先日の米国債10年物利回りの急上昇に伴う米株の急落、それと相前後してドル/円の急落と、マーケットはパニック状態になりました。

相場でポジションを持つということは、リスクに常にさらされるということです。

特に、事件・事故のような突発的なリスクの発生に対して、どう対処するかという初期動作をあらかじめ決めておくことは、大変大事です。

なぜなら、冷酷なようですが、相場の世界では自分で自分を守るしかないからです。

実際その突発的な事態による損失を最小限にとどめる初期動作として、事前に準備しておけることは、現状の水準より遠くてもいいですから、ロスカットを常に入れておくことです。

ただし、たとえロスカットを入れていても、ひどいパニック相場では、流動性が極めて低下し、指した値段よりも悪いレートでしかロスカットが実行されないことがあることも、マーケットではありえます。

それでも、ロスカットが実行されたことに安堵するような相場もあるということです。

突発的リスクへの初期動作の重要性

外銀にいた頃、なんの事件か忘れましたが、突発的な事件が発生し、自分が指した値のロスカットがニューヨークで150ポイントぐらい上でついたことがありました。翌日の東京では、すでにそのロスカットが実行されたレベルからさらに200ポイントも上昇しているのを見て、ホッと安堵したことがありました。

余談ですが、ニューヨークのディーラーは、ロスカットの処理がたとえうまくなくても、損をいくらかでもかぶろうとする気など全くないということでした。

しかし、それは、彼が自分の身を守るため、つまりクビにならないようにするためで、それをとやかく言えないと思いました。

話を戻して、常にロスカットを入れておくことをお勧めしますが、もしも、ポジションを持っているけれどロスカットを入れていない状況で、突発事態が発生した場合はどうすべきかですが、アゲンスト(不利)のポジションであれば、現状レベルがいくら持ち値とかけ離れていても、躊躇なく切ることです。

突発的な事態の発生時においては、マーケットが突然のリスクから一目散に逃れようと死に物狂いになっていますので、どんなプライスでも叩いてきます。こんなときは、ためらわずに、早くポジションを閉じ、マーケットからゲットアウト(出る)することが、結果的には自分の身を守ることにつながります。

また、今のことは、もし離れたロスカットを入れていて、まだついていない場合でも同じで、ロスカットがついていないと安心せずに、状況は上記と変わりませんので、自ら躊躇なく切ってしまうことが大事になるわけです。

リスク管理と言えば難しそうですが、どうやってリスクから逃れ損失を最小限にとどめるかと考えれば、おのずと突発的なリスクへの初期動作は見えてくると思います。

なお、ふとんをかぶってやり過ごしうまく行くときもあるかもしれませんが、経験的にはやり過ごせなかったときの方が多かったと申し述べておきます。世界が相手の為替市場だけに、リスクのスケールも大きいですから、十分ご注意ください。

パニックの3日間法則

最後に、パニックにはある法則性が基本的にあることをお話ししておきましょう。

それは、パニックの3日間法則です。

パニック発生当日、マーケットは無防備のため過剰反応を起こし、パニック的な相場展開となる。 2日目、マーケットは発生した事態に身構えてくるが、まだ不安心理は強く、不安定な状況が続く。 3日目、マーケットも動揺から立ち直り、平静を取り戻し始め、パニックに対してヘッジしていたポジションを調整する。

おおむね、パニック発生時はこの3日間パターンで展開すると見ておいて良いのではないかと思いますので、覚えておかれると良いかと思います。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら