連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
生活保護世帯の過半数は高齢者世帯
厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(平成29年11月分概数)」によると、生活保護を受けている人の人数は約212万人。この人数は、我が国の人口の1.68%に相当します。
生活保護を受けている世帯の類型別割合は、以下のようになっています。
上のグラフを見ると、高齢者世帯が全体の53.0%を占めていることがわかります。近年、この割合は増加傾向にあります。
すべてのものを活用してもなお生活に困窮する人を保護する仕組み
生活保護制度は、資産や能力等のすべてを活用してもなお生活に困窮する人に対して必要な保護費などの支給を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を支援する仕組みです。
「資産や能力等のすべてを活用しても」とは、以下の状態です。
預貯金、生活に利用していない土地・家屋等があれば売却等をして生活費に充てる
・能力の活用
働くことができる場合は、能力に応じて働いて収入を得る
・すべてを活用
年金や手当など、他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれを活用する。また、親族等からの援助を受けることができる場合は、援助を受ける
そのうえで、世帯収入よりも国が定める最低生活費が少ない場合、その差額が保護費として支給されます。
高齢期になってからでは、公的年金を増やすにも限界があり、体力や気力の面から考えても仕事をすることで収入を増やすことも難しいために、生活保護を受けざるを得ない状況に陥る方が増えているのかもしれません。
高齢者世帯の生活保護開始の理由のトップは、「貯蓄などの減少・喪失」
国立社会保障・人口問題研究所の「保護開始世帯数(理由、世帯類型、構造別)2014年」によると、高齢者世帯において、生活保護が開始した理由は、「貯蓄などの減少・喪失」が約40%とトップを占めています。そのほかには「老齢による収入の減」(12.1%)、「仕送りの減少・喪失」(5.5%)、「定年・失業」(4.1%)などがあります。
高齢期になって、生活保護を受けなければならいほどの困窮状態にならないためには、若いころから老後の備えを意識し、計画を立てて、実行する必要がありそうです。若い人ほど、公的年金の受取額が少なくなるとも言われています。それだけに自助努力での老後資金の準備を覚悟しておかなければなりません。
20代、30代からだと、定年年齢までには30年~40年程度あります。少しずつでよいので、給与天引きなどの仕組みを活用して毎月積み立てをすれば、長期的に大きな額にすることができます。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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