1月7日木曜日、米議会でバイデン氏の大統領選勝利が正式に認定され、民主党主導の政権運営への移行が確認されたことで、民主党の積極財政策から国債増発が懸念され、米国債利回りが上昇し、日米金利差拡大観測からドル高となりました。
そして、翌週月曜には、成人の日で東京市場が休場の中、ドルの上値が海外勢によって試されました。
しかし、ここでよく認識しておいていただきたいことは、この米長期金利上昇による日米金利差拡大というテーマにおけるドル買いトライは、あくまでも投機だということです。
良く、日米金利差拡大でドル買いというフレーズは、マーケットコメントで使われますが、金利差が拡大したからと言って、即実際に円からドルへ投資資金が大きくシフトするというわけではありません。
たとえば、日本の大口投資家、つまり機関投資家の代表格である生保(生命保険会社)の場合、彼らは、毎年4月に新年度の投資方針を決め、5月から運用を開始します。
ですので、現段階では、2020年度の投資方針にしたがって動いていますし、年度末を3月末に控えていますので、積極的には動いていません。
したがって、現在の米国債利回り上昇が、運用の検討の対象になるのは、2021年度のスタートとなる4月であり、そこで米国債運用にゴーサインが出れば、5月からドル買いが強まる可能性はあります。
そして、こうした、生保各社の投資方針については、4月末に新聞やネットで公表されますので、それを読めば、具体的にわかります。
たとえば、ドル買いをするにしても、ドルが下がったら買うなどと、かなり具体的な投資姿勢がわかります。
ですので、今の段階のドル買いは、あくまでも投機ですので、買えばドルロングになり、上げきれなければ投げてくるというものです。
したがって、この相場の流行りに乗っても、しっかり利食うことが大事です。
しかも、日米金利差拡大と言っても、世界的な超低金利時代の金利差拡大は絶対値としてはそれほどのものではなく、為替リスクを負ってまで。オープン外債(為替ヘッジを掛けない外債運用)をする妙味は限られるものと思われます。
それでは、ユーロ/ドルはどうかということですが、今のユーロ売りドル買い自体、既存のユーロロングの投げもありますが、やはり投機が主体です。)
欧米の大口投資家の新年度のスタートは、クリスマス明けの12月29日ですが、1月中は、4月の日本の生保と同じように、方針策定に費やし、実際に方針が決まって運用を開始するのは2月からになります。
ということは、2月のユーロ/ドルの方向性が重要になるということです。
もし、欧米の大口投資家が米国債運用を増やすことを決めたら、実際にユーロからドルに投資資金は大きく移動し、ユーロ/ドルは、昨年5月からの上昇トレンドから下落トレンドに転換することになります。
しかし、今月、世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社である米ユーラシア・グループが今年の10大リスクを発表し、第1位が「米国第46代大統領」として、米国民の半数が大統領選の結果を非合法とみなしている社会分断の拡大を警告しています。
こうした大局観を、欧米投資家は投資判断をするにあたって、目先の米国債利回りの上昇よりも重要視するものと思われ、個人的には、ユーロからドルへの投資資金の移動はそれほど起きず、ユーロの上昇トレンドは今後も続くものと見ています。
このように、生保や欧米の大口の投資家の投資行動は、一方向のフロー(資金の流れ)を作り、それが相場の方向性を形成します。
したがって、こうした投資家の動きを探ることによって、相場のトレンドを読むことが大変重要になるわけです。