ずいぶん前のことだけど、テニスの試合中、相手の女に泣かれたことがある。「もういや!」とか言って、突然ベソベソやり出したのだ。大学サークルのリーグ戦だった。テニスにハマる前のことだったので、筆者のレベルはせいぜい中級だったはず。そんな相手と競り合って、なぜ泣く? 試合で泣いていいのは、テニスに人生かけてきたヤツだけだ。毎日毎日、自問自答しちゃったりしながら練習して、それで結果が出なかったら、悔しさと情けなさに泣いてもいい。だけどたかが中級女に負けそうなレベルで、自分の人生が否定されるほどの時間を費やしたとは思えない。それは単に「思いどおりにならないのがイヤ」なわがままだ。

『ちはやふる』は、一生懸命とはなにか、そうすることでどんないいことがあるかを教えてくれる。何かに打ち込むっていいことだよ。と、教育的要素の話もしたいところだけれど、ここはレンアイについて語る場なので、今回は「惚れられたい男と惚れたい男」について書いてみようと思う。『ちはやふる』には、惚れられたい男と、惚れたい男が登場する。割と登場人物が多い割には、この漫画って結構シビアで、恋愛対象の2人以外はレンアイ的には明確な雑魚キャラなんだよな。

さて、その気になる惚れられたい男。ズバリ太一だ。かるた部のキャプテンで、勉強ができてイケメン。学校でもモテモテタイプだ。中学で超進学校に入ったのに、なにを思ったか主人公のいる都立高校に入学してきた。このあたりは少女漫画頻出の「勉強より主人公」のチョイスだよな。だけど、太一には惚れないほうがいい。モテる男を好きになるのは焼き餅焼きっぱなしで辛いからだ。だけど好かれるのならステイタスアップだ。数多いる女の中から自分が選ばれてるわけだから。

惚れたい男は、新(あらた)だ。リアルにいたら多分、ヲタク系のメガネくん。そしてちょっぴりアンニュイ。主人公の千早は新にかるたを教わったので、新を神のように尊敬している。少女漫画での「尊敬」は、イコール愛だ。千早が10押すと3くらい反応が返ってくるので、ほどよく刺激があって楽しい。焼き餅を焼かずに、ただ相手の気持ちが自分にあるかだけを気にして片思いができたら、そりゃ楽しいよ。

まーそれに真面目メガネくんは、あくまでクールにアンニュイにしててほしいので、無駄にサカってほしくないのだ。こういうキャラがはあはあ言って押し倒してきたら、ちょっと気持ち悪い。

この2人に挟まれて千早は、太一に惚れられ、新を追いかける。読者の望むパターンをしっかり表現してるわけである。

ではリアルでこのパターンを活用できるのか。ヲタク系のメガネくんは、黙ってても女が寄ってくるのか……? ねーな。もしも女にモテるヤツが、好きだ好きだと激烈に押してきたら、「こんな私でいいのかしら、よろしくね」だ。でもヲタク系のメガネくんが好きだ好きだと激烈に押してきたら、「まあちょっと落ち着け、どっか行け」だろう。それよりもお友達からゆったりと信頼関係を深めていくほうが効きそう。「押し」の効果的パターンは、キャラによって違うというところか。

じゃあ、その他の雑魚キャラはどうすればいいかというのは、次回にでも。
<つづく>