元日のみ有効のフリーきっぷはJR東海だけでなく、JR西日本とJR九州からも発売される。どちらも新幹線と在来線の特急自由席に乗り放題のお年玉企画だ。とくにJR九州版はこども料金が格安になっている。そこで、特急列車をとことん楽しむ元日限定プランを検討した。かっこいい特急を親子で乗り継いでみよう。

「元日・JR西日本乗り放題きっぷ」は山陽新幹線も乗り放題

「元日九州初旅きっぷ」の利用で九州新幹線にも乗れる

JR西日本の「元日・JR西日本乗り放題きっぷ」はJR西日本全線、智頭急行線全線、JR西日本宮島フェリーが乗り放題。新幹線や在来線特急の普通車自由席を利用できるほか、指定席も4回まで利用でき、料金は大人1万5,000円、こども7,500円。グリーン車用は大人1万7,000円、こども8,500円。差額がわずかだからグリーン車用がおすすめ。大阪や京都なら、広島の宮島、厳島神社を往復するだけでも元が取れる。山陽新幹線を利用すれば九州上陸も可能だ。販売期間は12月30日まで。前日と当日の購入はできない。

JR九州の「元日九州初旅きっぷ」はJR九州全線乗り放題で、九州新幹線(博多~鹿児島中央間)と在来線特急列車の自由席にも乗れる。ただし、山陽新幹線と博多南線はJR西日本の路線だから利用できない。料金は大人1万円、こどもはなんと2,000円(こども用単独の販売はなし)。こちらも販売期間は12月30日まで。前日と当日は購入できない。

JR西日本編その1 長距離特急で中国地方を1周プラン

「元日・JR西日本乗り放題きっぷ」では2つのプランを考えてみた。1つ目は在来線特急と新幹線を乗り継ぎ、四国地方をぐるっと1周するプランだ。

HOT7000系による特急「スーパーはくと」

出発は京都駅から特急「スーパーはくと3号」で鳥取へ。「スーパーはくと」は途中、第3セクターの智頭急行線を経由する特急列車で、使用する車両も智頭急行のHOT7000系だ。流線型のディーゼルカーで、制御式自然振り子機構付き。カーブにさしかかると車体をカーブ内側に傾けて遠心力を打ち消し、乗り心地の良さと高速走行を実現している。先頭車運転席の窓ガラスが大きく、前面展望も楽しめる。うれしいことに鳥取方面の先頭車は自由席だ。京都駅で早めに並ぶと座れるだろう。

鳥取駅からは特急「スーパーおき3号」で新山口駅へ。山陰本線と山口線を走る長距離列車で、走行距離は378.1km。JR在来線特急としては第4位の長さという。所要時間はなんと5時間8分。日本海を眺め、中国山地を駆け抜ける……、こう表現すると、いかにも堂々たる特急列車だけど、車両はたった2両編成のキハ187系。多客期に増結したとしても3~4両編成のかわいい姿だ。食堂車もグリーン車もなし。飲み物とおやつは乗車前に用意しておきたい。ちなみに、このキハ187系も振り子式の車両だ。

新山口駅から山陽新幹線で帰る。いくつか選択枝があるけれど、直行するなら山陽・九州新幹線直通列車用のN700系による「さくら568号」に乗りたい。ただし8両編成のため、混雑で座れない場合もある。そのときは16両編成の「のぞみ96号」(20時6分発)という選択肢も。鉄道趣味の視点でいえば、19時29発の「こだま764号」の500系も魅力的。広島か岡山で「のぞみ」「さくら」に乗り継げば、その日のうちに大阪へ帰れる。

駅名 時刻 路線 / 列車名 列車番号
京都 8:52 特急「スーパーはくと3号」 53D
鳥取 11:57
13:43 特急「スーパーおき5号」 3005D
新山口 18:51
19:15 山陽新幹線「さくら568号」 568A
新大阪 21:23

JR西日本編その2 観光列車「みすゞ潮彩」と青海島巡りプラン

「元日・JR西日本乗り放題きっぷ」2つ目のプランは観光重視。大阪から西の端まで行き、観光列車に乗ってみよう。新大阪駅からの山陽新幹線の始発列車は、6時0分発の「みずほ601号」。N700系で小倉駅へ向かい、上りの「こだま738号」で新下関駅へ引き返す。新大阪発7時15分の「さくら541号」に乗れば新下関駅に9時31分に着くけれど、今回は500系の「こだま738号」に乗っておきたかった。

JR西日本の旅行行程の概略図

新下関駅から、「みすゞ潮彩1号」で仙崎駅へ。大正末期から昭和初期の詩人・金子みすゞにちなんで運行される観光列車で、山陰本線の海沿いを走り、途中3カ所の絶景ポイントで停止してガイド放送を行う。指定席はソファタイプのゆったりシートで、座席のほとんどが海側を向いている。車内では紙芝居イベントも行われる。車内で購入できるグッズや特製弁当も楽しみの1つだ。

仙崎駅では青海島を1周する観光船に乗ろう。乗り場は仙崎駅から徒歩8分。冬季は運行本数が少ないけれど、13時30分の便がちょうどいい。昼食を済ませてから乗船すれば、約90分のクルーズを楽しめる。青海島は北長門海岸国定公園の中心で周囲40km。観光船のルートには、くぐり抜けられる洞門「大門」「島見門」や、断面模様がおもしろいという「幕岩」などがある。なお、波の高い時や風の強い時はコースが変更されるとのこと。

仙崎駅からの普通列車は、美祢線に直通する厚狭行。中国山地の西側の谷間を走るルートだ。北側は音信川、南側は厚狭川に沿う。2010年の厚狭川の氾濫で鉄橋が流されてしまい、一時は廃止のうわさもあった。そんなひなびたローカル線を元日に利用するのも趣がありそうだ。厚狭駅からは700系(8両編成)の「こだま760号」で新大阪駅へ。少し遅らせて19時48分発の「こだま766号」にすれば、500系にも乗れる。

駅名 時刻 路線 / 列車名 列車番号
新大阪 6:00 山陽新幹線「みずほ601号」 601A
小倉 8:08
8:31 山陽新幹線「こだま738号」 738A
新下関 8:54
9:59 普通「みすゞ潮彩1号」 6541D
826D
仙崎 12:31
13:30 青海島巡り観光船  
15:00
16:32 山陰本線・美祢線普通 734D
厚狭 17:42
18:05 山陽新幹線「こだま760号」 760A
新大阪 22:08

JR九州編 新幹線と特急で九州を一周プラン

「元日九州初旅きっぷ」の旅のテーマは「九州一周」。お楽しみは九州新幹線と、長距離の在来線特急「にちりんシーガイア」だ。

スタートは博多駅から、特急「かもめ3号」で長崎駅へ。車両は「白いかもめ」こと885系で、どこかヨーロピアンなスタイルだ。振り子式なのでカーブもすいすい走る。長崎駅から佐世保駅へは、快速「シーサイドライナー」に乗車。車窓直下に海が迫り、まるで船旅のような風景となる。運河の向こうにハウステンボスも眺められる。佐世保駅からは特急「みどり12号」で新鳥栖駅へ。駅弁を買い、九州新幹線「さくら549号」に乗り換えよう。おすすめの駅弁は「焼麦弁当」。焼麦は「しゃおまい」と読み、かしわめしのおかずに焼売(しゅうまい)が入っていて、価格は700円。でも元日だからな……、あるといいな。

鹿児島中央駅からは特急「きりしま12号」で宮崎へ。車両は787系。鹿児島本線で「つばめ」として活躍した電車だ。そして宮崎からは、在来線第2位の走行距離を誇る特急「にちりんシーガイア」(車両は787系)に乗ってみたい。宮崎空港駅から博多駅まで411.5km、所要6時間4分の乗車となる。全区間乗車にこだわりたいから、普通列車で始発駅となる宮崎空港駅へ。乗換時間は1分しかないけれど、宮崎空港駅は島式ホーム1面だから乗換えも可能だろう。不安なら宮崎駅で待っているのが良い。宮崎駅から乗った場合の乗車距離は405kmで、これでも十分に乗り甲斐があるというものだ。

特急「にちりんシーガイア24号」に使用されるのは787系6両編成

JR九州の旅行行程の概略図

駅名 時刻 路線 / 列車名 列車番号
博多 6:34 特急「かもめ3号」 2003M
長崎 8:35
8:54 快速「シーサイドライナー」 3226D
佐世保 10:42
10:44 特急「みどり12号」 4012M
新鳥栖 12:07
12:20 九州新幹線「さくら549号」 549A
鹿児島中央 13:40
14:28 特急「きりしま12号」 6012M
宮崎 16:27
17:04 日豊本線・日南線・宮崎空港線普通 745M
宮崎空港 17:18
17:19 にちりんシーガイア24号 5024M
博多 23:23

特急「にちりんシーガイア24号」の車窓は暗い。明るいうちに日豊本線を旅したいなら、逆回りのルートもある。この場合、博多駅を7時33分に発車する特急「にちりんシーガイア7号」(車両は783系)で出発し、ルートを逆にたどれば良い。ただし、これだと新鳥栖駅から長崎方面で周囲が暗くなってしまい、大村線の景色を楽しめなくなってしまう。また、長崎駅・佐世保駅まで行くと博多駅に戻れないので、途中の諫早駅で快速「シーサイドライナー」に、早岐駅で特急「みどり32号」に乗り継ぐ行程になる。