ラストラブ
かつて、巧みなサックスプレイヤーとしてニューヨークのジャズシーンで輝いていた阿川明(田村正和)。しかし、あるステージの真最中に妻・友美(高島礼子)が目の前で倒れてしまう。無情なガンの宣告、そして、死――。夢を追いかけるあまり妻を死なせてしまった、という自責の念から、明は"自分のための人生"に自ら終止符を打つ。つらい思い出がつまったニューヨークの街とアーティストとしての人生を捨て、一人娘・佐和(森迫永依)と共に帰国、横浜の片隅でひっそりと暮らしていた。
一方、清掃局に勤める結(伊東美咲)は、婚約者とニューヨークのチャペルで結婚式を挙げる予定を控え、幸せいっぱい。そんな2人の出会いはゴミ捨て場だった。「ゴミの出し方、間違ってますよ! 」マナーがまったくなっていない明を注意する結。不躾な捨て台詞を叩きつける明。お互い最悪の印象を抱く。
しかし、その日のうちにふたりはニューヨークへ向かう機内で、そして到着後にも偶然再会した2人は、明の「せっかくだから、話さないか」という誘いで徐々に距離を狭める。結婚を控えていても本当に愛されているのか不安になる結の話を明はただ黙って聞く。明の静かなアドバイスに、結はまるで父親に触れたような安心感を抱き、同時に明へ信頼を寄せるようになる。その夜、突然婚約者に別れを告げられてしまった結は明に誘われ……。
6月16日より全国ロードショー
放談メンバー | ||
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はなこ |
マサオ |
ステラ |
田村正和が14年ぶりに映画主演。よき父親でも、コミカルな刑事でもない、シリアスでダンディな"男"を演じる意欲作だよ。
女は死ぬまで女というけど、マサカズは死ぬまでマサカズ! そんな意気込みが感じられたわっ。
あの台詞の前にたどたどしく「アワアワ」言うクセは健在。でも、それが今となっては年寄り度を増してるんですけど……
あら、そうぉ~? あたくしは気にならなくてヨ。田村正和はやっぱりダンディ(ハート)。確かに年はとってるわよ! シワも増えたし、頬もちょっと緩くなってる。でもね、そんなパーツのひとつひとつにも渋みを感じるの。かっこいいワ。
この映画を見るまで、理想的な年のとり方は"元気ハツラツ"がキーワードだと思ってた。でも、この映画を観たらあんなふうにいつまでも色気を忘れない"男"でいたいな、と思ったね。落ちついた渋みのあるところがいい。ガツガツしていない上に、喜びも痛みもたくさん知っているからひとつひとつの言葉に説得力が出るんだね。見習いたい。
ほんっと、今回はお父さんではなく、男の顔で勝負していたわぁ。やるわね、マサカズ!
下手な俳優が言うと陳腐に聞こえてしまうベタな台詞も、田村正和が搾り出すと深みが出るよ。
そう? いきなりクサい台詞がいっぱい出てくるのって、わたしダメ。格言集みたい。
まぁ、話の展開はベタで、ちょっと唐突なところもあったのは否定しないわ。でも、そんなことを忘れさせるほどマサカズたちの演技力にパワーを感じなかった? あたしは完全にノックアウト。押し切られて説得されちゃった。
あと、脇役がいいね。実写版『ちびまる子ちゃん」でまる子を演じた森迫永依はまさに天才子役。無邪気に愛犬と遊ぶ愛らしさを見せたかと思うと、父親を思いやりつつ哀愁を醸し出す表情も見せる。演技派だ!
伊東美咲の元婚約者でざっくり振っちゃう細川茂樹も素敵! ちょっとしか出番がないのがもったいないわぁ。
細川茂樹って…、あぁ、仮面ライダー響鬼。
舞台がニューヨークっていうのもニクイわよねえ。マンハッタンのブルックリン・ブリッジ、リンカーンセンター、タイムワーナービル、チェルシー地区…そして紅葉時期のセントラルパーク! キレイだったぁ。アタシも大好きな人と行きた~い!
一時的にツアーコンダクターになった明が二階建ての赤い観光バスで案内するシーンでは、一緒に観光しているような気分になったよ。いいカメラワークだったよね。
あと、横浜の中華街や山下埠頭、みなとみらいも登場したわね。風景の切り取り方がウマイと思ったわ。
そうだ。はなこの地元、いっぱい出てたね。…あれ? はなこ、どうした? 今日はあまり喋らないけど、腹でも痛いの?
……。
なによ。あなたなりの感想おっしゃい?
もーーーーーー!
!?
スクリーンにドアップになった顔、セリフの前のモタモタした喋り、その全てがもう……。あぁ、これ以上は言わせないで。
はなこ、昔の田村正和が好きだったのか?
いやっ、違うけど、男としてストライクだったのにぃ(涙目)。
今はボール?
デ、デッドボールだぁ(号泣)。
そんな風に断じるのは浅はかだわ。まぁ、ファンタジーにアドベンチャー、そして少年好きのはなこには課題の多い映画かもね。
(C)2007 「ラストラブ」フィルムパートナーズ
(イラスト:アサダニッキ)