単純移動平均線とは、一定期間の終値の平均価格を線で表したもので、テクニカル分析の中でもっともポピュラーな指標です。

以下、単に移動平均線と申し上げます。

私は、具体的には、日足で、5、10、25、90、120、200日の移動平均線を基本に見ています。

今回は、中でも特徴のある、5日、25日、200日移動平均線について、お話ししたいと思います。

~5日移動平均線~

5日移動平均線は、単純でありながら、短期のトレンドの変化を知る上で、非常に有効な手段だと見ています。

  • ドル/円 日足

たとえば、実体(ロウソク足の寄り付きと引け値の間の太い部分)が、5日移動平均線よりも上で推移しているうちは、上げは、サポートされていますが、ひとたび、実体が、5日移動平均線を下回って、ニューヨークが引けたり、あるいは、東京が寄り付いたりすると、下げに転じます。

このとき注意しなければならないのが、実体が割り込んでいても、5日移動平均線がまだ上向きであれば、すぐには、崩れません。

5日移動平均線の向きが、水平になったり、下向きになった時が、要注意です。

この5日移動平均線の向きが上、下、水平、どの方向に向いているかは、大変重要ですので、決してお忘れにならないようにしてください。

今回は上げの例を上げましたが下げの場合でも、今の例をひっくり返して考えていただければ同じことです。

また、日足に限らず、1時間足の5時間移動平均線でも、週足の5週間移動平均線でも同様に、それぞれの期間における短期的な相場転換を知る上で、大変有効だと思われますので、これらもよく見ておかれることをお勧めします。

~25日移動平均線~

たとえば、ヘッドアンドショルダーやダブルトップやトリプルトップなどが形成されつつあって、相場が下落に転ずるかどうかの見極めが必要な時に、25日移動平均線などの中期線は有効です。

フォーメーション的にヘッドアンドショルダーが形成されつつあるように見えても、その時の25日移動平均線などの中期線がどっちを向いているかで、本当のヘッドアンドショルダーになるのか、あるいは、単に一時的な反落で上昇を再開するのかが、ある程度わかります。

  • AUD/USD 日足

たとえば、25日移動平均線がフラット(水平)になっていたり、下向きになってきている時は、上げる力が乏しくなり、ヘッドアンドショルダーを完成させ、下落に転じる場合が多いと言えます。

一方、25日移動平均線が上昇方向を依然として向いている場合は、単に一時的な反落であって、上昇を再開する場合が多く、形状的には、ウエッジ・フォーメーション(楔形)を作る過程にあることが良くあります。

このように、25日移動平均線といろいろなテクニカル・フォーメーションを合わせて見ることによって、そのテクニカル・フォーメーションが実際に完成される可能性が高いのか、もしくはフェイク(だまし)で終わる可能性が高いのかを読み取ることが出来ると、個人的には考えています。

25日移動平均線は、単にレジスタンス・サポートになるだけでなく、向いている方向・角度などによって、相場の方向性とそのモメンタム(勢い)を知ることが出来ます。

このように、移動平均線は、チャート分析としては、単純なようですが、結構、奥の深いところがあります。

~200日移動平均線~

200日移動平均線は、移動平均線の中でも、かなり長い部類に入ります。

しかし、これは、長期的に、今弱気の相場にいるのか、あるいは強気の相場にいるのかを見極めるのに、大変役に立ちます。

  • ドル/円 日足

日足のロウソク足が、200日移動平均線よりも上にあれば、基本的に買われやすい強気の相場にいることを示し、押し目買いが機能しやすいと言えます。

また、日足のロウソク足が、200日移動平均線よりも下にあれば、基本的に売られやすい弱気の相場にいることを示し、戻り売りが機能しやすいと言えます。

200日移動平均線の下にいても上にいても、実勢値が、200日移動平均線から乖離すると、200日移動平均線のある水準に戻そうとする動きが出ますので、その点は注意が必要です。

200日移動平均線より上にいる期間と下にいる期間の長さが、どちらかに偏ると、より長くいる期間の方向にバイアスがかかっていることが分かります。

そして、たとえば、日足の実体が200日移動平均線の下から上に移行すると、それまでの相場つきであった弱気相場から、強気相場に移行することになります。

したがい、この時期は、相場の見方を大幅に転換する必要性が出てきますので、柔軟な対応が必要になります。

尚、日足でお話しましたが、たとえば、1時間足での200時間移動平均線、週足の200週移動平均線、月足の200ヶ月移動平均線など、いろいろな期間で応用が可能です。

本コラム「円の行方、ドルの行方」は、2015年以来足掛け6年となりましたが、今回で終了です。

多年にわたり、ご愛読頂きまして、誠にありがとうございました。