連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

銀行のカードローンの過剰貸付が問題視されている!

消費者金融などの貸金業者への貸付規制が強化されたのち、規制されなかった銀行のカードローンの残高が2013年3月の3兆5,442億円から、2016年末には5兆4,377億円へと急拡大しています。日本弁護士連合会は、銀行による個人への過剰貸付が多重債務問題の再燃を招く恐れがあるとして、2016年9月、金融庁に「過剰貸付の防止を求める意見書」を提出しました。金融庁も銀行に対して、審査手法などの実態の調査をしています。

これらを受けた全国銀行協会は、2017年3月に加盟各行に対して、利用者の年収や他の借金の借入状況を正確に確認するなど審査の厳格化や、過剰な広告・宣伝の抑制などの要請を行いました。銀行業界のこの「自主規制」が、どれだけの効果をあげるかはわかりません。ただ、私たち一般の個人も安易にカードローンを使わないという強い意志と工夫が必要です。

銀行のカードローンは簡単に利用することができる!

ほとんどの銀行がカードローンの取り扱いをしています。いつも使っているキャッシュカードでカードローンを利用することもできます。つまり、私たちにとってカードローンは意外に身近な存在なのです。

カードローンを利用するには、最初に申し込みの手続きをして契約をする必要があります。手続き方法はネットや電話、郵送、窓口など、様々なやり方が用意されており、手軽に申し込みができるようになっています。住所、氏名、連絡先、住まい、家族、勤務先、職種や役職、入社年月、年収、借りたい金額、利用目的、他の借金の状況などの情報を銀行に伝えて審査を受け、審査結果が届いたあとに契約すればすぐに使えるようになります。契約時に決めた借入限度額の範囲内であれば自由にいつでもお金を借りることができます。

利用するカードは、日頃預金口座から現金の引き出しに使っているキャッシュカードでもいいですし、ローン専用のカードを作っても構いません。借り入れ、返済は、銀行のATMだけでなく、コンビニやゆうちょなどのATMでも行うことができるため、まさに自分の銀行口座からお金を引き出す感覚でお金を借りることができます。

金利がとても高い

カードローンは無担保ローンであり、保証人も必要ないことから、金利がとても高く設定されています。ある銀行の金利水準は、次のようになっています。

ある銀行の金利水準

金利タイプは、変動金利タイプであるため、市場金利の動向によって基準金利が変動します。現在の市場金利は歴史的な低金利と言われていますが、それでも上表のような高い金利水準です。今後市場金利が上がると、この基準金利も上昇します。

金利が高いだけに返済負担は大きく、一度借りると、場合によっては、返済が困難になり、返済するために再びお金を借りる事態、いわゆる多重債務状態に陥らないとも限りません。それは破産にもつながります。

カードローンの注意点

カードローンについて、第一に心掛けたいことは、カードローンを申し込まないことです。金融機関は手軽にお金が借りられ、便利なことを盛んにPRしていますが、しっかりと距離を置き、カードローンの借金はしないと心がけておくことが大切です。そのためには、日頃から手元に全くお金がなくて困る状態を作らないようにすること。目安として給料の3~6ヶ月分の貯蓄を絶えず持っているようにしましょう。

お金を借りるとすれば、奨学金と住宅ローンのみにとどめておきたいものです。更にあげると自動車ローンまで。これら以外のものは貯蓄で手に入れてほしいですね。一度カードローンを使い始めると、それが習慣になってしまう恐れがあります。習慣化は絶対に防がなければなりません。

カードローンを使う場合は、無理のない少ない金額を借りること。キャッシュカードで借りられるようにしないこと。来月の給料や数カ月以内のボーナスから返済できるなど、あらかじめ返済のメドがある上で借りること。家計を工夫してお金を貯めて早く繰り上げ返済をすること。一度借りて返済したあとは、利用できないようにすること、などがあります。

このように、借りる場合の注意点は様々指摘することができますが、何よりも、「カードローン」から目を背け、使わないようにすることが最も大切です。カードローンは気軽にお金が借りられて便利なイメージがありますが、借りたお金はゼッタイに返さなくてはなりません。金利が高いだけに負担は重くなります。極力、「手を出さない」ことがポイントです。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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