いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
今回は、 国立のパスタ店「いたりあ小僧」。
“昭和のおしゃれパスタ”
国立駅の南口に出たら、大学通りを直進。スターバックスを通り過ぎて最初の信号を左折すると、ほどなく右側に見えてくるのが、今回ご紹介する「いたりあ小僧」です。
創業は昭和53年。つまり2022年には44年目を迎えることになる、国立を代表するパスタ屋さんです。
実をいうと、ひさしぶりに食べたいと思って、半年くらい前にも足を運んでいたんですよ。ところがコロナ禍に伴う休業にあたってしまったため、今回は改めてチャレンジしてみようと思ったわけです。
足を踏み入れると、すぐ目の前に10人は座れそうな大テーブル。その向こう側の店内も奥行きが広く、ズラリとテーブルが並んでいます。さらに左側の厨房前にはカウンター席もあるので、かなりの人数に対応できそう。
それにしても、さすがは老舗の人気店です。今回は11時30分の開店直後を狙ったのですが、次から次へとお客さんが入ってきて、どんどん席が埋まっていくのです。でもスペースがゆったりとられているので、人が増えていっても圧迫感はまったくありませんね。
ところでこのお店の特徴といえば、80種類以上あるというパスタのバリエーションです。トッピングとの組み合わせを楽しめるわけですが、なにしろランチセットだけでも16種類。
そのため、「基本のミートソースでいくとするか」「いや、たらこも捨て難いぞ」ってな感じで迷ってしまったのですが、最終的には「ころころベーコンなす(トマトソース)」でいくことにしました。好きな具材が集合しているので、期待感も高まろうというものです。
ちなみに壁には、「特報 学生限定 大盛無料」の貼り紙も。「近隣の一橋大学の学生にはうれしいところだろうなあ」などと考えていたら、まずはつけ合わせのサラダが登場しました。
驚くべきは、そのクオリティの高さです。レタス、玉ねぎ、わかめ、てっぺんのプチトマトと彩りも鮮やかですが、全体の引き立て役としての自家製ドレッシングが絶妙なのです。つけ合わせにも手を抜かない姿勢、さすがというしかありませんね。
続いて運ばれてきた「ころころベーコンなす」は、見た目は少し地味な印象かな。創業当初から継承された、“昭和のおしゃれパスタ”といった趣です。
とはいえ、いただいてみると、これがなかなかのボリューム。まず際立っているのが、素揚げされたなすの迫力です。まるまる一個を使用しているのですが、輪切りされたそれらは1センチくらいの厚み。なので、食べても食べても減らないような感じなのです。
しかし味は間違いなく、同じように分厚くカットされたベーコンの塩味との相性も抜群。トマトソースのほどよい酸味とともに、アルデンテのパスタを見事に引き立ててくれます。
見た目以上に食べごたえがあったし、やはりこのお店のパスタは魅力的ですねえ。40数年にわたって支持されている理由を、いまさらながら実感することができました。
でも実をいうと、もうずいぶんご無沙汰だったこの店にまたお邪魔しようと思い立ったことには、ひとつ理由があるのです。
なんとコロナ禍の影響で売上が激減し、昨年には存続の危機に陥っていたのだとか。そこで経営を立てなおすべく、クラウドファンディングで再建資金を募っていたというのです。
幸いにして支援総額は目標を上回ったようで、危機は乗り越えられた模様。長らく地域の人々から愛されてきたことが、コロナ騒動によって証明されたといえるかもしれません。
ともあれ、そんなことになっていたとはいざ知らず、僕が知ったのは募集終了から半年以上が経過したことだったのです。そこで、だったらせめてまたお邪魔してみようと思ったわけ。
国立は少し遠いけど、これからも機会を見つけて行ってみることにしよう。
●いたりあ小僧
住所:東京都国立市東1-15-18 白野ビル1F
営業時間:11:30~14:50(L.O. 14:20)、17:00~20:50(L.O. 20:20)
定休日:水曜日