パリオリンピックでオフィシャルタイムキーパーを務めるスイスの時計ブランド「オメガ」。世界的にも抜群の知名度を持ち、日本でもおなじみの高級時計だ。ブランドが辿ってきた歴史や時計にまつわるエピソードの魅力、宇宙空間でも壊れないという脅威の耐久性と高い機能性などが、多くのファンの心をつかんで離さない。

オメガの魅力や人気のモデル、相場の動向について、KOMEHYOを運営する(株)コメ兵 商品部の鳥居真 氏に聞いた。

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時計ブランドとして「オメガ」が高く評価される理由

――「オメガ」が時計ブランドとして高く評価されている理由を教えてください。

「オメガ」といえば、ロレックスに次いで知名度のあるブランドです。ムーブメントの開発技術でも業界をリードしていて、優れた品質で実用性の高い時計としても人気を誇っています。

筋金入りの時計コレクターだけでなく、幅広い層から人気を集めているのも大きな特徴で、購入者層は大きく2つに分かれます。初めての高級時計としてオメガを選ぶ層、そして歴史やエピソードに惹かれてオメガを選ぶ層です。

また、ロレックスと比較して手に入れやすい価格帯というのも人気の理由の一つです。

――初めての高級時計として手に入れやすい価格帯ということですが、実際にどのくらいの価格から購入ができるのでしょうか。

中古品であれば、機械式ムーブメントであっても10万円台から購入可能です。ロレックスは中古でも100万円以上することも多いですから、それと比較すると手の届きやすい価格だと思います。価格帯が広いので、予算に合わせてお買い求めいただきやすいというのもオメガの魅力です。

最近では同じスイスの時計ブランド「Swatch」とのコラボがあって、新品でも約4万円から購入できるものもあり、人気を集めています。限定発売のものが多くネットでは販売されていないので、Swatchとのコラボモデルを中古で購入したいという方もいらっしゃいます。

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唯一無二のエピソードで選ばれる特別な時計たち

――手の届きやすい価格帯があるというのは魅力的ですね。歴史やエピソードに惹かれてオメガを選ぶ層というのは、何に惹かれるのでしょうか?

オメガの持つ最大の魅力といえば、「月面着陸」、「オリンピック」、そして「007」など、コレクターの遊び心をくすぐるエピソードを持った時計があることです。限定品も多いので、希少性も高く、コレクターが探し求める品も存在します。

――具体的にはどのようなエピソードなのですか?

まずは「月面着陸」。オメガの「スピードマスター」は、人類初の月面着陸の際に着用されていた腕時計なのです。NASAから選ばれたという信頼と実績は唯一無二。宇宙空間でも安心して使える耐久性が売りです。"ムーンウォッチ"とも呼ばれ、多くの人々から愛されています。

  • スピードマスター・アポロ11号40周年※KOMEHYO提供

また、オメガは1932年のロサンゼルスオリンピック以降、92年間・31回にわたって公式タイムキーパーを務めています。これはオメガが最先端の計時システムを持っているからこそ。オリンピック開催を記念して作られる大会コレクションもあります。

「007」については、主役のボンドが着用していたのがオメガの「シーマスター」。時計コレクターだけでなく、世界中のボンドファンから愛されている時計です。

  • 映画『007 スカイフォール』でボンドが身に着けたプラネットオーシャン007スカイフォール※KOMEHYO提供

一般の方でもブランドの背景やエピソードを深掘りしてから購入されるケースが多いので、エピソードがあるブランドというのは強いなと思います。

5年間で相場が2倍になった人気シリーズとは?

――それぞれにインパクトのあるエピソードがあって、ファンにはたまらない時計になっているのですね。現在人気のモデルはありますか?

月面着陸のエピソードを持っている「スピードマスター」は人気の定番モデルです。どんどん進化していますし、いろんなバリエーションがあります。

「007」でも有名になった「シーマスター」も人気ですね。実用性の高いものが多いので、日常で使っている方が多い印象です。

とはいえ、日常で使うということは、中古市場でコンディションが良いものを見つけるのも難しかったりします。限定品で条件が良いものは価格が高騰していきます。

――「スピードマスター」シリーズが人気ということで、中古販売価格の相場の推移について教えてください。

初めて月面着陸したスピードマスターの正統後継機シリーズ「3570.50」を例にすると、今から5年前の2019年で中古販売価格が35万円だったものが、2024年現在は70万円程度。今は生産を終了している点も、価格に反映されていると思います。

もう少し安価なシリーズも、5年前は15万円くらいだったものが、今では30万円を超えています。定番のシリーズはこの5年でだいたい2倍くらいの価格になっています。

――過去のオークションで高値をつけたモデルとなると、どんなものが挙げられますか?

オリジナルデザインで希少なヴィンテージなど、「スピードマスター」の中には億単位で取引されるものもあります。

2003年に発売された初代モデル「スピードマスター プロフェッショナル スヌーピーアワード」は、NASAから贈られた「シルバースヌーピーアワード」のバッジをモチーフにしているのですが、宇宙服を着たスヌーピーが描かれている限定品。10年ほど前の発売当時は30万円程度だったのに、今では200万円ほどの高値がついています。

ロレックスとの大きな違いは『限定品』

――オメガの限定品は希少性が高く、人気があるのですね。高値がつくモデルはロレックスにも負けない相場だと感じます。

ロレックスのどのシリーズと比較するかにもよりますが、ロレックスは限定品が少ないという点が、オメガとの大きな違いです。オメガの限定シリーズは希少性が高い分、ロレックスと比べても需要が高い場合は高値になる傾向があります。

また、他の高級ブランド時計と比べるとコスパが良いというのも魅力です。通常、機械式時計というのは、購入後にも「オーバーホール」と呼ばれる定期的なメンテナンスが必要となり維持費がかかります。

他のブランドですと3~5年スパンでのオーバーホールが推奨されていますが、オメガは5~8年スパンでの実施を推奨しています。これは、自社のムーブメントに自信がある証拠。維持費のコスパが良いというのも、ユーザーにとってうれしいポイントになるのではないでしょうか。