人単位で会場に案内されていました。 

  • 2日目の13時頃の会場外の様子。入場制限がなされ、不定期的に50~100人の人が会場に誘導されていた

文具女子博の懸念点は?

この文具女子博、恐らく今後も開催されると思われます。一つ懸念をあげるとすれば、女子博と銘打たれているが故の男性来場者の少なさでしょうか。実際には男性の入場も許可されていましたが、やはり数は少なくせいぜい2割ぐらいだったかと思われます。

  • Kino.Qの「フォントかるた」。面の文言は同じだが、フォントが異なる。主に出版・印刷業界の人には、強く深く刺さりそうなアイテム

  • 同じく、Kino.Qの「紙神経衰弱」。面は当然のごとく真っ白で、同じ種類のカード(紙)を手触りなどを手がかりに一対にするゲーム。大人気

また、当然と言えば当然ですが、各社ともその出展内容は女子向けアイテムが中心でした。ブースに掲げられたメーカーのロゴもいつもとは違うおしゃれ仕様だったのは、イベント名のレベルでターゲットを絞っていたからかもしれません。

  • 会場の片隅に設置された肌チェック無料体験のブース。文具ではないが、来場者との親和性は高い

  • レイメイ藤井のブースの限定アイテム。IDカードケースやポーチなどオフィス用のおしゃれな各種文具がセットになって会場限定のかなりお得な価格で提供されていた

この点が今後どうなるか。すなわち女子博の名前のままで男性向け文具(例えば機能性の高いノートなど)も、扱うことになるのか。または、同じ開催内容のまま、男性の文具好きにもその知名度が増し実態が知られ、ハードルも下がって継続開催されるのか。

ともあれ、エンドユーザーをメインターゲットとし、その場で買うこともでき、会場限定のアイテムやお得な価格の商品もめずらしくないこの文具女子博。名前だけで食わず嫌いはもったいないイベントであることは間違いないでしょう。

舘神龍彦

舘神龍彦

手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。

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