社会人は忙しい。栄養バランスのよい食事が理想的なのはわかっているのにサプリメント頼りなんて人も多いのでは。ところで、サプリメントってどうなんでしょう。いいの? 悪いの? そんな素朴な疑問について武蔵野栄養専門学校の管理栄養士 板垣裕氏に解説してもらいました。
上手に使えばサプリは有効
人間に必要な栄養素のうち、主なものはたんぱく質、糖質、脂質の「三大栄養素」。これにビタミンとミネラルを合わせて「五大栄養素」と呼びます。これらの栄養素は本来、サプリに頼らず普段の食事で摂取するべきもの。魚や肉など、さまざまな栄養源から取り入れるのが理想的ですが、現代人の食生活においてビタミンやミネラルは不足しやすいというのが現実です。
ビタミンは緑黄色野菜、果物、レバーなどに含まれ、体の調子を整える働きを持ちます。ミネラルは海藻、牛乳、乳製品、小魚などに含まれ、骨や歯などを作ったり、健康状態を整えたりしてくれます。「食事の内容や量が偏っていて、明らかにビタミンやミネラルが足りない」という自覚があるなら、サプリで補うのは有効です。その代わり、注意するべき点もいくつかあります。
過剰症には要注意
ビタミンやミネラルは健康維持に欠かせないものですが、過剰になると健康被害が出ることもあるので要注意です。つまり、「あらゆる種類が配合されたマルチビタミンを飲めば、すべて足りているだろうからOK」と考えるのは間違いということになります。
ある栄養素は、実は食事で十分取れているのに、マルチビタミンなどのサプリで補えば当然過剰になってしまいます。特に脂溶性のビタミンである、ビタミンAやD、Eは過剰摂取に注意が必要です。また鉄分は摂りすぎると便秘、胃腸障害、亜鉛の吸収障害などを引き起こすこともあるので、これも要注意です。
人間の体は、食事で摂取したものをすべて吸収するわけではなく、食品の組み合わせによる過剰なものは尿や便として排泄されます。年齢や運動強度などにより、人によって1日の理想的な量が決まってきます。
サプリの取り方と必要量の考え方
自分の食生活においてどの栄養素が足りていて、何が足りていないのかについて、実際の数値はよく分からない部分があるものです。最近は、健康管理のためのアプリや食事を管理できるアプリなどもあるので、これらを活用するのもよいでしょう。
年齢や性別、運動強度などのパーソナルデータを入れれば、必要な栄養素の量を教えてくれるものもあります。アプリ以外に、Webサービスもあるのでリサーチするとよいでしょう。
とはいえ、もともと健康意識が高く、普段から肉や卵、魚などさまざまな食材を食べている人は、特定の栄養素が大幅に不足することはありません。
問題なのは、多忙のため食生活が偏っている人や、偏食・少食の人です。本来は食生活を見直すべきですが、不足している栄養素をサプリで役立てるのもよいです。自分に合った量を確認し、パッケージにある栄養表示をきちんと見て選ぶとよいでしょう。
また、医師、薬剤師、管理栄養士などの専門家に相談することが良いかと思います。地域の保健所、薬局などでは無料相談もあります。流行に流されず、確かな情報を得ることが大事です。
取材協力:板垣裕(いたがき・ゆたか)
武蔵野栄養専門学校講師・管理栄養士。武蔵野栄養専門学校は、栄養士として活躍する人材を育てる専門学校。給食管理、栄養学、臨床栄養学などの実習を通じて栄養学を学びます。板垣氏は講師として教えるほか、高齢者施設での栄養管理などを担当。