いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、中野の「寿司・割烹 三河屋」をご紹介。

  • 70余年の伝統に納得「寿司・割烹 三河屋」(中野)

驚きの「漬け丼定食」

中野に、前を通るたび気になっていたお店があるんですよ。南口を出たら、駅を背にして中野通りを5分ほど進むと左側に現れる「寿司・割烹 三河屋」がそれ。70余年の歴史があるらしい老舗なので、なんとなくハードルの高さを感じてはいたんですけどね。

  • ゆったりとした店構え

店頭右側には「うなぎ 寿司」と書かれており、左側のショーウィンドウ上部には「鮨 割烹 三河屋」の表記。さらに赤いのれんには、「炭焼 近海魚 三河屋」という文字が白く抜かれています。

「魚介類ならなんでもこい!」ってな感じですが、お店のサイトによれば、「毎朝社長自ら豊洲市場へ足を運び、長年の経験で培ってきた目利きで確かなものだけを」仕入れているようです。

なるほど、そうやって仕入れた自慢のネタを、腕のいい職人さんがさばいているわけですね。

  • ランチメニューはリーズナブル

そのぶん基本的には値段がお高めなのですけれど、だからこそ狙い目なのがランチメニュー。あるときたまたま目についたのですが、バリエーション豊かな定食類はほぼ1000円以下なのです。そこで、「これくらいならイケるじゃん」ということでお邪魔してみることにしたのでした。

でも、混まないうちにと思って11時の開店に合わせて伺った結果、ちょっと驚かされたんですよね。

開店前から行列ができているような感じではないのですが、それでもお客さんが次々とのれんをくぐっていくのです。おそらくは常連さんなのでしょうけれど、いかにも地元に根づいているといった印象。

  • 広々とした店内

慌てて入ってみると、店内は予想以上に広くてまたビックリ。右奥にはカウンター席があり、左側はお座敷席がいくつか。その真ん中の中央部分にもテーブル席が並んでいるので、かなりの人数が入れそうです。

入ってすぐ手前右、左側のキャッシャー真向かいのテーブル席に落ち着き、いい雰囲気だなあと思いながら店内を眺めていたら、ほどなく店員さんがおしぼりを持ってきてくださいました。

  • 思わず迷ってしまう

ランチメニューは全部で8種類。「ちらし定食」や「かれい煮定食」なんてーのも魅力的ではありましたが、「漬け丼定食」にしてみました。

  • まずは小鉢とお茶が登場

待っている間、壁の「本日のお勧め刺身」と書かれたプレートをチェックしてみると、どれも2000円前後。やはり、夜はそれなりのお値段になるようです。が、だからこそ、それらのネタをリーズナブルにいただけるランチメニューは貴重ですね。

  • 漬け丼定食

しかもねえ、やがて運ばれてきた「漬け丼定食」を見たら、またもや驚かされたのですよ。名称が名称ですから、鮪のヅケだけが入っているのだろうと思っていたのですが、他にもあじ、ぶり、生しらすなど、いろいろなネタが彩りよく並んでいるのです。

  • 予想以上に豪華でビックリ

「なにからいこうかな? その次は、どれを攻めようかな?」ってな具合にワクワクしながらいただけるわけで、とっても楽しい。もちろん味も文句なしで、職人さんのたしかな腕前を実感できます。

  • 味噌汁には半熟玉子が

さらに、つけあわせの味噌汁にはわかめやねぎだけではなく、半熟の玉子まで。箸休めには贅沢すぎるほどのクオリティで、いやはや感心するしかありません。

それにしても、本当に人気があるお店のようです。なにしろ僕が食べている間にも、次から次へとお客さんが入ってくるのですから。そして開店後20分くらい経ったころには、すべての席が埋まってしまうことに。 とはいっても席間にはゆとりがありますし、たくさんの人がいても狭苦しさはまったく感じません。店員さんもみんな上品で愛想もく、信頼されているお店なんだなと強く感じさせてくれるのでした。

  • さりげない清涼感

思い切ってお邪魔してみて、本当によかった。落ち着けるし、ネタの鮮度も仕事も文句なし。伝統って、こういう形で受け継がれていくものなんだなと、強く納得させられたのでした。

中野で和食が食べたくなったら、次回も間違いなくここだな。うなぎなど、他のメニューにも挑戦してみたいところです。

●寿司・割烹 三河屋
住所:東京都中野区中野2-29-6
営業時間:11:00〜22:00(L.O.21:50、ドリンクL.O.22:00)
定休日:水曜(その他不定休日あり)