これからハロウィン~クリスマス~年末・新年と多くの忘年会やパーティーなどが催される。その一方で仕事でも年末に向けて忙しさも佳境に入ってくるだろう。社会人にとっても就職活動を行う学生にとっても、会合や商談、それに面接の場などでの「自己紹介」が重要となる。しかし、誰だって相手に少しでも良い印象を持ってもらいたいと思えば思うほど、「自己紹介」では緊張してしまうものだ。今回は「自己紹介」のテクニックというよりも、自己紹介の場でなるべく緊張しないための「考え方」について考えてみたいと思う。

まず、「自己紹介」を大きく4つの切り口に分類してみたい。

(1)自分の「能力」について自己紹介する場合
(2)自分「性格(キャラクター)」について自己紹介する場合
(3)「ありのまま」を自己紹介する場合
(4)多少の「背伸び」をして自己紹介する場合

この4つの切り口を意識しながら話すだけでも、だいぶ緊張せずに自分(たち)を、しっかりアピールすることができるのではないだろうか。

例えば、仕事などでクライアントに対し、自分自身や自分の会社が提供する仕事内容を「自己紹介」する場合を考えてみる。この場合は主に、(1)×(4)となる。ポイントは、自己紹介の全体としては、その他の要素も含まれてくるだろうが、あくまで中心的な要素だけに絞って考えることである。

一方、自分が結婚する相手のご両親に初めてお会いして自己紹介する場合を想像してみる。この場合は、(2)×(3)の組み合わせとなる。こういう時は、(3)ではなくて、多少の「背伸び」をしたいものだから、(4)だという人もいるかもしれない。しかし、親戚関係になる結婚相手の両親を相手に、あまり「背伸び」はしない方がよい。悪びれる必要は全くないが、これから始まる長いお付き合いを考えれば、できれば「ありのまま」の方がよい。

プレゼンの際などでは、謙虚になりすぎてはいけない

間違ってはいけないのは、例えば、自分や自分の会社の「能力」を少しでも高く評価されねばならない競合他社との「コンペ」でのプレゼンの際などに、妙に謙虚になりすぎてしまい、(3)のありのままを語ってしまうこと。これだけでは、「本当にこの人(会社)で大丈夫だろうか?」と、相手から少し頼りなく思われるかもしれない。また同じような状況で、何を間違えたか、自分や会社や商品の能力(機能)を丁寧に紹介せずに、代わりに自分の「性格」や「キャラクター」ばかりをいくら巧みに売り込んだとしても、逆に「能力や製品や会社の実力に自信がないのだろうか?」と信頼を失う結果になるかもしれない。

いずれの場合も、ある程度、「型」を知って身につけておくと、大きな間違いだけはしないですむ。自己紹介の「ストーリー」を組み立てる前に、「一番大切なことは何か?」ということを意識するだけでも十分である。

これから長く付き合うことになる新しい職場の上司や同僚の前では、たとえ少したどたどしくても、ヘタな背伸びをせずに、ありのままの自分を自分の言葉で話せばよい。たくさんの競合の中で、自社の魅力を短い時間で紹介するには、インパクトがある「ニュース性」のある自社の話題などを、いわゆる「ツカミ」として入れるなどして、多少は「背伸び」をした紹介をするのも"あり"だろう。

大切なのは、今から行う「自己紹介」には、どの「型」がふさわしいのか、事前に落ち着いて「ストーリー」を考えることだ。

必ずしも饒舌でロジカルなスピーチが相手から好感を持たれるとも限らないのが、「自己紹介」ならではの、もっとも難しい点でもある。相手が1番知りたいのは、自分の能力なのか、キャラクターなのか? 自分の等身大の素の姿をありのままに伝えるべきか、少し背伸びした立派でがんばり屋の自分を知ってもらうべきか。

決して「ウソ」があってはならないが、人には誰でも多面性がある。その多面的な自分のどの「切り口」をクローズアップするべきか。「自己紹介」で緊張しない方法は、事前の分析と準備によるものが多い。


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。(現 株式会社東京片岡英彦事務所 代表取締役)主に企業の戦略PR、マーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2011年から国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。2013年、一般社団法人日本アドボカシー協会を設立代表理事就任。