11月15日から19日の5日間開催された「第2回 生活のたのしみ展」は、Webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」のオンラインストアで発売されているものがリアルで購入できるイベント。その中でも注目のアイテムの一つが、「ほぼ日5年手帳」でした。
既報でお伝えしたように、新しく登場することは予告されていましたが、お披露目はこのイベントが初めて。
今回はこれがほぼ日手帳のラインナップの中でどういう意味を持っているか、また使うとどんな効能があるのかを紹介していきましょう。
「ほぼ日手帳シリーズ」における「ほぼ日5年手帳」の位置づけ
「ほぼ日手帳」は、登場以来ずっとラインナップを広げてきました。まずA6(文庫本)サイズで1日1ページスタイルの元祖となった「オリジナル」。及びその英語版。更に長財布とほぼ同じサイズでビジネスパーソン向けの「weeks」。そして月間、週間、1日ページのすべてが入った「カズン」。オリジナルとカズンには、1年で2冊の分冊版(avec)が存在します。
ここに加わった「ほぼ日5年手帳」は、手帳というよりは日記帳に近いアイテムです。
サイズは「オリジナル」と同様のA6サイズ、すなわち文庫サイズです。巻頭には5年分のカレンダーがありますが、「オリジナル」のような月間ブロック予定欄はありません。
予定記入欄は、いっけん週間レフト式のようなレイアウトですが、見開きは5年分です。具体的には、見開きの左側が日付入りの予定記入欄となっており、上から2018、2019、2020、2021、2022の5年分がたてに並んでいます。年号の横には曜日が入っていますが、六曜や元号などはありません。見開きの右ページは方眼のメモスペースで、最下部にはほぼ日手帳ではおなじみの"お言葉"があります。
手帳と銘打たれてはいますが、やはり日記帳として使うのが良さそうです。
そしてこれもまたほぼ日手帳なのだといえます。そもそもほぼ日手帳は、それまで月間+週間の予定欄が普通だった日本の手帳の世界に、一日一ページのフォーマットを持ち込みました。同時に、それを予定管理ではなく、日記やライフログ的に使うことを、Webサイトや毎年刊行される公式ガイドブックの中で提案しています。
つまりほぼ日5年手帳は、登場当初から日記として使われることがあらかじめ推奨されていた「ほぼ日手帳オリジナル」の5年版ととらえることができます。
贈り物のページ。いつ誰になにを送ったかをメモできる。前年になにを送ったか確認できるのは便利 |
アドレス帳は6人分。名前、住所、電話番号、血液型、誕生日を記入できる。アドレス帳というよりは、プロフィールデータ |
リストページ。10項目まで書けるリストが見開きで8セット用意されている。項目の指定はなく、自由に書ける |
「5年手帳」が「オリジナル」を踏襲した理由
開発を担当されたほぼ日社内の方の言によれば、5年手帳は、そのデザインを位置から見直すことも考えられていたそうです。それは例えば方眼の罫線を廃止することであり、予定記入欄のデザインを見直すことであったと言います。また紙も違う種類のものも想定されていたそうです。
ところが結果としてできあがったものは、ほぼ日手帳オリジナルのサイズとデザインを踏襲した5年連用手帳でした。手帳用紙のトモエリバーも踏襲されています。ほぼ日スタッフの星野槙子氏はそのことを「手帳のたしかめ算だった」と振り返ります。特に紙を変更すると「違う手帳になってしまう」(星野氏)のだそうです。
つまり、手帳というよりは日記としての性格が強い連用手帳というフォーマットは、ほぼ日手帳という、やはり日記としての性格が強いブランドにマッチしていたと言うことだと考えられます。
「2ページで読む人類史年表」700万年~600万年前の「直立二足歩行の始まり」から2005年の「ユーチューブ開始」までが簡単に紹介されている。人類史から見れば、一人の個人の5年が一瞬にすぎないことを感じさせられ軽くめまいを感じるページ |
化粧箱のふたの裏側にも"お言葉"あり |
また、現在のほぼ日手帳には67万人のユーザーがいるそうですが、これだけのユーザー数を抱えるブランドとしては、やはり製品の方向性を継続するのが正しいのでしょう。
連用日記の効能は、毎日毎年書くことで実感されるでしょう。それは毎日地道に書いていくうちに、「1年前の今日」「2年前の今日」を自然に振り返ることができる点です。更に言えば、5年連用手帳を購入することは、5年間は、毎日日記を書くことを自らに義務づけることでもあります。日記という、習慣としては始めるのにややハードルが高い行為に対して、厚みや重さ、そして価格の点でも決意を確認させられる訳です。
限定革製カバーは「レッド」「ブラック」「ヌメ」の3色展開。ほぼ日5年手帳は厚みやサイズの違いから、ほぼ日手帳オリジナル用のカバーは利用できない。その代わりに登場したアイテム |
限定革カバーのペンホルダー部分。ペン本体を刺すのではなく、クリップ部分を通す使い方が想定されている |
「ジャパネットたかた」で販売
ほぼ日5年手帳はまた、販売チャンネルも今までのほぼ日手帳とは変わっています。まずほぼ日のWebサイト、直営店でありショールームでもある青山の「TOBICHI」、そしてテレビショッピングの「ジャパネットたかた」の番組「高田 明のいいモノさんぽ」(11/18放送)です。
これも面白い試みです。前二者はともかく、恐らくジャパネットたかたの顧客層は、それまでのほぼ日手帳ユーザーとはかなり異なるマーケットであることは想像に難くありません。つまりこれは、ほぼ日手帳という十数年続いているブランドが、5年連用手帳という新しいアイテムを使って、新しいマーケットに切り込むことだととらえられるからです。
生活の楽しみ展では、文具以外のものも多数展示・販売されていた。これは、「ほぼ日のアースボール」。ビーチボールのような小型の地球儀にスマートフォンをかざすことで、その地域の情報を参照できる。これは実際の商品より大きな地球儀に同じ機能を実装し、iPadでデモをしているところ |
会場には、連用手帳をはじめとするほぼ日手帳以外にも、AR的な仕組みをもった「ほぼ日のアースボール」や、JINSとコラボした「かわいい老眼鏡」などがありました。もし「ほぼ日5年手帳」が成功したら、これらのアイテムもジャパネットたかたで扱われるかもしれない。ほぼ日5年手帳の出現は、そんな可能性も示唆しているように思います。
執筆者プロフィール : 舘神龍彦
手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。
twitter :@tategamit
facebook :「手帳オフ」
Blog :「舘神Blog」