連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
晩婚夫婦の家計で注意すべきこと
平成23年の平均初婚年齢は、夫が30.7歳、妻は29.0歳です。約20年前の平成5年には、夫が28.4歳、妻が26.1歳でした。年齢別の妻の初婚率(女性人口千対)を見ても、30歳~34歳は平成23年が27.80、平成5年には16.72。35歳~39歳は平成23年が9.68、平成5年は3.35です。これらのことからも、晩婚化が着実に進んできていることがわかります。
男性も女性も、20歳代で結婚するのと、30歳代半ば以降で結婚するのとでは、その後の家計を運営する上で注意すべきことが大きく異なります。
晩婚夫婦も、DINKS(ダブルインカム・ノーキッズ)で通して行くなら、現役時代、リタイア時代を通じて、経済的に豊かな暮らしをすることができるでしょう。
また、独身時代に普通の人より長く働いた分、十分な金融資産を夫婦で持ち寄って結婚した場合は、その後の家計に支障をきたすことはないでしょう。
しかし、独身時代にあまり貯蓄をしていなかったにも関わらず、結婚後は「子供を産んで育て、マイホームを取得し、住宅ローンを返済しつつ、老後の準備もしていく」という普通のライフプランを想定するなら、結婚生活のスタートからリタイアまでの期間が短い分、より慎重で計画的な家計運営が求められます。
子供とマイホーム取得のプランを大急ぎで立てる
妻の出産年齢を考えると、子供をいつ、何人欲しいかは、結婚後すぐに考える必要があります。例えば、夫が40歳のときに末子が生まれた場合、夫が定年を迎える60歳になっても大学の学費などの支出があと数年続くことを覚悟しなければなりません。65歳まで働くことができても、定年退職後に報酬を減らして再雇用をする企業が多く、少なくなった収入から学費を負担するのは大変です。退職金を子供に使うと、夫婦の老後の資金が少なくなります。
マイホームの取得計画も、結婚早々に具体化する必要があります。マイホームを持たずにずっと賃貸住宅に暮らすのであれば、夫婦の老後資金の準備に家賃も加える必要があります。マイホームを購入する場合でも頭金を2~3割しか出せないならば、借り入れ額が多くなりがちです。例えば、夫が40歳時に30年返済、金利1.70%で2,000万円の住宅ローンを組む(元利均等返済方式)場合、返済が終わるのには70歳までかかる計算になります。60歳時に残ったローンを退職金で繰上返済しようとすると、約780万円が必要になります。退職金はあといくら残るでしょうか。
子供の教育費負担と住宅ローンの返済は、並行して走ります。したがって、現役時代は教育費とローン返済で手一杯。晩婚夫婦はこの負担が定年以後も続くため、退職金でカバーせざるを得なくなります。なんとかうまくカバーできたとしても、夫婦の老後の生活費は、国の年金だけに頼らざるを得なくなります。国の年金は少子高齢化がますます進むために将来に向けて縮小されることが予想されています。
ライフイベントの時期だけでなく、支出額と収入額をしっかり見積もる!!
晩婚夫婦が、教育資金と住宅資金、セカンドライフ資金のバランスを取りながら、一生涯暮らして行くためには、ライフイベントの時期だけでなく、その費用をちゃんと見積もる必要があります。また、収入額や退職金の額もできるだけ正確な金額をつかんでおく必要があります。
子供の教育については、「高校までとするのか、あるいは大学までと考えるか」、「公立中心で行くか、私立中心の学校にするか」などの教育方針を検討し、おおよそ必要な資金を見積もり、今後の収入で必要な時期に必要な額がまかなえそうかの確認をしておく必要があります。
マイホーム購入のために住宅ローンを組むと、途中で多少の借り入れ条件の変更はできても、負担は返済が終わるまでずっと続きます。したがって、マイホーム取得の最大のポイントは、「いくらのマイホームを購入するか」を決めることです。将来にわたって長い間、子供の教育や生活、夫婦の老後に支障をきたさない、無理なく返済できる金額のマイホームを購入する必要があります。
収入を増やす努力も必要です。
少なくとも65歳までは働く、妻も仕事を辞めない、辞めた場合は再度働いて収入を得る、退職金の額を確認する、親からの資金援助を受けることができないか相談する、などがあるでしょう。
このようにして長期間の支出と収入を見積り、教育資金と住宅資金、セカンドライフ資金のバランスを取りながら生活するために、何をどうしたらよいかを夫婦で検討することが大切です。
目標達成型の家計運営をする!
晩婚夫婦の家計運営の将来は、キツいことばかりではありません。夫婦がお互いに話し合ってライフプランのこだわりや優先順位をつけることで、家族に共通の目標ができます。家族みんなが今も満足し、将来も安心な暮らしにしていくために、それぞれが役割を持って目標を達成するプロセスの中で、信頼と絆がいっそう深まっていくのではないでしょうか。
(※写真画像は本文とは関係ありません)
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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