連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。


「お金を締めれば行動が締まる」。

これは、クライアントとミーティングをしているとき、スタッフから飛び出した言葉。

本当にその通りだと思いました。

このときのミーティングのテーマは、

「経費の使い方についての見直しとルール作り」

でした。

クライアントの経理担当者から、

「営業担当者の立替経費の内容に、いくつか疑問がある。社長の方針をもっとしっかり固めて欲しい」

との要望があがり、弊社はアドバイザーとして、そのミーティングに参加させていただいたのです。

営業担当者が立替えている経費ですから、1つ1つを見れば、目くじらを立てるほどのものではありません。

それでも、積もり積もれば大きな額になっていきますし、そもそも、経費というのは自由に使えるものではありません。

厳格なルールがなければ、「経費」の判断はどんどん甘くなる

経費はあくまでも、ビジネスのために支払うもの。

また、ビジネスのために支払うものであっても、

「お客様と飲みに行ったら交際費」

「移動のためのタクシー代だから交通費」

と許していたら、いくらあってもお金が足りません。

厳格なルールがなければ、判断はどんどん甘くなり、行動に規律がなくなっていくのです。

人間は易きに流れるもの。

たとえば、当初は

「タクシーでしかいけない場所だから」

という判断をして、そういう場合にだけタクシーを使っていたとしても、慣れてくれば、 「楽だからタクシーを使おう」

「この暑さだからしょうがない」

と徐々に甘くなっていく。

それが、本当に健康のためだったり、より効率的な仕事や価値を生む行動につなげるためであったりするならば、経費と考える余地もありますが、単にお金の使い方がルーズになっているということであれば問題です。

お金の使い方にルールを設けてみる

そこで、お金の使い方にルールを設けて引き締めてみる。

「やむを得ない場合だけタクシーを使っていい」

「経費を立替える場合には、原則として事前の承認を得ることが必要」

といった制約があるだけで、1つ1つの行動を見直すことができるわけです。

もちろん、お金の使い方を引き締めなくても、気持ちを引き締めることもできますし、行動を引き締めることもできます。

ただ、気合だけで行動を引き締めるというのは、意外と難しい。

そんなとき、お金を引き締めるというのは、非常に有効な手段だと、あらためてきづかされたのです。

日々の生活も、お財布の紐を締めることで引き締めることができる

そして、それはきっと、会社の経費だけにとどまる話ではありません。

私達の日々の生活も、お財布の紐を締めることで、引き締めることができるでしょう。

もし、日常のお金の使い方が引き締まっていなければ、生活そのものも引き締まっていない可能性が高いと思います。何も考えずにお金を使うということは、何も考えずに行動している、という可能性があるからです。

もちろん、お金の制約を設けることで、窮屈な生活をしよう、といいたいわけではありません。

お金の使い方をもう一度見直すことで、生き方そのものを見直すことにつながるということです。

しかも、生活を見直そうと漠然と頑張ってもなかなか難しいのに対し、お金を見直すというのは、具体的で非常にわかりやすい方法です。

お金が締まれば行動が締まる。

この言葉のおかげで、心地よい緊張感のあるミーティングとなりました。

(※画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。