今回から5回にわたり、英語学習に悩むビジネスパーソンに向けて少しでも役に立つ「やり抜く」学習方法を紹介していきたいと思います。英語学習だけではなく、すべてのビジネスシーンで置き換えて使えるメソッドとなれば幸いです。

マッキンゼー時代、テレカンで議事録が書けなかった

新卒で外資系コンサルティングファームのマッキンゼーに入社した私は、入社当初、テレカン(電話会議)の内容が全く分からず、辛い思いをしていました。学生時代に、米国留学の経験のある私は、英語力にそれなりの自信を持っていました。しかし、聞き慣れないビジネス用語に加え、相手の顔も見えず、音質も良くない電話での会議は、日々私を苦しめていました。全く分からないテレカンでも議事録を書く必要があったので、会議の音声を全て録音し、文字起こししたものを読む…… という、とてつもなく非効率なことをしていました。今思うと、とてもマッキンゼーの社員がしている仕事とは思えません。

仕事は一流、英語は二流

私は現在の職業上、多くのビジネスパーソンと話す機会があるのですが、「英語ができさえすれば……」という方にお会いする機会が少なくありません。

ある有名メーカーに勤務している方は、国内営業で実績を上げ、TOEICスコアが700点程度あるということから海外事業部に異動。周りから見ればうらやむようなキャリアなのですが、そこから非常に苦しむことになったそうです。自分の英語力に全く自信がなく、本来電話一本掛ければ済む相談をわざわざメールで打ったり、メールでも正しいニュアンスで伝わっているのかがよく分からないため、都度英語ができる同僚にチェックしてもらったりしていたとのこと。当然業務効率が悪くなり、本来のパフォーマンスが出せていない状況でした。

これは一例ですが、こういった状況は決して珍しいことではないと、自身の経験も含め感じています。むしろ多くの方がこうした状況の中苦しんでいるのではないかとさえ思います。このような状況では、当然会社全体の効率も悪くなり、日本企業が本来持っている力を出し切れていないのではないでしょうか?

ビジネスシーンでの英語使用、誰もが避けられない時代に

ビジネスパーソンの英語学習に対するニーズは確実に増えています。ジェトロ(日本貿易振興機構)の「世界貿易投資報告(2016年版)」によると、日本の上場企業(186社)の海外売上比率は2000年度の28.6%から着実に上昇し、2015年度には58.3%と過去最高を記録しました。2013年度以降は3年連続で国内売上を上回っており、海外市場中心のビジネスにシフトしていることがわかります。

※本グラフはジェトロ 世界貿易投資報告(2016年版)を基に筆者作成

こうした状況を背景に、社内の公用語を英語にする企業も増えてきています。楽天は2012年7月から正式に社内公用語を英語に移行し、現在では社員の平均TOEICスコアは800点を超えていると言います。それ以外にも、資生堂は2018年に本社部門の英語公用語化、本田技研工業は2020年に社内公用語を英語にすると発表しています。「公用語が英語だから」ではなく、日本のビジネスパーソンが本来の力を発揮し、日本企業が世界でプレゼンスを上げるためには、英語力の向上は避けて通れないものといえるでしょう。

英語力の向上が必要だとは思っている、しかしながら、どのようにアプローチするのがベストなのかわからない、という人は多いと思います。英会話スクールに通っている方、海外ドラマを何度も観て学習されている方、本屋で購入した単語帳で基礎力をつけようとされている方……。みなさん、色々な方法で努力されていると思います。

果たして、成果はいかがでしょうか? 自己流の英語学習法で成果を出している方もいらっしゃいますが、多くの方が思ったような成果を出せずに悩んでいるのではないでしょうか?

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次回以降は、なぜ多くの方にとって英語力の向上が難しいのか、どのようにすれば効率的に英語力を向上することができるのか、ということについてお話致します。

執筆者プロフィール:岡田 祥吾(おかだ しょうご)


株式会社GRIT 代表取締役社長
大阪大学工学部を卒業後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本企業の海外進出、海外企業の日本市場戦略立案等、数々のプロジェクトに従事。同社を退社後、株式会社GRITを創業。2カ月でビジネス英語を身につけるコーチングプログラム「TOKKUN ENGLISH」を運営。