図解!プロによるケータイの構え
猪井さんは、ロケ地と東京を結ぶツールとして、携帯カメラを利用している。「ロケ地がどんな場所かを東京のデザイナーさんと確認しあうために、写メするんだよ。その場所に本決まりになったらデザイナーさんが来て、本番の撮影をするんだ」と猪井さん。
そんなメモ画像であるとはいえ、これは十分に美しい。しっかりと水平が出ている上、パソコンの画面で見ても全く手ぶれしていない。プロにとっては当たり前だろうが、あえて「どうやって撮ったんですか? 」と漠然と質問してみた。すると猪井さんは「普通だよ」と携帯を構えて、その場で撮影して見せてくれた。すると、その構えが全く普通ではなかった。ちなみに、ケータイカメラの設定はほとんどいじっていないそうだ。
しっかり構え、失敗の連鎖を断ち切れ!
猪井さんが携帯を両手で構えるのは、手ブレ防止とか水平を出すとかいうより、構図をキメるため。「一眼レフのファインダーを覗くときのクセが、携帯でもそのまま出るね。しっかり構えるというのは、写真をやっている者としての習性かもしれないね」。携帯カメラでは、構えが安定しないとモニター映像が静止しない。構図をキメようとすれば、自然と手ブレしにくく、タイムラグにも対応しやすい構えになる。
さて、猪井さんの携帯を使い方をもう一つ。花の写真を奥様に送るのだという。「僕らの写真は花でも何でも必ず線路と絡めて撮るんだけどね、女房に送るときは、列車が来ない時間に、花だけ撮るんだ」。 緊張感がある線路際で、一瞬仕事を離れ、奥様が喜びそうなものを撮影しているという点が興味深い。「撮影で家を空けてばかりいるから、悪ぃな、ってことだよ」と、笑顔を見せる。
猪井さんのお人柄に触れ、調子に乗った筆者。「動いている列車を撮ったものはないでしょうか?」と、無謀にも質問してみた。しかし、さすがに「そりゃ、ないよ」とのこと。さらに、注意点として猪井さんは次のようなことも話してくれた。「何にでも携帯カメラを向けるのは失礼なこと。場をわきまえるのを忘れずに」。ふむ、確かに、である。このことを大前提として、携帯カメラでの撮影に取り組んでもらいたい。
猪井さん談「こうやってメモ代わりにどんどん撮るとおもしろいね。消さずにおけば、メモがストーリーになるんだなあ。僕のはどんどん消しちゃうからなあ。消さないってのもいいね」。