健康を維持するには何を食べ、どんな運動をすれば良いのか。根拠の不確かな情報に翻弄されるよりも、健康長寿の人たちの生活習慣をマネするほうが賢明なはず。

本連載では、『世界一長寿で幸せな村 イタリア ピオッピ式 最高の長生き術』(わかさ出版)から、イタリア南部の長寿村、ピオッピ村の人々の生活習慣にならい、毎日多忙な社会人でも効率良くヘルシーになれる方法を紹介する。 →これまでの記事はこちら

  • 運動不足だと感じることはありますか?

短く強度の高い動作が効果的

過去4回の記事では、ピオッピ村の人々の長寿の秘密を、彼らの食生活から探ってきた。しかし、ピオッピ村民が高齢になっても元気で過ごすことができるのは、栄養豊富な食事だけが要因ではない。著者は、彼らの「動き方」にも注目している。

ピオッピ村は、海沿いで斜面が多い環境であることから、起伏が激しい土地である。そのため、ピオッピ村民は、必然的に坂道や階段を上り下りすることが習慣になっている。

時々休憩を挟みつつ起伏のある場所を歩くという動きは、短く強度の高い動作で構成されている。著者によれば、この動きこそが、アンチエイジングに非常に効果的なのだそうだ。

  • 『世界一長寿で幸せな村 イタリア ピオッピ式 最高の長生き術』(わかさ出版)

短く強度の高い動作をくり返し行うことは、効率的に身体能力を向上させる手法としてアスリートのトレーニングにも採用され、近年注目を集めている。スポーツ科学の分野ではHIIT(高強度インターバルトレーニング)として世界的に知られており、立命館大学 スポーツ健康科学部の教授である田畑泉氏が考案した。

HIIT=効率的に健康になれる運動法

田畑氏の研究によれば、断続的に40分間のエクササイズを行うよりも、強度の高い運動をたった4分間(例えば、エアロバイクをこぐといった最大強度の運動を20秒続け、10秒休憩。これを8回くり返す)行うほうが、効果があるとされている。

運動は長くやればやるほど効果が上がるというわけではなく、HIIT、つまり強度の高い運動を短時間で行うほうが、効率が良いということのようだ。

アメリカのメイヨー・クリニックが行った最近の研究(※)によれば、HIITは、老化によって弱まるプロセス、すなわち心肺機能、インスリン感受性、ミトコンドリア呼吸、除脂肪体重をしっかりと向上させることができるとわかったそうだ。
※出典:Enhanced Protein Translation Underlies Improved Metabolic and Physical Adaptations to Different Exercise Training Modes in Young and Old Humans『Cell Metabolism』

HIITはけっして容易なトレーニングとはいえないものの、忙しい人が効率的に健康を維持するには、うってつけの運動法と言えるのではないか。

強度の高い運動というのは、必ずしも激しい動作を伴うとは限らない。本書では、運動が苦手でも筋力に自信がなくても、自宅で器具を使わずに行えるさまざまなエクササイズを紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。

座る時間を減らし、動作に変化をつけよう

それでも、仕事で疲れて運動する余力がない、運動する時間を作らずに健康になりたい、という人は少なくないかもしれない。著者によれば、そんな人のために、日常生活で意識したい二つのポイントがあるという。

一つ目は、「座っている時間をなるべく減らす」ことだ。著者いわく、45分ごとに2〜3分、体を動かすための休憩を入れるだけで良いとのこと。たった2分立つだけで、人の体は細胞レベルでポジティブに反応し、ちょっと動き回るだけでも大きな効果があるそうだ。特にデスクワーク中心の人は、こまめに立つことを心がけよう。

二つ目は、「動作に変化をつける」だ。たとえば、同じ「歩く」という動作でも、ウォーキングマシンの上をただただ歩くのに比べ、森の中を歩くほうが、動き方により多くのバリエーションが生まれる。

また著者によれば、一気に歩くよりも、その日一日にわたって少しずつ分散させるほうが効果的かもしれないという。

同じ動きばかりにならないように、階段を使うなど、その日の動きのバリエーションを増やすように心がければ、ただ漫然と過ごすよりも、はるかに健康的になれるはずだ。