有楽町ガード下の安くてうまい店。この言葉の響きがもつシズルはすごい。有楽町から新橋にかけての種々雑多な店々は、見ているだけでも十分に楽しめる。今回訪れた「新角」は、ビックカメラの斜向かいに暖簾を下ろしている。今回は立ち食いそばではなく、立ち食いラーメンの店だ。

「コロッケラーメン」(税込530円)

無骨なお店が出す優しい一杯

何とも渋い外観。若い女性がふらっと入る様相では、とてもない。入り口脇に券売機。軒先からも分かる通り、こちらの目玉は「ラーメン」だ。食券のボタンも一番上はラーメン。その影で遠慮がちに「そば・うどんもできますよ」と小声でささやいているような具合。注文は「コロッケラーメン」(税込530円)に決めた。

中は外から見る以上に無骨。路上とつながったようなコンクリむき出しの床は、奥までL字につながっていて、壁沿いにカウンターが並ぶ。もちろん、立ち食いスペースのみだ。突き当たりが、厨房。こちらで食券を出して、待つ。ちょうどお昼どきに訪れたためか、店内は大混雑。キャパシティーは10人ちょっとくらいか、極端に狭いわけではないが、オジサンを中心に大人気。このままでは丼を抱えながら通路で食べるはめになりそうだったが、なんとか一席確保できた。

コロッケラーメン。得も言われぬ違和感があるかもしれない。「コロッケそば」だって、そば通の間では賛否が分かれるメニューだ。それをあざ笑うかのような、「コロッケラーメン」。もちろん、具が豊富な揚げたてコロッケではない。スーパーの惣菜コーナーにあるような、どこにでもあるおやつコロッケ。それが浮かぶのは、土曜日の昼にお母さんが作ってくれるような、そんな優しい味がする昭和の醤油ラーメンだ。

「新角」は有楽町駅そばにある

実のところメニューは豊富で、各種そば・うどんから、カレーライスや冷やし中華、ランチタイムには、ライスとコロッケが付く定食もある。いつか他のメニューも試してみたいのだが、きっとまた、ラーメンを注文してしまいそうだ。

※記事中の情報は2016年7月取材時のもの

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。