東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「アーティスティックスイミング」! 競技解説はアーティスティックスイミング歴11年、現在水陸両用トレーナーとして活動する坂林まり恵さんです。
アーティスティックスイミングの特徴
アーティスティックスイミング(以下AS)は、まだ聞き慣れない方も多いと思いますが、以前、シンクロナイズドスイミングと呼ばれていた競技です。「シンクロナイズド(同調した)」より「アーティスティック(芸術的な)」という表現の方が競技としてよりふさわしいと判断され、2018年4月に変更されました。
ASの特徴といえば、水中でも乱れないキレイにまとめた髪、遠くからでもハッキリ見えるよう濃いめの化粧、そしてきらびやかな水着です。ちなみに、髪の毛は水で固まる性質を生かしたゼラチンが使われています。
競技用プールは広いので、表情や眼力をアピールできるように、はっきりわかるように濃いメイクをして目立たせます。髪上げやお化粧はチームメイト同士で行います。採点競技であるASは、水着や髪型に点数は付きませんが、演技に表現力を与えます。
アーティスティックスイミングを観戦するときのポイント
ASの種目は、ソロ(1人)、デュエット(2人)、ミックスデュエット(男女ペア)、チーム(4~8人)、フリーコンビネーション(8~10人)、ハイライトルーティン(8~10人)の6種類があります。その中で、五輪種目はデュエットとチームの2種目です。
それぞれの競技は、決まった技を順番に行っていくテクニカルルーティン(TR)と、自由に泳ぐフリールーティン(FR)の合計得点でメダル争いが行われ、同時性、完遂度、難易度、演技構成、プレゼンテーションなど細かく採点されます。TRは同じ向きと動作で泳ぐので、正確性が求められます。一方、FRは細かい規定はないので、ある程度自由に泳ぐことが可能です。
プールの中を常に移動しながら、次から次へと素早く変化し、形が明確で、選手同士が近いほど評価が高くなります。また水中から足を出す演技は、ほかの競技にはないASならではの魅力です。
動作やポーズのメリハリ、高さ、複雑さ、独創性、柔軟性などが評価されます。一番の観戦ポイントは、選手同士が床の力を使わず浮力と全員のタイミングを合わせて持ち上げるリフトという大技です。一番上で跳ぶ人はジャンパーと呼ばれ、高い身体能力が求められます。床を蹴ると減点になるため、浮力と全員のタイミングを合わせることが重要です。水中カメラからの映像もぜひ注目してみてくさい。
東京2020でのチームジャパンの展望
日本代表チームの強みは、手足の細かい部分まで正確に合わせる技術を持っていることです。そして、毎日十数時間にもおよぶ厳しいトレーニングを積んで得ることができる継続力は、世界に誇れるチカラに変わります。
ライバルのウクライナとの3位争いに勝つためには、正確に合わせる技術と、いくつもの隊形変化をしながら広いプールを動き回れるパワーとスピード、そして新しい競技名になったアーティスティック=芸術性が必要になります。
遠山健太からの運動子育てアドバイス
一時期、高校生のAS選手のトレーニング指導をさせていただきましたが、アスリートともなると技術練習も過酷であるため、疲労の状態と向き合いながら強化する大変さを体験しました。ただ、幼少期でアーティスティックスイミングを体験することは、子どもの情操教育にはとても良いと思います。もし、お子さんが踊ることと泳ぐことの両方が好きであればアーディスティックスイミングを体験させてみてもいいかもしれません。体験できる場所や指導者が限られていることから、教室を探すのも大変だと思いますが、子どもが気に入ればちょっと遠くても通う価値はあるかなと思います。映画『ウォーターボーイズ』の影響か、男子でイベント的にやる中学校もありますので、今後、男子だけのチーム競技化も期待したいですね。