地域支援事業の実施要項によると、家族支援事業は任意事業となっています。任意の制度とは言え、介護保険制度の中の仕組みとして組み込まれていますので、制度を設けている市区町村もあります。申請はいつでもできますが、支給される金額の割には、手続きは煩雑で時間もかかりそうです。

下記の世田谷区の事例を見ると、実態調査もされるようですので、単独の制度ではなく、得られる実態のデータの活用や他の支援と組み合わせた方が実のある支援につながりそうです。

申請の時期と必要書類

申請の手順なども市区町村で違う可能性があるため、詳細は自治体にお問い合わせください。以下は東京都世田谷区の例になります。

(1)家族介護慰労金支給申請書を各支所の保健福祉課または介護保険課に提出する
(2)申請後に福祉課の職員が実態調査を実施する
(3)家族介護慰労金支給決定通知書が送られてくる
(4必要書類は「口座振替依頼書」「銀行通帳等口座番号がわかるもの」「介護を受けている方の医療保険被保険者証」「介護を受けている方の介護保険被保険者証」「印鑑」など

在宅介護者同士の交流の場の必要性

家族介護慰労金は年間10万円程度で、それ自体は介護の状況を大きく変えるものではありません。しかし在宅介護をしている家族同士の交流会などで1~2泊程度の慰労会兼情報交換会などを開催し、その費用に充てるのであれば、十分な意味があると思います。

その間、介護が必要な家族をショートスティなどで預かってもらう仕組みがセットされていれば、安心して参加できると思います。大いに慰労効果も期待できると思えますし、介護している者同士が意見を交わす場も貴重だと思います。

こうした支援は、必ずしも住民税の非課税世帯ばかりが必要としているとは限りません。慰労金の給付の有無は別として、地域支援の重要性が増している中、各自治体にはその特性を生かして、血の通った効果のある支援を期待したいものです。

また、自治体にニーズをアピールし、自治体の活動を制御するのは住民の力です。「税金を無駄遣いさせない」「必要な、かつ効果的な支援体制を整える」といった市民の役割が問われていくと思います。

以前と違ってインターネット環境が整い、誰もが気軽に意見を発信できる時代です。弊害もありますが、正しく行政を誘導する力と権利を持っていることを再認識したいものです。

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。