ネットのコラム上ではそれなりにやんちゃな私も、実生活においては実に温厚である(笑)。リアルでお会いしている方ならば、皆さんご存知だと思うが、ビジネス上でも私生活でも声を荒らげたりするようなことは(あまり)ない。

退職した企業を人前でDisる人は意外と多い

ところが、年に1度くらい思わず声を荒らげてしまいそうになる時がある。親しい友人や後輩などとの会食の席などでの話。かつて勤務していた会社をDisる同僚や友人の話を聞いた時だ。私自身も何度か転職を経験した。しかし、自分が勤務していたかつての勤務先をDisることだけは絶対にしない。(本当に法に触れるような違反を犯したり、モラルに反する行動を、元の勤務先の企業が行った場合などは全く別の話だが)

自分が退職した企業を平気で人前でDisる人は意外と多い。そしてこのDisりを聞くたびに、例え話の中身が何であろうととても悲しい気分になる。もういい加減やめてくれと思う。建設的な批判ならともかく、単なるDisりであれば、もうやめてくれないかと直接言ってしまう時もある。

就職は恋愛のようなもの

私は常々、「就職は恋愛のようなものだ」と例えている。

簡単に言えば「出会い(一期一会)」だ。

確かに、その人は何らかの不満があって、勤務先を辞めたのかもしれない。あるいは会社側の一方的な都合で、やめさせられてしまったのかもしれない。会社と社員との双方に何か行き違いがあったのかもしれない。そうした個々の事情は誰にでもある。

それでも、私はこのDisりを聞くと、どうしても腹が立ってくるのだ。

そう、まるでかつて自分が恋愛をし、お付き合いをしていた相手に対して、別れた後になって人前でDisる人の言葉を聞かされるような、そんな気分になる。(これも念のために言っておきたい。相手から暴力を受けたり、ものを盗まれたりといった場合の話とは全く別次元での話だ)

なぜこの人はここで「鉛を飲む」ことができないのか?

自分自身が何度か転職を経験すると、逆に転職をして会社を去っていく者の気持ちがよくわかるようになる。同時に退職していく仲間のために、仲間の退職後に自分が具体的に何を(サポート)してあげられるだろうかとも考える。同様に自分が転職をした際に、転職後も変わることなく付き合いを続けてくれて、さらにさまざまな支援をしてくれる多くの仲間がいる。もちろん全員がとは言わないが。

自分が退職した後も、変わらぬ付き合いをしてくれるかつての仲間が一人でもいるならば、どんなに個人的な不満や、腹立たしいことがあっても決して人前で言ってはならないと思っている。同時にそれを口にしてしまうことは、本人にとっても非常に損な結果を招くと思う。本来ならば退職後の自分を応援してくれるかもしれない、多くの「旧友」に対して、後足で砂をかけるような行為は、決して誰のためにもならない。

今回は、かなり私自身の主観的な要素の強いコラムになってしまった。もちろん、中にはそんなに過去の勤務先にこだわらなくてもと思う方も多いと思う。あくまで一般論としてではなく、私のように思う人も、世の中にはいるという程度に受け流してもらえればと思う。

退職した会社をDisることとは、別れた相手や、自分が育った故郷、卒業した母校をDisることと同じく見苦しい行為だと私には思えるのだ。

※写真は本文とは関係ありません


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。