会社に縛られることなく、もっと自由に生きるために。漠然と憧れる人も多い「セミリタイア」。前回までに、自分なりのセミリタイアの定義づけや、サラリーマンにこそおすすめしたいセミリタイア方法が不動産投資であることをお話ししてきました。

今回は、不動産投資でセミリタイアを考える人が、いつすべきかという「タイミング選定の鉄則」について解説します。

  • セミリタイアは「いつ」するべき?

セミリタイアのタイミングの見極めに欠かせない月々の●●

前回、セミリタイアするためにまず行うべきことは、無計画に会社を辞めてしまうことではないとお伝えしました。

着実に貯金をしながら、不動産投資の勉強を進め、しっかりたまった知識、お金、そしてサラリーマンとしての信用を武器に、不動産投資を始めることを私たちはおすすめしています。

つまり、サラリーマン時代からコツコツ不動産投資を行い、「もう給料をもらわなくても大丈夫!」と思えるようになるまで、セミリタイアのタイミングを待つのです。

そうはいっても、まだ始めてもいない不動産投資で、サラリーマンを辞めても大丈夫なタイミングがいつかだなんて、よく分からないですよね。

実は、ここには「鉄則」があります。

それは所有する物件の資産総額でもなく、物件の数でもなく、ずばり「キャッシュフロー(手取り額)≧生活費」が実現できている、ということです。

キャッシュフローという言葉の定義は、投資家によって多少異なりますが、簡単に言えば「手取り額」。家賃収入からローンやさまざまな経費、税金等を引いて、最後に手元に残るお金のことです。

この「手取り額」であなたの今の生活費がカバーできれば、サラリーマンを引退する最低限の準備が整ったということができるのです。

あなたの場合、月々に必要な生活費は、一体いくらでしょうか。家族構成や住んでいる場所、ライフスタイルでも支出額は千差万別でしょう。

もし、現時点では月々の生活費を把握できていないということであれば、セミリタイアを実現するために、早々に家計把握からスタートしましょう。

できれば、季節ごとの特別支出を把握するためにも、1カ月だけではなく年ベースでの支出額を把握し、それを12カ月で割ってみてください。毎月どのくらいの手取り収入があれば実際のところやっていけるか、わかると思います。

「タイミング選定の鉄則」を守る上で、考えるべき大切なポイント

「キャッシュフロー(手取り額)≧生活費」。これは揺るぎのない鉄則なのですが、ここで思い出してもらいたいのが、第1回でお伝えしたセミリタイアの定義づけと期日についてです。

あなたがもし、サラリーマンを卒業した後に、新しいビジネスを始めたいと考えていたり、不動産投資の規模をさらに拡大していきたいと考えていたりするのであれば、当然ですが生活費プラスαのお金が必要になります。

特に不動産投資の場合は、現金が手元に豊富にあることで、より多くの頭金を払うことができ、融資を受けやすくなるという現実もあります。

あなたの理想のセミリタイア像に立ち返り、生活費がなんとかカバーできる程度でも、とにかく早くサラリーマンを卒業したいのか、それとももう少し余裕を持って卒業するのかを考えることは、最適なタイミングを見極める上で大切なポイントと言えるでしょう。

無知な投資家が陥りがちな「物件総額◯億円の不動産王」へのあこがれ

もう一つ別の視点から、キャッシュフローで考えることが大切だ、ということをお話ししましょう。

テレビなどでたまに見かける、きらびやかな不動産を数多く所有する不動産王の「物件総額◯億円!」という逸話。自分には遠い話だなと感じながらも、ぼんやり憧れる人は少なくないでしょう。

ですがセミリタイアのためには、こういったタイプの不動産王になる必要はありません。メディアに取り上げられるような不動産王は、資産価値の高い物件を数多く所有していることが多いのですが、セミリタイアを目指すべき人が意識してほしいのはあくまでも「キャッシュフロー」なのです。

噛み砕いて説明しましょう。例えば、都内の一等地の駅近新築物件を購入して、賃貸に出したとします。

土地や建物の資産価値は十分にありますし、相応の家賃収入もあります。それなのにあなたが手にするのは月々わずか数万円のみ。必死の思いをして手に入れたにも関わらず月数万円です。これではセミリタイアなどできる余地がありません。一体なぜでしょうか。

考えてみれば単純ですが、資産価値の高い物件はローンや運営にかかる費用も高く、こういった諸費用が収益を相殺してしまうのです。しかも、住人が退去してしまえば空室期間は家賃収入が入らず、薄利なばかりかあなたの手元からお金を奪っていく可能性さえある、というわけです。

「物件の資産価値が高いこと」と「現金がしっかり手元に残ること」は似て非なるもの、ということになります。

もちろん、資産の有無は銀行融資に影響するので、資産価値の高い物件を所有したいと思うことが一概に誤りということではありません。しかし中途半端な知識のまま、受け身で不動産投資を行えば、セミリタイア実現まで大きな回り道を強いられることは必至です。 不動産投資はセミリタイアにおすすめな方法ですが、一歩間違うと大きな失敗にもつながりうるもの。正しい知識に基づいて、自分の目標と資金量にあった適切な戦略を立てることが不可欠なのです。

次回は、具体的な物件シミュレーションを通して、キャッシュフローに関する知識を深めていきたいと思います。

ファイナンシャルアカデミー

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