長過ぎる連休も明け、梅雨入り前の貴重な晴天の日。無類の麺好きと運動不足、さらに加齢による代謝減退も相まって、胴回りが見過ごせないサイズになってきたので、ウォーキングを兼ねて立ち食いそば屋を目指した。渋谷から青物横丁まで、7km。歩くこと1時間半かけて到着したのは「そば切り うちば」である。

  • 「なめこおろし」(500円)(写真:マイナビニュース)

    「なめこおろし」(500円)

蕎麦屋の風情たっぷりの佇まい

京浜急行「青物横丁」駅と、りんかい線「品川シーサイド」駅の中間点。どちらからも徒歩5分程で、ジュネーヴ平和通りという立派な名前のついた道路沿いにある。余談だが、品川区とスイスのジュネーヴ市が友好都市提携を結んでこの名がついたらしい。黒い扉に白い看板とのれん。いかにも蕎麦屋といった、清潔感のある佇まいだ。出入口の外に券売機がひとつ。「おしながき」のポスターも張られている。

事前知識として本格的な手打ちそばと聞いていたので、てっきり冷たいそばばかりの店かと思っていたが全くそんなことはなく、かけそば、きつねそばや各種天ぷらそば、さらにカレーやかつ丼などご飯物も一通り揃った、一般的な立ち食いそば店の顔ぶれであった。だが、せっかくの陽気だし、長時間のウォーキングでじっとり汗ばんでいるのでここはやはり冷たいそばを選びたい。「なめこおろし」(500円)のボタンをプッシュ。

店内入って、右手が厨房とカウンター。左手もカウンターになっており、立ち食いオンリーである。時刻は10時前。先客は2名。店内にはAMラジオが流れ、柱時計や神棚も見られた。食券を渡し、水をかけつけ2杯飲む。受渡口付近ではバットに天ぷらが並び、現金注文もできるようだった。大将一人でやられており、そばの性質もあって、3~4分程度と、立ち食いそばにしては少なからず待つ。

具材のハーモニーが秀逸な一杯

まず第一印象は、美しい。丼の中にコンパクトかつ上品に各食材が盛り付けられている(時間がかかるのもわかる!)。一見するとそばが少なく見えるかもしれないが、そば麺は極太で、かつ固茹で。ギュギュッと噛みごたえがあるので、想像以上に満たされる。

  • 京浜急行「青物横丁」駅と、りんかい線「品川シーサイド」駅の中間点。どちらからも徒歩5分程で、ジュネーヴ平和通りという立派な名前のついた道路沿いにある「そば切り うちば」

メインのおろしは多めだが、ネギ、なめこ、刻みのりと削り節は、バランスを崩さない程度の量。これを大胆にかき混ぜて頂くのだが、もうこの店、実はなめこおろしそばが一番人気メニューだったんじゃないかと思うほど美味い。一般的なもりそばでは得難い、歯ざわりの強さと具材のハーモニー。欲を言えば、わさびはもう少し辛い方が好みだが、それでも十二分に堪能させて頂いた。

運動後ということもあり、実はまだ胃袋に余力が。ふと、道路を挟んだ向こうを見やると「うどん」の文字が……。次回も青物横丁からお届けする。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。