連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
「厚生年金」には、障害や死亡のセーフティネットの役割もある
会社員が給与や賞与から差し引かれている「厚生年金保険料」。この保険料を支払っているおかげで、老後、65歳から公的年金を受け取ることができます。 会社員の場合、厚生年金保険料を払うことで、国民年金保険料も払っているとみなされ、65歳から一生涯受け取る公的年金は、老齢基礎年金(国民年金部分)と老齢厚生年金(厚生年金部分)の2階建てになっています。自営業者が国民年金保険料を払って老齢基礎年金(国民年金部分)しか受け取れないことからくらべると、サラリーマンは優遇されているとも言えます。
厚生年金というと「老後の年金」というイメージが強く、20代、30代の若いサラリーマンにとっては、遠い先のことなのでピンとこない方も多いでしょう。 しかし、「厚生年金」には老後の年金以外の機能もあります。それは「障害年金」と「遺族年金」です。これらは老後のみならず、現役時代のセーフティネットにもなります。
一定の障害状態になったときに支給される「障害年金」
サラリーマンが一定の障害状態になった場合、「障害基礎年金(国民年金部分)と「障害厚生年金」が支給されます。
障害基礎年金の障害等級は1級と2級、障害厚生年金は1~3級があります。サラリーマンが万が一、病気やケガで働けなくなった場合、国からこれら2種類の年金が支給されます。金額は十分とは言えないかもしれませんが、収入がない状態とくらべるととても助かります。障害基礎年金は障害等級によって定額が支給され、障害厚生年金は障害等級、及び、厚生年金への加入期間とその間の給与によって、報酬比例の年金額が異なります。
なお、厚生年金の加入期間が25年未満であっても、25年とみなして報酬比例の年金額が計算されるため、20代、30代の若い方への支給額が極端に少ないというわけではありません。
死亡したときに、残された遺族に払われる「遺族年金」
サラリーマンが死亡したときに扶養していた家族がいた場合、家族には「遺族基礎年金(国民年金部分)」と「遺族厚生年金」が支給されます。
遺族基礎年金は、高校卒業までの子供がいなければ支給されませんが、遺族厚生年金は、子供がいなくても、再婚しなければ一生涯支給されます(ただし、子供がいない30歳未満の妻の支給期間は5年間)。
なお、遺族基礎年金は、夫が死亡しても、妻が死亡しても、高校卒業までの子供がいれば支給されますが、遺族厚生年金は、妻が死亡した場合の夫への支給条件が厳しくなっていることに注意が必要です。
【2017年8月23日追記】
遺族基礎年金の支給について、最新の法令を反映していない部分がありましたので、修正いたしました。
サラリーマンが給与や賞与から支払っている厚生年金保険料は、自分の長生きリスクに備える「老齢年金」のためだけではありません。現役時代に起こるかもしれない障害リスクや死亡リスクに備える「障害年金」、「遺族年金」の機能も併せ持っています。
「老後の年金はあてにならない!」と決めつけるのではなく、公的年金の役割を正しく理解するようにしましょう。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。
「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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