ユーロ/円の年足(一本のロウソク足が一年)を見ますと、リーマンショックのあった2008年から大きな三角保ち合い(もちあい)が形成されていましたが、今年の年初の寄り付きが、三角保ち合いを下抜けて始まっており、強い売りが示唆されました。

  • ユーロ/円の年足(一本のロウソク足が一年)

さらに、月足を見ますと、月足でも2012年から三角保ち合いが形成されていましたが、5月の引けが、その三角保ち合いを下回って引けており、新たに売りが示唆されています。

  • ユーロ/円 月足

マーケットでは、あまりこのことに対して反響はありませんが、非常に重大なことと見ています。

つまり、円高を防ぐ堤防の一角が決壊したと見ています。

これが、本流であるドル/円の決壊につながるかが注目されます。

ところで、年初来の日足のドル/円とユーロ/円を比較してみますと違いがあることがわかります。

  • ドル/円 日足

  • ユーロ/円 日足

このふたつの通貨ペアで顕著に違う点は、実勢値が、ドル/円は未だに1月3日のフラッシュクラッシュの実体(ロウソク足の寄り付きと引け値の間の太い部分)を下回っていないのに対して、ユーロ/円は、いったんは戻しましたが、5月の段階でしっかり1月3日の実体安値を下回ってきています。

この違いが、どこからくるかと言えば、端的に言えば金利差だと思われます。

米国の政策金利が2.25~2.50%、ヨーロッパが0.0パーセント、日本がマイナス0.1%ということで、日米間には、金利差が2.50%近くあるのに対して、ヨーロッパと日本の間には、ほとんど金利差はありません。

つまり、ユーロ/円は、ほとんど金利を払うことなく売れるため、売りやすいということです。

ただし、ここにきて、米国も利下げの可能性が高まっており、結局は、ドル/円も、ユーロ/円に追随して下げる可能性が出てきているように思われます。

先行するユーロ/円について申し上げれば、1月3日のフラッシュクラッシュでの安値117.80近辺がとりあえずのサポートにはなると思います。(0607EURJPYWeekly)

しかし、それがブレイクすると、2017年4月の安値114.85近辺を目指すものと思われます。

  • ユーロ/円 週足

ただし、ユーロ/円について注意したいことは、早目早目の利食いです、

実際、既にご覧頂いた日足のユーロ/円のチャートでも、フラッシュクラッシュの実体安値をいったんはしっかり下回りながら一時戻しました。

つまり、ほぼ100%投機の相場なので、ショートで攻めても、少しでも下がりづらくなれば、買戻しが集中して入り上昇します。

たとえば6月5日のように、そうした戻りに値ごろ感からの売り上がりが加わってきて下げきれなければ、買戻しで薄い相場の中で急騰となりいったんショートは切らされます。

しかし、急騰は、格好の売り場とばかりに、新たにまた売り下がってショートになったところで、6月6日の場合のように、さらなる緩和期待に反してECBが金利を据え置くと、失望の買戻しでさらに上げました。

  • ユーロ/円 4時間足

こうした、下げてから下げを確信して売り上がりを繰り返すことが買戻しを誘発し、一時フラッシュクラッシュの実体安値水準を上回る戻しとなりました。

要は、下げで攻めるにしても、下げ止まったら、繰り返しますが、未練なく、早め早めの利食いを着実にすることが肝心ということになります。

ユーロ/円に限らず、ドル/円とかユーロ/ドルといった主要通貨でもなければ、その他の多くの通貨ペアはほぼ100%投機通貨であり、ユーロ/円と同じようなオ―バーシューティング(行き過ぎ)を繰り返しますので、いかに着実な利食いが必要かおわかり頂けるかと思います。

尚、いったん上に戻したユーロ/円ですが、長い下落トレンドは既に始まっており、下落は本格的に再開するものと見ています。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら