冬も本格化。寒い日が続きますが、だからこそ、観劇で体も心もぽかぽかになりましょう! 2月も見逃せない演目が盛りだくさん。そんな中から、演劇初心者も演劇ファンにもおすすめの3本をセレクトしました。
『ビロクシー・ブルース』 - ニール・サイモンの戯曲に「旬」の若手俳優が挑む!
ニール・サイモン──。ブロードウェイ、いや世界を代表する二十世紀随一の喜劇作家だ。トニー賞を受賞した『おかしな二人』など映画化された作品も多く、稀代のヒットメーカー、三谷幸喜も彼から多大な影響を受けたと公言している。コメディでありながら、人生のエッセンスをふんだんに含み、随所に印象に残るセリフがちりばめられているのが、ニール・サイモンの戯曲の魅力だ。
今回、上演される『ビロクシー・ブルース』は、巨匠二―ル・サイモンが1980年代に取り組んだ自伝的作品「B・B三部作」の第2部に当たる、第二次世界大戦時に徴兵された軍隊訓練所での若者たちを描いた青春群像劇。若者たちが鬼軍曹と衝突したり、仲間と語らいながら成長していくストーリーは発表当時から高い人気を誇り、1985年のトニー賞ベストプレイ賞を獲得。日本では1987年以来(そう、トニー賞受賞の2年後にはすでに日本で上演していたのです!)、22年ぶりの再演となる。
喜劇王とも呼ばれるニール・サイモンの目を通して描かれる極限状態にある若者や米国社会に根強い人種差別といった問題、それらを、佐藤隆太、忍成修吾、瀬川亮といった今、旬の俳優たちがどのように演じるのか、期待が高まる。
ニール・サイモンの青春時代をのぞき見!?
『ビロクシー・ブルース』 | |
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日程 | 2009年2月2日(月)~2月22日(日) |
会場 | パルコ劇場(東京・渋谷) ※地方公演あり |
作 | ニール・サイモン |
翻訳 | 目黒条 |
日本語台本・演出 | 鐘下辰男 |
キャスト | 佐藤隆太、忍成修吾、瀬川亮、中村昌也(D-BOYS)、尾上寛之、南周平、内田亜希子、西牟田恵・羽場裕一 |
料金 | 7,500円 |
『その夜明け、嘘。』 - 宮崎あおいが、3年半ぶりに原点となる「舞台」に
2008年、NHK大河ドラマの主役、篤姫を好演した宮崎あおいが3年半ぶりに舞台に立つ。宮崎にとって、舞台は演じることの原点ともいえる場所。2003年の初舞台『星の王子さま』では、第41回ゴールデン・アロー演劇新人賞を受賞している。その後も、テレビドラマ、映画と、立て続けに話題作に出演。無限とも思える演技の幅の広さを見せているが、舞台は、本作が、『星の王子さま』以来、3度目となる。
『その夜明け、嘘。』が上演される青山円形劇場は、その名が示すとおり、360度を観客に囲まれる円形劇場で、客席数は350席ほど。出演者は、宮崎を入れてたった3人だけという濃密さで、宮崎ファンも、演劇ファンも見逃せない舞台となる。
演出、脚本は、劇団「ピチチ5」を主宰する福原充則が担当。2006年度若手演出家コンクールで観客賞を受賞するなど、次世代を担う作家のひとりだ。出演は、宮崎のほか、吉本菜穂子、六角精児と個性的な俳優が顔をそろえ、深夜の環状7号線で繰り広げられる「群像劇」を展開する。3人の役者が十数人を演じるという手法も見どころのひとつで、宮崎も「自転車で疾走する漫画家」をはじめ、複数の役に挑む。前売りチケットはすでに完売だが、日によっては当日券も発売される予定だ。
個性と実力を備えたキャストが魅力!
『その夜明け、嘘。』 | |
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日程 | 2009年2月7日(土)~2月23日(月) |
会場 | 青山円形劇場(東京・青山) ※地方公演あり | 作・演出 | 福原充則 |
キャスト | 宮崎あおい、吉本菜穂子、六角精児 |
料金 | 7,500円 |
※宮崎あおいの「崎」は旧字です
『ネズミの涙』 - 話題の劇作家が書き下ろした、日本語のオペラ
1971年に設立された「オペラシアターこんにゃく座」は、ドイツ語、イタリア語など原語で歌い上げるオペラを中心に上演している日本において、日本語による創作オペラを手がける稀有なカンパニー。オペラというと、大規模な編成のオーケストラで行われるが、こんにゃく座のオペラは、ピアノのみ、または小編成のアンサンブルが中心で、また、『金色夜叉』、『吾輩は猫である』など、日本の小説のオペラ化にも積極的に取り組んでいる。
『ネズミの涙』は、オペラシアターこんにゃく座が発信する新作初演。ネズミを主人公に、疾風怒濤の舞台を繰り広げる。台本、演出は、映画『愛を乞うひと』で日本アカデミー最優秀脚本賞を受賞している鄭義信。昨年上演された『焼肉ドラゴン』では、在日コリアンの家族をいきいきと描き、第12回鶴屋南北戯曲賞に輝くなど、今、もっとも注目を集めている劇作家の一人だ。鄭の濃厚な世界観と、座付き作曲家、萩京子のサムルノリ(朝鮮半島の4種の伝統打楽器を使った演奏スタイル)を取り入れた音楽がどんなハーモニーを奏でるのか。
日本語上演で、しかもチケットもリーズナブル(通常、オペラ公演は高額なもの!)。この冬こそ、オペラデビューを考えている人にぜひおすすめしたい演目だ。
「初めてのオペラ」にぜひ!
『ネズミの涙』 | |
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日程 | 2009年2月12日(木)~2月15日(日) |
会場 | 世田谷パブリックシアター(東京・三軒茶屋) |
作・演出 | 鄭義信 |
作曲 | 萩京子 |
キャスト | 相原智枝、岡原真弓、井村タカオ、富山直人、高野うるお、田中さとみ、宮瀬晃、中島正貴、服部真理子・川鍋節雄、梅村博美、佐藤敏之、佐藤久司、太田まり、島田大翼、西田玲子、北野雄一郎、榊原紀保子 |
料金 | A席 6,000円(当日6,500円)、A席ペアシート 11,000円(当日12,000円)、こんにゃくシート(3F) 4,000円(当日4,500円)、学生割引(3F) 2,000円(当日2,500円) |
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している
イラスト:gnk