副業元年と言われた昨年から、さまざまな副業が注目されているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多いのが現状だ。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験をいかし、自分の得意なことで収入を生み出している人を紹介していく。
今回紹介するのは、会社に勤めながら起業を目指し、現在はWeb文章コンサルタントとして活動している、おだじまみえさん。
おだじまさんは会社勤めをしながら漠然と「個人で仕事をしたい」と考え、セラピーやコーチングの資格に挑戦。資格取得後はコーチとして起業を考えるもなかなかお客さまに出会えず考え直すことに。最終的には会社でPRの仕事をしていた経験を生かし、「集客するための文章」について教えるという方向性を打ち出したところ、申し込みが入りだしたのだそうだ。
大切なのは「どんな人の役に立てるのか」を意識すること
具体的には、起業家や経営者に向けて、ブログやメールマガジンなどWeb上の文章の書き方を伝える講座を開催したり、ビジネス構築のコンサルティングを行ったりしている。
今では完全に独立して会社員時代以上の収入を生み出しているおだじまさんだが、仕事を軌道に乗せるまではもちろん、一筋縄ではいかなかった。
「当初はコーチングの認定資格を取って、ブログを書けばお申し込みが入ると思っていましたが、そうではありませんでした」。
ブログやSNSは個人起業家が集客に活用できる有効な手段。ただし、そこにはもちろんコツが必要で、ただ何か書けばいいというものではない。おだじまさんも最初は人気ブロガーを参考にして記事を書くなど工夫をされたが、自分らしさが出せず反応を取れなかったという。
それでもブログを書き続けることで数々の気づきを得て、自分なりの方向性を見出したおだじまさんは、会社員時代のスキルを生かして仕事を確立していくことに。
「会社でのPRの業務は多岐に渡りますが、その中でも書くことが好きなので『書くスキルを起業家・経営者に教える』ということは、私にとって自然なことでした。そう考えると、今までやってきたことをそのまま独立後の仕事にするだけでなく、そのスキルはどんな人の役に立てるのか、自分はどんな人の役に立ちたいのか、といった視点で改めて考えてみるのも大切だと思います」。
この「誰の役に立てるか」「どんなことで役に立てるか」は、特技を生かして仕事をする上で、非常に重要なポイントだ。ただ好きだから、これがしたいから、という理由だけで副業や起業を目指してもうまくいかないことが多い。多くの人が失敗するのはこの「役に立つ」ということを意識しないからとも言えるだろう。
どこまでお客さまに寄り添えるか
また、会社員時代は時間のやりくりにも苦労したそうだ。
「夜は子どもと一緒に寝落ちしてしまうので、ブログを書くために朝4時に起きたりしていました。また、会社と子育てがあるためお客さま候補の方々と会う時間もなかなか取れず、会わなくても届けることができて、自分を知ってもらえるメディアとして、メルマガを書くことに力を入れました。現在もお客さまとの主な接点はメルマガなのですが、このスタイルは副業時代に必然的に生まれたものだと思います」。
そんな中、おだじまさん自身のアドバイスをきっかけにお客さまがより活躍される姿を見ることは、何よりの励みになっているという。
「優れた専門性やコンテンツを持っていらっしゃるのに、うまく文章を書けないばかりに発信が苦手だったり、売り込むのが苦手だったり、という起業家の方々は結構おられるんです。そんな人たちが自分らしさに自信を持ち、ブログやメルマガ、SNSなどを通してWebでも表現できるようになってくださることは本当にうれしいですね。そしてさらにその発信を通して良いお客さまに出会われて、ますます活躍されるのをサポートできるのが、私自身の励みにもなっています」。
アドバイスの際には、おだじまさん自身の意見を押し付けずにニュートラルな状態で接すること、また人によってピンと来るポイントが違うため、それを探り当てることなど、効果的な対話を心がけているそうだ。そして講座で使う資料やワークシートなどは、毎回悩みながら直前まで修正を繰り返しているという。
おだじまさんのこうした熱意や工夫、思いが伝わることで、お客さまの動きも変わり、それが良い結果を生み出していることは間違いないだろう。
ともすると、起業や副業を始める目的が「お金を稼ぐ」ことだけになってしまうこともあるが、そういうケースでは熱意が生まれにくく、失敗に終わることがほとんどだ。そういう意味でも、自分が何をして、誰にどうなってほしいのか、などの目的意識は非常に重要となる。
おだじまさんは、この仕事が軌道に乗った理由と、そして将来の展望について、次のように語ってくれた。
「書くことで悩んでいる方は多いんです。もちろん、ライティングを教える人は私のほかにも大勢いらっしゃいますが、そこで人と同じになろうとせずに『自分が伝えるのはこういうライティングです』と、メルマガで伝え続けたのが良かったのかもしれません。その結果、私のカラーに共感するお客さまだけが集まってくださっているのだと思います。今後は起業家・経営者に限らず、書くことに悩んでいる人に向けて、気持ちが伝わり、相手と心がつながる文章の書き方を伝えていければと思っています」。
最初はできることからのスタートであっても、そこに使命感を見出せるかどうか、そこにも起業や副業の成否を分けるポイントがある。使命感を持っているおだじまさん、今後もますます活躍の場を広げていかれることは間違いない。