連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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「老後破産」はお金の問題なので、お金で解決できます。これまで繰り返してきたように、若いうちから支出をコントロールする力を身につけて、計画的に貯蓄をすればよいのです。これは、収入の多い少ないにかかわらず、すべての人に共通しています。というよりむしろ、収入の多い人ほどしっかり心がけた方がよいでしょう。

収入が多いほど「老後破産」しやすい?!

収入が多い人がたくさん貯蓄しているかというと、そうでないケースが多いのです。同年代の人より高収入なのに貯蓄が全くできていないという人は珍しくありません。なぜなのでしょう。それは、収入が多いほど支出も多くなるからです。

高収入・高支出に陥る2つのパターン

高収入・高支出には2パターンあります。1つは日常の生活費にお金がかかっているケース。

都心の家賃の高い高級マンションに住み、食事は自分では作らず、買ってきたものを食べている。それも主食は高級ベーカリーのパンやブランド米、おかずはデパ地下で売っている高級お総菜など。光熱費なんかは気にせず電気やガスは使い放題。勧められるままに入った保険に高い保険料を払っている、などなど。

程度に差はありますが、お金にゆとりがあると支出を気にすることなく使ってしまう傾向があり、生活費がふくらみがち。それで貯蓄ができないのです。貯蓄ができていないと、何かの要因で収入が減ったら、たちまち借金生活におちいります。また、どんな人でもリタイア後は収入が減るので、現役時代に収入のほとんどを生活費に充てている生活をしていると、老後は間違いなく破産してしまいます。

もう1つは、生活費は普通でも趣味や娯楽にお金がかかっているケースです。コンサートやイベント、習い事、コレクションの収集などにはお金に糸目をつけないとか、頻繁に海外旅行へ行く、などなど。これも、お金があるからできることなわけですが、毎月貯蓄をした上で、その残りのお金を充てるようにしていかないと、貯蓄がほとんどない状態で老後を迎えることになってしまいます。

"見栄支出"に引きずられないこと

収入が多くて周囲にも同じような人が多いと"見栄支出"が膨らむケースもあります。まわりの人が、ブランド物を身につけている、外車を持っている、家族で毎年海外旅行に行っている、子供を小学校から私立に通わせている、などということがあると、自分もそれと同じことをしたくなったり、あるいはせざるをえなくなったりして、お金が貯められないというパターンです。

こういう人は、まわりに流されず「他人は他人、自分は自分」という強い意志をもって支出にメリハリをつけていかないと、老後破産しかねません。

「オレは収入が多いから」「ウチはお金があるから」と思っていると、支出することに対して甘くなったりルーズになったりします。収入が多いわりに貯蓄がない、あるいは少ない、という人は、早めに支出を見直して、計画的に貯めるプランを実行してください。

「いつの間にか貯まっている貯金」に注意

支出が収入の範囲に収まっていて、いつのまにか普通預金にお金が貯まっている人というもいるでしょう。一見すると、毎月貯蓄したのと同じ結果なので、何も問題なさそうに思えますが、それは違います。口座にあるのは自覚して貯めたお金ではないからです。

毎月2万円ずつ50カ月積み立てて貯めた100万円と、何もせずに口座に貯まっていた100万円とでは意味が違います。

貯めようと意識して積み立てたお金には「せっかく貯めたのだから」という気持ちが働き、使うときは慎重になるし、ムダな使い方はしたくないと思うでしょう。一方、口座に自然に貯まっていたお金は、気持ちの中では"フリー"なお金なので、何となく使ってしまう可能性があります。気づいたら減ったりなくなったりしていたということもあるかもしれません。

生活費を支出したあとに毎月お金が残るという人は、その金額を財形貯蓄や自動積立定期預金にするなどして、意識して貯めることが大切です。

収入が多いからといって気を緩めないこと。それが老後破産を回避することにつながります。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。