「お世辞感を出さずにうまくほめて相手の懐にはいりたいとき」
「自分の立ち位置を守るべく、肯定も否定もせずにその場をのりきりたいとき」

職場や家族、恋人、友人などの人間関係をなるべくストレスなく過ごすために、自分の求めている返答や行動を相手から引き出したい瞬間は多くあります。そのときにひとこと言い換えるだけで、相手を自在にあやつる言葉の言い回しのコツを紹介します。

実際に心理学者たちがおこなった心理学実験や、深層心理をもとに、その言い換えをすることでもたらす心理効果を解説。人間の思考のメカニズムも学ぶことができます。

思い通りに人を動かしたい人だけでなく、人にマイナスイメージをもたれたり、自分のもつキャラクターを傷つけたりすることを恐れる繊細な人が対人回避術として使用することもできる一冊『ズルい言い換え事典』から一部抜粋してご紹介します!

■無理難題を人に頼みたいときのテクは?

無茶ぶりのあとの、軽めのオーダーは引き受けやすい

お願い事を人にするとき、断られやすい方法と、承諾されやすい方法がある。特に少し困難な内容を依頼する際は、こちらも気後れして頼みにくいもの。そんなときに心理学を応用するとスムーズだ。

「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」という手法がある。まず最初にハードルの高い難題を頼み、断られたら本来頼みたかったことを依頼する。そうすると、相手は一旦断ってしまった手前、2回も断ることに罪悪感を感じ、また1回目の依頼よりも引き受けやすい内容であるために、引き受けやすくなる。

これはビジネスにおいても頻繁に使われる手法だ。最初に10万円もする高い商品を提示され、とても買えないと断ったのち、続けて5万円の商品を提示されると、実際には定価より少し高めの商品かもしれなくても、つい「安い」と思って買ってしまうのは、この術中に陥っているのである。

断ることに罪悪感を覚えてしまう習性を逆手に

冒頭の言い換え例のように、恋愛シーンでも、このテクニックは有効。好きな相手を口説きたいと思ったとき、「旅行に行かない? 」と言われるとあまりに急だと思うもの。この時、続けて、「じゃあ、食事でもどうかな? 」と言われると「それならいいか…」と、あまり興味がない相手だとしても、つい承諾してしまうのだ。

逆に、必ず引き受けざるを得ないような簡単なお願いからはじめる方法もある。「イエスのメンタルリセット」と呼ばれるテクニックで、コピーを取るとか届け物をするとか、ファイリングをするといった具合に、何か頼むたびに「イエス」と答えさせるのが第一歩。これを何度も繰り返すうち、いつの間にか断りにくい心理状態がつくられていくため、負担の大きな頼み事に対しても「ノー」と言わないばかりか、疑問すら抱かなくなってしまうのだ。

実はこれ、怪しい団体が駅などで募金を行う際に使われるテクニックでもある。 話を聞く、署名する……と小さな依頼に「イエス」と従っているうちに、「じゃあ募 金もお願いします」というオチが待っている。くれぐれもご注意を。

『ズルい言い換え事典』日本文芸社
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『ズルい言い換え事典』(齊藤 勇監修/日本文芸社)

職場や家族、恋人、友人などの人間関係をなるべくストレスなく過ごすために、自分の求めている返答や行動を相手から引き出したい瞬間は多くありますが、そのときにひとこと言い換えるだけで、相手を自在にあやつる言葉の言い回しのコツを紹介。思い通りに人を動かしたい人だけでなく、人にマイナスイメージをもたれたり、自分のもつキャラクターを傷つけたりすることを恐れる繊細な人が対人回避術として使用することもできる一冊です。